2010.08.21
8月21〜22日にかけて三重県四日市港と愛知県名古屋港にて行われた、伊勢湾マリンフェスタに参加して来ました。当日は
朝から抜ける様な快晴で、この夏の海自イベント7連発の締め括りを飾るにふさわしい天気であります。
初日である21(土)は、三重県四日市港でのDDH143護衛艦しらねの体験航海。しらね自体は一ヶ月ほど前の舞鶴ちびヤン
の一般公開で見ているのですが、やっぱり体験航海で乗艦するのは嬉しいですね。早朝に大阪市内を出発し、名古屋を経由し
て9時前にはJR富田浜駅着。埠頭行きのシャトルバスが出ている四日市ポートビルまでホテホテと歩き、そこからバスで霞ヶ浦
南埠頭へ移動します。埠頭に近づくとDDH181護衛艦ひゅうがの巨大な艦尾が見えてきて、バスの中からはちょっとしたどよめ
きが上がります。
しらね甲板には既に沢山の乗艦者が鈴なりになっていて、私も慌てて受付テントに向かい、手荷物検査をパス。ラッタル前に
いた隊員さんが言うには、名古屋から出港する艦隊とすれ違うので今日は左舷側に居た方がいいとの事。
という訳で、しらね乗艦。艦橋とウイングは既に人がいっぱいなので、とりあえず格納庫を抜けて艦首へ向かいます。おおお、
目の前にはひゅうがの巨大なケツ!流石にデカイ!なんかもう、艦尾と言うよりも絶壁だなあ。しらねの甲板もそれなりに高さ
がありますが、こうして見るとひゅうがの飛行甲板はもう見上げる様な位置にあります。
艦首の5インチ速射砲は、側面の扉が開放されてありました。流石に中には入れませんが、結構スカスカなんですね。バブル
ウインドゥ内の砲手席は天井から中に吊り下げる形になっていて、この時は座板が下ろしてありました。
ふと見ると、甲板に小さな丸いハッチがありました。速射砲の真下なので、もしかしたらバスケットに入った空薬莢を艦内に戻
す為のハッチなのかと思いましたが、隊員さんが言うには甲板で使用するコンセントのフタですとの事でした。
さて、いよいよ艦内へ。ラッタルを降りると、艦内は空調が効いていてとても快適。艦齢が高いだけあってトイレや洗面所の古
臭さは否めませんが、スペースがゆったりしていて清掃が行きとどいているので、明るく感じます。
ここで艦内放送が入り、しらね出港は1130予定との事。入港が1530予定ですから、4時間たっぷりと体験航海を楽しめま
す。ちなみに出港時刻とは艦を埠頭に係留している最後の舫綱が放たれた時刻を指し、入港時刻は最初の舫綱が艦から埠頭
に投げ込まれた時刻を指すそうです。
廊下の途中に小銃保管庫があり、小さな窓から内部を覗かせて貰いました。ざっと見たところ、64式小銃が40挺ほど、機関
拳銃が3挺、あと何かと悪名高い62式機関銃が6挺というラインナップ。こうしてみると、はつゆき型やあさぎり型と大して変わ
らない搭載量なんですね。乗員数は全然違うのに。保管庫のサイズがが共通なのかな?という事は、ひゅうがも似た様なもの
なのでしょうか。
ラッタルの前に、『シュレッダーくずを空調室に持ち込むな』という趣旨の貼り紙があり、名義が『親甲板』となっていました。親
甲板?傍らにいた若い隊員さんに尋ねると、どうやら甲板作業の監督を行う下士官の事だそうです。それって掌帆長じゃない
のかと思いましたが、微妙に役職が異なっている模様です。また、しらね独自の役職ではなく、どの艦にも居るそうです。
それにしても、さすがに基排5200トン、通路が広々としています。科員食堂の前には写真付きの乗組員一覧がありましたが、
飛行長を兼ねる副長さんのお名前が中野公一さん!何だか自転車が滅茶苦茶速そうな人です。ちなみに船務長は二等海佐。
DDなら艦長クラスなので、いわゆる艦長五分前ってやつでしょうか。
科員食堂もかなり広く、4人がけのテーブルが20卓以上あり、一度に8〜90人は座れそう。空調も効いていて快適ですが、さ
すがにこれだけ入ると暑苦しく感じます。
壁際には本棚があり、全体の3割以上が架空戦記物だったのは納得。残りはほぼノンジャンルですが、歴史物が多かった様
な気がします。隅の方には、戦闘糧食T型の缶飯としらねカレーレシピが置いてありました。
ふと見ると、入口には護衛艦しらねのダルマさんがありました。片方の目は白いままですが、この場合一体どういうタイミング
で黒く塗るんだろう。
通路の途中に、キーロックのついた真新しいロッカーが並んでいました。どうやら立入検査隊の装備品ロッカーらしく、無断で
触った隊員は分隊階級に関係なく立入検査隊に強制入隊させるぞ!との警告書きが。うーん、立入検査隊って罰ゲーム扱い
