市販のDC-DCコンバータを改造する
久しぶりの登場です!<(_ _)> 昨年の8月以来ですm(__)m ・・・と題材がなかったわけではないのですが、本業が忙しかったのが理由です。
さて今日の題材はタイトルにも書きましたが、市販のDC-DCコンバータを改造してしまおう!と言うテーマです。
なおお決まりの文句ですが、真似をされて事故や故障、あらゆる災害や被害にあわれても、当方は一切責任は持ちませんので、自己責任であることを了解したうえで行って下さい。
さて本テーマの生贄は、次の製品です・・・・・・
秋月電子さんで販売しているDC-DCコンバータモジュールです。詳しい?資料は下記のサイトにあります。
秋月電子通商 KIC-125 部品資料
簡単に言うと 12V/5AのDC-DCコンバータで、入力電圧はDC16V〜40Vと言う仕様のものです。12V/5A
と言うと、60W級の電源になり、結構すごい部類だと思っております。ハードディスクくらいは軽く動かせるでしょう!?
さて、秋月電子さんにはこの部品を使った電圧可変キットなるものも販売しています。
関連サイトは下記にあります。
秋月電子通商 4〜25V(5A)可変スイッチング定電圧電源キット
秋月電子さんはこの他にも色々なモジュールを販売しています。
さて改造するきっかけは、とある電動工具の電源が必要になり、その仕様が30Vとあり、容量もできるだけ大きいのが望ましいとのことで探していたところ、
このモジュールが目にとまった次第です。販売されているキットでは4V〜25V可変できるとあります。30Vには少し足りません。
何とか改造できないかとサイトを探したところ、見つけることはできませんでした。一部のサイトでは難しいのでやめておいた方がいい!などと書かれていました。そう言われるとやりたくなるのが心情でしょうか???幸い秋月電子さんのサイトでキットの
情報があり回路図が書かれていました。
秋月電子通商 K-02190の可変スイッチング定電圧電源キット(上記リンク資料参照)
使われている電源コントロールICは往年のヒット品、日本テキサスインスツルメント社が本家のTL494の弟分、TL594
が搭載されていました。このICに関する資料はすでに多くのサイトや文献で紹介されているので割愛しますが、電気的な改造より分解する改造が容易ではないことが判明しました。
モジュールの中には当然回路部品があるはずで、それさえ取り出せれば改造は可能と考えました。早速分解してみることにします。
まず、銘板が印刷されているカバーを細いマイナスドライバーで、できるだけ端の方を持ち上げる感じで、こじ開けます。
(中の詰めが外れる方向です)両サイドこじ開ければ、カバーは取れます。(上写真の一番左側)
次に、端子面のカバーを取り外します。一番右側の写真に拡大していますが、段になっている部分の下側に四角い穴があります。そこに
細いマイナスドライバーを若干強めに押しながらそのままカバーを持ち上げます。詰めが外れカバーが持ち上がります。これを左右行えば外れます。 どちらのカバーも
力任せにしないことが肝心です。それほど力を入れなくても外れます。
上下カバーが外れた様子です。ここまでは恐らく簡単な作業です。
次に、放熱フィンの面にあるリベットを外しますが、はずすというより、リベットを壊すと言った方が正解です。用意するのは ドリルとφ2.5のキリです。
リベットのセンターを静かにドリルのキリをあてて、穴を空ける要領で作業します。貫通直後、一部のリベットのカス
は取り除かれます。2か所共空けます。注意することは力任せにドリルのキリを押しつけないことです。また貫通直後、すぐにドリルを戻すことです。
ここからが一番重要な作業になります!
実は制御基板が放熱フィンの内面に特殊な両面テープらしきもので張り付けてあります。基板と放熱器の内面に基板を傷つけないよう(ここが一番難しい!
