福知山駐屯地創立62周年記念行事

2012.11.18



        京都府福知山市に所在する福知山駐屯地の創立記念行事に参加して来ました。福知山駐屯地には精強
       で知られる第7普通科連隊を中心とした各隊が配置され、海上自衛隊舞鶴基地航空自衛隊経ヶ岬分屯
       基地
が近隣に所在するという事もあり、毎年初冬に行われる創立記念行事が実に豪華である事でも有名で
       あります。
        また福知山は観閲行進や訓練展示、アトラクション等にも力を入れていて、毎年の様に色んな工夫や趣向
       を凝らしている
点も大きな見どころですね。今年は何をやってくれるのでしょうか。
        当日早朝に自宅を出発し、時折フロントガラスを叩く雨粒にやきもきしながら0815に福知山着。駐屯地から
       ほど近い第2駐車場に車を乗り入れます。空は晴れと曇りの部分がだんだらで、おまけに雨も降っている
       いう、まことにこの時期の福知山らしい天候。いまさら快晴は望みませんが、せめて昨年ようなざざ降りだけ
       は勘弁してほしいなあ・・・。
        昨日までの雨で今年も田んぼの様になっている式典会場には、既に人がぽつぽつと集まっています。少し
       周囲を歩き回り、会場左手の坂道の中央付近に拠点を構築。目の前の電柱が少し邪魔ですが、昨年よりも
       やや高い位置になるので、またひと味違った撮影ができそう。


        人が少ないうちにトイレを済ませ、式典会場入口のテントにてパンフレットを貰います。そうこうしている間
       に先程まで曇っていた空が急に晴れて来ましたが、これが長く続かないのが福知山なんだよなあ・・・。


        会場では式典開始直前の準備が着々と整えられ、奥の方の懸垂台にはバラキューダによる擬装が施され
       ています。ここでまたしてもパラパラと雨が降り始め、慌ててビニール袋に穴をあけただけの貧弱カメラカバ
       ー
を装着。福知山駐屯地は式典会場と駐屯地が少し離れているので朝イチの屋台巡りも叶わず、寒さと空
       腹
に震えながらじっと式典開始時刻を待ちます。


        そして0930、部隊の入場が始まりました。音楽隊を先頭に、襟元の赤マフラーも鮮やかな第7普通科連隊
       各中隊
が続々と式典会場に入場です。うーん、さすがに中隊が7つもあると迫力がありますね。
        式典参加部隊の整列が整った所で、アナウンスによる部隊の紹介が始まりました。会場向かって左より、
       第7及び第37普通科連隊合同音楽隊。え?今日は伊丹駐屯地からの第3音楽隊じゃないんですね。どこ
       かで大きなコンサートがあって、日程が重なったのでしょうか?
        続いて第7普連本部管理中隊、第1〜5中隊、重迫撃砲中隊、第3後方支援連隊第2整備大隊、第1普通
       科直接支援中隊、駐屯地業務隊、第349会計隊、第318基地通信中隊福知山派遣隊、第131地区警務
       隊福知山派遣隊。


        それぞれの紹介が行われて隊旗がきりっと掲げられる度に、各隊が受け持つ警備担当地区に当たる市町
       村名
が読み上げられますが、これはなかなかいいアイデアだなあ。この式典を見に来ている地元の方々にと
       って、自分たちの地域を守ってくれるのはこの部隊の人達かと分かるという事は、心強さを感じるとともに
       り一層自衛隊に対する親近感
も湧くでしょう。


        そして本式典の観閲部隊指揮官を務める第7普通科副連隊長の2等陸佐が、連隊旗を伴ってパジェロで
       入場。先に待機していた幕僚と敬礼を交わし、式典会場の泥濘をものともせずに位置につきます。部隊は観
       閲部隊指揮官に対して敬礼。

        その後は感謝状贈呈者の発表が行われ、本式典の観閲官を務める第7普通科連隊長兼ねて福知山駐屯
       地司令である篠原1等陸佐
が、戦闘服姿でパジェロに乗って登場。礼装で黒塗りの業務車でやって来るのも
       威厳がありますが、普通科の連隊長の戦闘服に鉄帽姿は、やっぱりいい絵になりますね。


        そして部隊は、観閲官に対して捧げ銃。続いて小銃に着け剣、入場して来た国旗に対しても捧げ銃を執り
       行います。


        ここで富山県から遠征して来た艦長さんSAA水兵さんと合流。まだ暗いうちに出発し、5時間かけてやっ
       て来た
との事。よく見るとお二人とも長靴ですが、なるほどこの泥濘なら普通の靴よりも歩き易そう。この辺
       りは、流石に雪国の人ならではです。