なの?しかし艦内の人間臭さが表れた、なかなかいい貼り紙ですね。
傍にいた隊員さんに聞いてみると、どうやら立入検査隊に選ばれたからと言って普段の仕事が減る訳ではなく、通常業務に
プラスして特別な訓練があるので、なかなか大変との事。それなりに腕っ節がありそうな隊員が選抜されますが、特別な手当て
が出る訳でもないのでほぼボランティアに近く、訓練のしんどさと危険度を考えると今ひとつ気の乗らない仕事の様でした。
通路の途中で、壁の上の方に丸い穴を発見。そこからは外の光が差しこんでいて、まるで天窓みたい。護衛艦には珍しいな
あと思ったら、LSOへの出入り口でした。へー、こんな所にあったとは。艦尾まではまだかなり距離がある筈ですが、よく考え
たらしらね型って飛行甲板が広いんですね。
さらに艦尾方向に歩いて行くと、後部浴室がありました。結構広いと言えば広いですが、ここで130人近くが短時間で入浴を済
ませるんだから、あまり快適とは言えなさそう。別の区画には前部浴室がありますが、普段どちらに入るかは居住区の位置によ
って決まっているそうです。浴槽は3人入ればもう缶詰状態で、入っているのは真水でした。
機関室に入ると、エンジン内部の映像がモニターに映し出されていました。真っ赤な炎が轟々と燃えていますが、ボイラーの
中かな?そして、恐らく機関長が使うと思われる中央部の机が扇形になっていたのはカッコイイなあ。普通は四角いスチールデ
スクが多いのに。
士官室は開放されておらず、どうやら特別招待客専用の控室になっている模様。
その後は一旦格納庫へ上がり、艦橋へ向かいます。艦橋後部からトップに上がると、改めて前方に停泊しているひゅうがの巨
体が目の前に迫ってきます。へー、ひゅうがの飛行甲板って、しらねの艦橋よりも高いんだなあ。凄いなあ。しかし何度見ても、
色気に乏しいお尻であります。
さて、そろそろ出港準備です。飛行甲板に戻ると、北埠頭に停泊していたAMS4305多用途支援艦えんしゅうとMSO302掃
海艦つしまが出港したところでした。
そしていよいよしらね甲板もクローズが始まり、出港準備が整えられます。偶然ロープ最前列につく事が出来たので、出港の
様子をつぶさに見学・・・と思ったら、艦内放送で護衛艦ひゅうがが出港するとの事!えええ?ひゅうがも出港するの?
てっきり埠頭で一般公開だけかと思っていたので、今いる位置からは全然見えません。分かっていたら最初から左舷舷側に
いたのに〜(泣)。何とか格納庫越しに出港して行くひゅうがの後ろ姿を見る事が出来ましたが、これは痛い失策です。
がっくりしていると、傍にいた飛行科の幹部の方が気を使ってくれたのか色々と教えてくれました。このしらねは2隻のタグボー
トで出港しますが、ひゅうがは3隻必要との事。まああの巨体ですしね。ちなみにひゅうがは最大艦ではなく、厳密に言えば同排
水量のましゅう型補給艦の方が、全長で4m大きいそうです。
タグボートからしらねに舫綱が投げ込まれますが、あれ?阪神基地隊で見た様な、長い竿の先に括りつけたペットボトルクー
ラーでのやり取りがありません。疑問に思ったのでさっきの幹部の方に質問すると、
「ああ、あれは民間の曳船を頼んだ時に、事前に渡す無線機を返して貰っているんですよ。今日は海自の曳船を使っているの
で、それはありませんね」
へー、やり取りしていたのは無線機だったのか。てっきり作業証明書か何かかと。
そしていよいよしらねは出港。飛行甲板では乗組員が整列し、埠頭の作業員に向かって帽振れが行われていました。
その後は再びウイングに上がりますが、左舷旗甲板の辺りが意外と空いています。トップも最前列こそ押さえられていますが、
混んではいないので比較的自由に動き回れそう。という訳で、旗甲板前方のチャフ発射機横に場所を確保。しらねは艦橋も高
いので、この位置からなら艦隊合流もいい角度で見る事が出来そうです。
落ち着いたところで、コンビニのおにぎりと大きめのサラミソーセージで昼食です。水分もそうですが、ここまで暑いと塩分もし
っかり摂っておかないと。
ここでしらねは、先行していた掃海艦つしまと艦位を入れ替えます。トップに上がると、乗艦者でてんこもりのつしまがすぐ近く
まで来ていました。真下のウイングからは対馬に向けて発光信号が送られ、つしまからもチカチカと返信の探照灯が瞬いていま
す。
ここで前を行くひゅうがが軽く取舵。そして右前方からはSS590潜水艦おやしおが水上航行でやってきました。おおお、ひゅ
うが&潜水艦!なんと贅沢な!