σ(^_^;)アセアセ... )カッターナイフで少しずつ切り込みを入れ、何とか隙間を作ります。この時に役に立つのが、100円均一で売られている
時計修理キットにある、隙間をこじ開けるヘラのような道具です。(左写真の下)
基板と放熱器の内面にヘラが入るくらいの隙間が出来たら少しずつ押し込みながら隙間を作っていきますが、
この時大きくこじ開けるためヘラを大きくこねるようなことをすると基板が歪み、面実装部品を壊しますので最新の注意が要ります。実は私はこの失敗をしてしましました。
(^^ゞ 少しずつやればそう言う失敗はなかったのですが、幸い回路図のR2の1/4Wの抵抗1個だけが壊われるだけで済みました。
上3枚の写真の一番左が放熱フィン内面で見にくいですが、両面テープの残骸が見えます。先ほどドリルで開けた穴にはリベットのカスが残っているはずです。
さらに穴の内と外にバリがあるかもしれません。ヤスリなどを使い、きれいに除去して下さい。また両面テープらしきものの残骸も手で触り、でこぼこしている部分だけでも除去して下さい。
この作業は必ず行って下さい。
ここまでくればあとはコイルを90度ゆっくり曲げて、面実装部品が載った基板面を覗きます。外れた基板は下の写真に示します。左から3番目に基板の拡大がありますが、中央の一番上に大きめのチップ抵抗がありますが、
基板をはがす時にこねすぎて、抵抗が割れているのが見えます。
回路図が読める人であれば、物との確認ができます。ただ部品を見て初体験だったのが、チップ抵抗の表面に描かれた内容が、実際の抵抗値とは違う意味不明
の記号が書かれていました。今回、実際に部品を外して測定した結果を、一部ですがご紹介いたします。回路図と照らし合わせてい下さい。
R7=7.82kΩ、R3=3.83kΩ、R5=1kΩ、R6=3.81kΩ
くらいにしておきます。この値は私の手持ちのテスターでの実測値です。
検証:TL594の基準電圧Vre=5Vです。まず出力電圧について、比較の一つは15Pinの
INV-INPUTに入っています。ここの電圧は、Vref×R6/(R6+R5)≒4Vです。次にもう一つの比較器は出力電圧の検出です。16Pinの
Non-INV-INPUTに入っている電圧で、比較する電圧が4Vなので、4V(R3+R7)/R3≒12V と言うことになります。
今回のテーマである上限値を
30Vにする為まず、出力電圧が30Vの時に16Pinに4Vが出るような抵抗値にします。そのため、
変更する抵抗はR7とし、算出値はR7=((30V-4V)R3)/4V=24.895kΩが出てきます。若干の電圧降下と、E24系の抵抗値の関係で、
51kΩを2並列で使い25.5k0Ωとします。
次に電圧可変する抵抗の場所は、秋月のキットでは16Pinの
Non-INV-INPUTを可変していましたが、指示されている場所に100kΩを接続すると、リニアに可変できないことが分かると思います。特に高い電圧の辺りが顕著に変わります。
TL594Cの15Pinと16Pinは常に同じ電圧になろうと制御されますので、16Pinの電圧が
4Vを下まわるとPWMは最大デューティになり、幅がめい一杯開きます。これは制御しているとはとても言い難い。
ではどこを可変すれば効果的かと言うと、R6
を可変します。私は手持ちに5kΩの半固定ボリュームがあり、元に付いていた3.81kΩに合わせるため、ボリューム抵抗の両端に
18kΩを取り付けて可変するようにしました。(手持ち事情ですヾ(- -;))
↑R7の場所 ↑R6を取り外しリード線を出して外付けに可変抵抗を取り付ける
それでは基板を元に戻します。下の写真を参考にして下さい。一番右側は、中央の丸い黒いものが手持ちの半固定抵抗5kΩ//18kΩを取り付けた状態です。 90度に曲げたチョークコイルをゆっくり曲げ戻し、元に入っていた放熱フィンの中に戻します。放熱フィンにはチョークコイルをはめる溝がありますので、そこにはめ込みます。 特に違和感があるのは基板を放熱フィンの内面にそってスライドさせるときです。あせらず無理な力を入れず、ゆっくりやります。
次に基板を止める穴ですが、上写真の3枚目にあるよう私はM2.6×10mmのビスで止めました。放熱フィンの内面はナット
で締め付けています(一番右の写真で赤丸印がナットです)。ちょっとテクニックがいるのはナットをビスのセンターに合わせる時です。狭いので当然ピンセット
などで作業しますが、根気よくやります。気を付けることは、ネジそのものを締め過ぎないようにして下さい。手ごろな締め付け力でやめておきます。恐らく基板と放熱フィンの隙間が目視でなくなる程度良いと思います。