        式典会場では巡閲、観閲官式辞、来賓祝辞と粛々と進行しています。来賓祝辞の先頭を切るのは、イラク
       のヒゲ隊長こと佐藤正久参議院議員。
この人の祝辞はいつ聞いても観閲官の式辞みたいで、今でも根っこ
       の部分は自衛官であり連隊長
なんだなあ・・・とつくづく思いますね。いつもながらの力のこもった祝辞の最後
       は、
        「私は私の分野で、しっかりと汗をかきます!!」
        と締め括り、会場からは大きな拍手が送られました。


        その後は来賓紹介祝電披露が行われ、以上で記念式典は終了。続いての観閲行進の準備のために部
       隊は一旦退場しますが、曇天の下の暗い緑の中に、普通科の赤マフラーとバックの紅葉がいいコントラスト
       ですねえ。
        再び雨脚が強まる中、観閲行進が始まりました。先頭を切るのは第7及び第37普通科連隊合同音楽隊。
       福知山駐屯地の防衛警備区の当たる市町村の旗も、パジェロに乗って続々と登場です。


        ここで音楽隊の演奏が軍艦行進曲に切り替わり、海上自衛隊舞鶴教育隊の海曹教育課程からの隊員さ
       ん達がやってきました。黒ダブルの冬服に純白の手袋、ベルト、脚絆が眩しいなあ。


        続いては航空自衛隊経ヶ岬分屯基地から、第35警戒隊が登場。空自独特の迷彩服に64式小銃というい
       でたちで、近隣に海空の部隊がある福知山らしい盛り沢山さです。


        演奏が抜刀隊に切り替わり、観閲部隊指揮官とその幕僚達が座乗する指揮通信車パジェロがやって来
       ました。小雨がそぼ降る中、観閲壇に立つ連隊長と切れる様な敬礼を交わしています。
        そして福知山の主力部隊である、第7普通科連隊の各中隊がやってきました。先頭は1中隊で、冬季戦闘
       装備
を着用しての行進です。この服装は積雪時のカモフラージュと防寒を目的としていて、随伴する高機動
       車
も白いシートが掛けられ、荷台にはスキーアキオ(物資を運ぶ際に使用する橇)が搭載されていました。


        続いては2中隊。こちらは化学戦闘用の装備を身につけていて、通常の戦闘服の上から薄手のジャージ
       の様な防護服
を着こんでいます。下げているかばんには、化学防護マスク等が入っているのでしょう。


        3中隊からは、レンジャー有資格者による部隊が。整然と隊列を組んで観閲壇の前までやってきて、その
       場で各班に分かれて警戒姿勢を披露しています。


        同じく3中隊からは、市街地戦闘装備の一団が。暗視装置を取りつけた鉄帽と防弾ベストを着用し、観閲
       壇前でさまざまに隊列を組みかえながら警戒姿勢をとっています。


        さらに3中隊からはもう一つ、ギリースーツで擬装した狙撃部隊が。しゃがんだ状態での射撃姿勢を披露
       し、その後は単縦陣に隊列を変えて行進して行きました。


        本部管理中隊からは、偵察オート、救急車、野外炊具1号(改)や水タンクを牽引したトラック、小型ショベル
       ドーザ、資材運搬車
等。多種多様な仕事を受け持つ本部管理中隊らしい車両編成です。
        4中隊からは、MINIMI81o迫撃砲L16を搭載した高機動車群が。


        5中隊軽装甲機動車群で、ルーフの上から身を乗り出した隊員さんが、MINIMI110o個人携帯対戦
       車榴弾、01式軽対戦車誘導弾、91式地対空誘導弾
をきりりと構えています。
        重迫撃砲中隊からは、120o迫撃砲RTを牽引した高機動車が。
        それにしても福知山、観閲行進一つとってもサービス満点ですね。様々な状況に対応できる部隊を、実に
       わかりやすく説明しています。


        第3後方支援隊からは整備機器類を搭載したシェルターを積んだトラック、第3特科隊からは155oFH−
       70榴弾砲
を牽引したトラック。第3高射特科大隊からは93式近距離地対空誘導弾と81式短距離地対空
       誘導弾。第8高射特科群
からは03式中距離地対空誘導弾。第3特殊武器防護隊からは、化学防護車と除
       染車。


        第3施設大隊からは、81式自走架柱橋。第4施設団からは、92式浮橋地雷原処理車。第3偵察隊か
       らは87式偵察警戒車。そしてトリを務めるのは、第3戦車大隊からの96式装輪装甲車74式戦車。バッ
       クに紅葉した木々が入るので、初冬に相応しい実に絵になる観閲行進でした。