潜水艦を見送った所で、ひゅうがはさらに取舵一杯。おおお、あの巨体がグイグイと左へ向いて行きます。もっとゆったりと曲
がるのかと思えば、意外と鋭い回頭だなあ。続いて我がしらねも取舵一杯で180度回頭。後方からは掃海艦つしまと多用途支
援艦えんしゅうが続き、その後方には先程すれ違った潜水艦おやしおがピタリとついています。この辺りで上空を覆っていた薄
雲が切れ始め、海の青と空の蒼が一気に鮮やかになってきました。光線状態も順光で、ひゅうがもいい色に。
さて、そろそろ名古屋からの艦隊がやって来る頃です。ここで思い切ってトップに上がり、最前列の頭と頭の間から前方を狙
います。しばらくすると、おお、見えて来た!先頭はDDG173護衛艦こんごう、その後に続いているのはMST463掃海母艦う
らが、DD123護衛艦しらゆき!
先頭を切るこんごうが徐々に大きくなってきた所で、ひゅうがの甲板では真っ白い制服の乗組員達が整列を始めます。
そして名古屋港からの艦隊とすれ違った所で、目の前のひゅうがは急速に取舵。おお、あの巨艦がバンクしています!うーん、
すごいド迫力だなあ。
続いてしらねも取舵一杯。艦隊から外れたひゅうがに代わって、名古屋港からの艦隊の殿を務めるしらゆきの後にピタリと付
けます。その後方には掃海艦つしまが続きますが、しらねの航跡をトレースせず、大胆にショートカット。掃海艦のエンジンでは
一旦艦隊から離されるとなかなか追いつけないので、あえて近道してしらねに食いついているそうです。
潜水艦おやしおはそのまま直進して隊列から外れますが、お陰で水上航行中の潜水艦を真後ろから見る事が出来ました。
そして隊列から離れて右舷前方についたひゅうがからは、艦載ヘリが発艦。2機のSH−60Jがふわりと浮きあがり、艦と同
じ速度に合わせてしばらくホバリングしたのち、ゆっくりと左舷に回って飛んで行きました。
その後はUH−60Jによる洋上救難展示。救助ホイストから吊り下げられたメディックが、洋上を漂う遭難者を確保して機内
に収容。その救難展示を巻き込む様に艦隊は再び180度回頭を行い、上空では航空展示が始まります。
まずは三重県明野駐屯地からのUH−1J。更に先程ひゅうがから発艦したSH−60Jが二機編隊で続きますが、あれ?よく
見ると、一機はJじゃなくてKかな?この2機が並んで飛んでいる所は初めて見ました。
そして右舷後方からは、広島県岩国基地からやってきた救難飛行艇US−1A!こないだの阪神基地隊キッズサマーフェスタ
ではUS−2を見る機会に恵まれましたが、やっぱりUS−1Aの方が優雅で好きだなあ。
US−1Aは単縦陣で航行する艦隊を追い抜いた後、今度は右舷前方から超低速で進入。今にも失速しそうな速度のまま、ゆ
ったりゆっくりと通過して行く様子は、優雅と言うよりも気持ち悪い感じがしますね。どうしてこの速度で墜落しないのか、本当に
不思議です…。
さらに左舷後方から進入してきたSH−60JとKによる、フレアー放出展示。真っ赤に燃えあがるフレアーを、タパタパタパと空
中に撒き散らしています。
そして最後は、SH−60JとKによる低空高速進入。先ずはJが右舷前方から、機体を左右にバンクさせながらお別れの挨
拶。真っ青な海と空に、白い機体が映えます。
続いてKが左舷前方からやってきましたが、こっちはモロに逆光。それでもこの2機の揃い踏みを、ひゅうが発艦から眺める事
が出来たのは嬉しいなあ。
以上で体験航海の主だったプログラムは終了。こんごうとうらが、しらゆきは面舵を切り、今朝出港した名古屋港に向かって帰
