■「横浜市民ギャラリー・鑑賞サポータ」活動の感想  平成23年8月12日

 横浜市民ギャラリーでは、今年度からボランティア活動を4つのチームに編成し、市民への貢献向上に向けたチームの自主的な活動を推進していくこととなった。私は、その内【広報チーム】と【キュレーションチーム】で活動することとなったが、【キュレーションチーム】のリーダから、チーム活動のキックオフ時に決意らしきものを紹介して欲しいとの指示を受けた。 本ボランティアを初めて1年足らずの素人には大変重い指示でしたが、素人でないと言えないだろう経験談を思い切ってお話しすることにした。原稿を文に綴ったが冷や汗もので、緊張のキックオフとなった。

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□ 「横浜市民ギャラリー・鑑賞サポータ」活動の感想

 そもそも、芸術的素養やセンスを持ちあわせず、絵を描くとか鑑賞するとかといったことに全く縁遠かった私が、何故大げさにもこのようなお話しをする気になったかといえば、この活動を通じてかつて経験したことのない興味を掻き立てられたからです。

 その1つは、昨年当ギャラリーで開催されたニューアート展2010「描く手と眼の快」に運営補助として参加し、現代アートの持つ不思議な魅力に惹きつけられたことです。

 私にとっては、大きなカンバスに描かれていた点と線だらけの絵はカオス以外の何ものでもなかったのですが、この絵の前に立ち来館者と共に感想を交換しながら、作家はなぜこのような絵を描いたのだろうかと問い続けたときに、これらの絵にその問いの大きさや深さに応じて反応してくる不思議な息吹を感じたのです。

 それは、心に蓄積された経験(苦悩、苦労)の多寡や、深浅をカンバスの鏡は正直に映し出しているように見え、あたかも自分の懊悩を問う試練の場とも思えた不思議な経験でした。

 次に今年3月に開催されたコレクション展2011「建築・土木のある風景」に鑑賞サポータとして参加し、学芸員のご指導のもとにコレクション作品の解説パネルを作るといった貴重な経験や、大勢の来館者との素晴らしい交流を通じて、鑑賞サポータの役割に興味が掻き立てられたことです。

 来館者との交流は、お客様から多く教えていただいたという意味では、主客が転倒していたかもしれませんが、客と向かい合う場が互いに感応しあう場に昇華し、そのことで一体感が高まり共感を誘発させていました。

 茶道では、茶会に招いた人がどんなに努力してもそこに居合わせる客人全員がお互いに尊重し合い、心を通じ合い、座を盛り上げようと協力し合う姿勢がなければ茶会は成功しないということが言われています。そしてそのことを「一座建立(いちざこんりゅう)」というのだそうですが、本展覧会は正にそのことを気付させてくれたように思います。

 芸術鑑賞においても一座建立(主客一体)を目指すべきなのではないか、であれば、我々鑑賞サポータが果たすべき役割は、主人と客人の間に入った微妙な関係ではあるが、一座建立(主客一体)の醸成を幇助することにほかならないと思った次第です。

 2回の展覧会を通じて得た経験にかつてない興味を覚えますが、私は今、ようやっと芸術鑑賞の入り口に立たせて頂いたばかりです。その扉の向こうにどのような魔力が潜んでいるのか、興味の糸をさらに紡いでいければと思っているところです。

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