        続いては航空観閲。第3飛行隊からのUH−1J多用途ヘリAH−1S対戦車ヘリ、さらに海上自衛隊舞
       鶴航空基地
第23飛行隊から、SH−60J哨戒ヘリがやってきました。


        以上で観閲行進は終了。隊員有志による福知山酒呑太鼓の演奏が始まりますが、今年は何やら格闘展
       示
と絡めて行うとの事。へー、普通は別々にやるのに、これは新しいな。
        会場奥からは2台のトラックが、泥をはね上げながらやってきました。荷台には太鼓を叩いている隊員さん
       
がいて、いつもの鮮やかなハッピ姿ではなく戦闘服なのが迫力を感じさせます。


        そしてドコドコドコドコと和太鼓が打ち鳴らされる中、格闘訓練隊の隊員さん達がやってきて、キビキビとし
       た展示を披露。素手、ナイフ、拳銃に対する後の先的な対処先制攻撃など、様々な状況での約束組手を
       見せていきます。最後は1vs4の複数を相手にした場合の格闘展示を行い、大きな拍手を浴びながら退場。


        うーん、和太鼓と格闘展示か。かなり雰囲気が出ましたね。福知山の展示は盛りだくさんなので時間が足
       りず、やむなく2つの展示を一まとめにしたのだと思われますが、それが却って内容をさらに濃くしている
       ですから、福知山の記念行事はやっぱり凄いなあ。


        さらにアトラクションは続きます。今度は第7・第37普通科連隊合同音楽隊と福知山のラッパ隊によるコラ
       ボレーション。音楽隊の軽やかな演奏に合わせて、ラッパ隊がキビキビかつのびやかにドリルを披露してい
       ます。最後はよく聞き取れませんでしたが、隊歌のようなものを全員で熱唱し、これも大きな拍手を浴びなが
       ら退場。


        昨年も合同ドリルはありましたが、隊歌はなかったなあ。細かい事でも毎年毎年バージョンアップを怠らな
       いのは真に福知山らしい
と言わざるを得ません。現状に決して満足することなく、一つでも前へ一つでも上
       へ
、という精神が伝わってきます。


        さて、いよいよ訓練展示です。先程から式典会場のあちこちで準備が進められ、断続的に降っていた雨も
       止んで晴れ間も見えて来ました。
いいぞいいぞ。どうやら今年の訓練展示は海上自衛隊も協力しているらし
       く、これも大きな見どころですね。
        ここでアナウンスによる舞台の説明が。どうやらこの会場全体を福知山半島と想定し、海上より上陸した
       武装工作員が占拠した一帯を陸自部隊が奪還する、というシナリオだそうです。なるほど、遥かかなたに敷
       き詰められている青い養生シートは、を表しているんですね。いつもながら凝ってるなあ。


        上空にはSH−60J哨戒ヘリが飛来し、沿岸の監視任務を開始。ここで海岸線からの上陸をもくろむ2艘
       のゴムボート
を発見。よく見ると武装工作員役の隊員さん達が、ちゃんとオールを漕いで進んでくるのが面
       白い。


        上陸を果たした工作員の一団は、すぐ近くにあった福知山灯台を占拠し、中にいた灯台守を人質にして立
       てこもります。人質役の人もちゃんと怯える演技をしていて、いちいち芸が細かいですねえ。


        さらに敵の装甲車群も次々と上陸し、後方に移動して拠点陣地を構築。半島一帯を占拠してしまいます。
        上空のSH−60J哨戒ヘリは、福知山半島に武装工作員の一団が上陸した事を本隊に報告。小さな落下
       傘がついた発煙弾を投下します。それを目印に海岸線に上陸した海上自衛隊のLCACから、陸自の戦闘
       部隊
が展開を開始。ただちに武装工作員に占拠された半島の奪還作戦にかかります。
        まずは第7普連情報小隊の偵察オートが2台突入し、観閲壇前で高いジャンプを披露。おお、この位置か
       らだと本当に真正面です。上手く撮れているかなあ・・・。


        情報小隊は、福知山灯台に立て籠もっている武装工作員の姿を確認。
        「中隊長!こちら情報小隊!福知山灯台に武装工作員数名が、民間人を人質に立てこもっている!」
        中隊長はもたらされた情報をもとに作戦を立案し、即座に救出を決断。
        「中隊はこれより、福知山灯台の民間人を救出する!」
        福知山半島にはUH−1J多用途ヘリが急行し、カーゴドアからは4名のレンジャーが一斉にロープ降下。
       灯台手前まで一気に前進し、立て籠もる武装工作員を襲撃。激しい銃撃戦が交わされます。