って行きました。展示訓練ではお馴染みの光景ですが、僅かな時間とは言え艦隊行動を共にした艦が分かれて行くのは、なかな
かに感慨深いものがありました。
そして我がしらねも、四日市港に向けて帰投です。いやあ、さすがにこの炎天下で甲板をウロウロするのは堪えました。用意
してきた水も飲み切ったし、ちょっと艦内で涼んで水分補給をしておきましょう。
ラッタルを降りて艦内に入ると、もう別世界の様な涼しさです。お、先任海曹室。ドアにかけられた道場の様な看板が、いかつ
さ満点です。やっぱりこの、古い艦の先任海曹室の看板って、新しい艦のものよりもずっと重みがある様な気がしますね。
科員食堂の自販機で飲み物を買いますが、これが全然冷えてなくてトホホでした。自販機に補充したそばから売れて行くから、
冷えるヒマがないんだろうなあ。
一休みして、今度は飛行甲板に出てラッパ吹奏展示を見学です。うーん、あまりの日差しの強さに視界が真っ白。3人の隊員
さんが君が代や巡検ラッパ等を次々と披露し、最後は演奏しながら駆け足で退場。観客からは拍手が贈られました。
そして1430、予定よりも1時間早く護衛艦しらねは四日市港に入港。しかし舷梯を掛けてからがなかなか前に進まず。どうや
ら乗艦者一人一人の上陸を名簿チェックしているらしく、飛行甲板にてかなり時間をロスしてしまいました。
格納庫の方からは、うどん出汁のいいニオイが漂ってきました。ああ、夕食の準備が整いつつあるようで・・・と思いつつふと左
舷を見ると、あ、ひゅうがだ!後方についていたひゅうがが、タグボートを伴って入港のために近づいてきました。初めて真正面
から見たひゅうがの存在感はやっぱり圧倒的で、思わず上陸待ちの列を放棄して左舷に取りついてしまいました。
徐々に近づいてきたひゅうがは一旦距離を置き、3隻からなるタグボート艦隊の助けを借りてその場でゆっくりと180度回頭。
小さなタグボートが必死になって巨大なひゅうがを動かしているのが、何とも言えず微笑ましいなあ。「よいしょ、よいしょ」という
タグボートの声が聞こえてくるようです。
ひゅうがの右舷ではサイドランプとラッタルが展開され、舫綱が用意されています。よく見ると舫綱の出てくる舷側のあちこちに
人の上半身がどうにか出せる程度の小さなハッチがあり、そこから甲板への舫のやり取りが出来るようになっています。
そしてひゅうがはこちらに艦尾を向け、ゆっくりと接岸。いやー、上陸待ちの順番をパーにしてでも見る価値のある光景でした。
しかし結局しらね識別帽は販売していなかったなあ。仕方ないので隊員さんに撮影だけでもさせて貰おうとお願いすると、ニカッ
と笑いながら、
「顔はいいッスか?」
と応じて貰えました。ああ、済みません、疲れてヘロヘロだったので、とっさに上手い返しが思いつきませんでした。何かすごく
悔しい気がする…。次は覚えてろよ!
四日市ポートビルまではシャトルバスを利用し、そこからJR富田浜駅まで歩いて帰ります。いやあ、前夜の寝不足もありました
が、この酷暑には参りました。すっかりフラフラになってしまいましたが、実に内容の濃い体験航海でした。この夏の海自イベント
7連発の締めくくりを飾るに相応しい、非常に充実した疲労感です。護衛艦しらねの皆様、この暑い中大変お疲れ様でした。
その日は名古屋に戻って一泊し、翌日の一般公開に備えます。夜は市内で手羽先と焼鳥。熱中症寸前まで陽射しに焙られた
体に、冷たいビールが染み込む様でした。
伊勢湾マリンフェスタ2日目に続く
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