        その隙をついて、陸自本隊からは狙撃部隊がひそかに前進を開始し、灯台の上にいる見張りを見事排除。
       撃たれた武装工作員役の隊員さんが灯台から身を乗り出して死んだふりをしていますが、かなりの高さがあ
       るので怖そうだなあアレ。


        レンジャーの急襲を受けた武装工作員は、人質を置いて後方の拠点陣地へ後退。その際に陸自部隊の
       前進を阻むべく、化学兵器を使用します。辺り一面に黄色いガスが漂いますが、レンジャーは慌てず冷静
       に化学防護マスクを着用。周囲を警戒しながら、人質の残された灯台へ向かいます。


        灯台内部に取り残された人質の無事を確認したレンジャーは、本隊に人質の移送及び周囲の除染を要請。
        「こちら中隊長、了解!除染部隊を前進させる!」
        福知山灯台には化学防護隊の除染車が駆け付け、車輛の前部から除染液を吹き付けています。化学防
       護衣を着用した隊員も、車輛の上から小銃の様なノズルを操って除染液を散布し、化学兵器の無力化に成
       功。

        本隊からやってきた救急車96式装輪装甲車が、救出された人質を収容して行きました。


        さらに中隊長は、福知山半島内陸部に侵入した武装工作員の拠点陣地への攻撃を下命。偵察隊の87式
       偵察警戒車
が一気に突入し、前線に展開した武装工作員と激しい銃撃戦を繰り広げます。
        「こちら中隊長!敵装甲車を撃破せよ!」
        「こちらアタッカー!了解!」


        上空にやってきたAH−1S対戦車ヘリが、敵装甲車に対して攻撃を開始。武装工作員も機関銃で応戦す
       るものの、対戦車ロケットが命中して装甲車は大破します。


        その間にも後方には対空戦闘部隊、砲迫部隊、対戦車部隊が続々と投入され、着々と砲撃準備を整えて
       いきます。
        さらに前線付近にはUH−1J多用途ヘリがやってきて、機体下部に吊り下げた120o迫撃砲RTを降ろし
       ています。その後方では155oFH−70榴弾砲が自走してきて、隊員さん達が早送りの様なスピードで展開
       を開始。高機動車からは81o迫撃砲L16も下ろされています。
        ここで会場上空には敵の航空機が飛来しますが、対空戦闘部隊見事撃墜。本隊後方からは地雷原処
       理車
も突入してきて、なんか会場がすごい事になってきましたよ。
        そして砲撃態勢を整えた砲迫部隊が、次々と攻撃準備射撃を開始。「テーッ!!」の号令の後、周囲を震
       わせるような空包音が鳴り響きます。


        さらに地雷原処理車が発射機を立ち上げ、武装工作員が拠点陣地前に敷設した地雷原と鉄条網を吹き
       飛ばしていきます。


        陸自本体からは74式戦車もやってきて砲撃開始。敵の陣地周辺に着弾煙が噴き上がり、武装工作員達
       は浮足立っています。


        「中隊はこれより、戦車の射撃支援のもと、突撃を開始する!」


        本隊からは普通科小銃小隊を乗せた軽装甲機動車が一気に投入され、泥をはね上げながら前線に突入。
       ルーフ上からMINIMIが火を吹く中、開け放たれたドアからは小銃小隊が飛び出して来ました。


        先頭車両の後方に一旦集合した小隊は、小隊長の号令一下、武装工作員の立てこもる拠点陣地に対し
       て突撃を開始。
武装工作員役の隊員さん達が、スタントマンさながらに飛び跳ねてやられたアピールをして
       いるのも、実に福知山らしいなあ。


        「中隊長!こちら小銃小隊!突撃成功!」
        「こちら中隊長!了解!」

        武装工作員によって占拠された福知山半島は無事解放され、いかにも福知山らしいひと工夫ふた工夫の
       あった訓練展示
は以上で終了。いやー、やっぱりl訓練展示はここが一番ですね。もうこれで3度目になりま
       すが、来る度に新しい発見があるのが素晴らしい。


        会場では訓練展示の後始末が行われていますが、泥まみれになった軽装甲機動車が滅茶苦茶カッコイイ
       ですねえ。ここまで思い切ってドロドロになった軽装甲機動車は初めて見ました。記念式典の途中からは青
       空が続きましたし、30分ごとに晴れと曇りと雨がコロコロ入れ変わるこの時期の福知山にしては、天候も味
       方してくれた様でした。


        さて、この後は人の流れに乗って、式典会場から駐屯地に移動します。いやあお腹が減りました。福知山
       は屋台もアトラクションも素晴らしいので、お楽しみはまだまだ続きます。




福知山駐屯地創立62周年記念行事後編に続く
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