最初に取り外した上と下の黒いカバーは取り付けません。放熱効果を上げるため必要ないと思います。風通しも良いのでこれでOKです。
長々と書きましたが、いよいよ電源キットの登場です。秋月電子さんではDC-DCコンバータモジュールが付属して、1,000円で販売 していました。専用基板も付いているので、ある意味お得感があります。それでは先ほど改造したモジュールを基板に載せ、付属していたボリューム 以外の部品の全て取り付けます。下に基板搭載した様子を示します。
電源ではお決まりの試験項目があるのですが、貧乏な私にはそれなりの設備がないので、簡単な抵抗負荷試験を行ってみました。
使用した負荷抵抗はメタルクラッドの高級な抵抗器です(左から2枚目の写真)。10Ω/75Wの抵抗を2個使い、10Ω と2並列にした5Ωとで試験することにします。入力電源は手持ちの定電圧電源(一番右の写真)ですが、35V/3A( 約100W)の仕様でこれ以上のパワーは出せないのが残念です。抵抗器は当然熱が出ますので、ブロアーで冷やします。(左から3枚目の写真)
試験結果試験条件としては、入力電圧は34V固定とします。出力電圧を可変してその時の電力 と効率を求めます。
入力電流 [A] |
入力電力 [W] |
出力電圧 [V] |
出力電流 [A] |
出力電力 [W] |
効率 [%] |
0.06 | 2.0 | 2.502 | 0.50 | 1.3 | 65 |
0.19 | 6.5 | 5.002 | 1.01 | 5.1 | 78.5 |
0.66 | 22.4 | 10.02 | 2.02 | 20.2 | 90 |
1.49 | 50.7 | 15.01 | 3.03 | 45.5 | 89.7 |
2.6 | 88.4 | 20.00 | 4.04 | 80.8 | 91.4 |
負荷抵抗10Ω
所見
最小電圧2.5V以下での電流値は、電源の電流計を読んでおり、振れが小さく誤差が大きいので、数値としては参考になりません。 他の方のサイトでも言っていましたが入力電圧と出力電圧差が大きいほど、 効率も悪くなるとのことで、ここの実験でもそういう結果が出ました。また各電圧発生時のリップルを観測していましたがほとんど振幅しませんでした。 ちなみに黄色い枠は参考値で、最低電圧がどのくらい出るかを調べてみました。 1.5Vでもちゃんと出ているのには驚きました。
入力電流 [A] |
入力電力 [W] |
出力電圧 [V] |
出力電流 [A] |
出力電力 [W] |
効率 [%] |
0.05 | 1.7 | 2.504 | 0.25 | 0.6 | 35 |
0.1 | 3.4 | 5.008 | 0.50 | 2.5 | 73.5 |
0.35 | 11.9 | 10.03 | 1.01 | 10.1 | 84.9 |
0.72 | 24.5 | 15.01 | 1.52 | 22.8 | 93 |
1.29 | 43.9 | 20.05 | 2.03 | 40.7 | 92.7 |
2.0 | 68 | 25.03 | 2.53 | 63.3 | 93.1 |
2.86 | 97.2 | 30.05 | 3.04 | 91.4 | 94 |
0.02 | 0.68 | 1.499 | 0.151 | 0.23 | 34 |
負荷抵抗5Ω
所見
今度は負荷を5Ωにしてみました。全体的に言えることは電流を多く流す方が効率が良いように思えます。負荷の抵抗器はブロアで冷やしていますが、 最大電圧時ではブロアなしでは触ることができませんが、DC-DCモジュールは手で触るとほんのり温かい感じで、ロスの少なさを実感しました。
右の波形は負荷10Ω、30V設定時のリップル波形です。 50mV/div、10us/div、下の4枚の波形は、TL594の8Pin(C1)端子の波形です。つまり、FETのドライブ波形です。負荷は 10Ωです。出力電圧は左から、5V、10V、20V、30V です。 回路図を見て感心したのがFETのドライブ回路です。 2つのトランスターを使い、FETのゲート容量分を、PWMのOFFパルス(この場合 'H' )時に、ちゃんと電荷を抜いていることです。これらのおかげで、 周波数を高く取って効率をあげているようです。ちなみにFETはPチャンネルを使っているので、下のドライブ波形では ’L' 時がONになります。
当初の目的は達成できたと思っております。このDC-DCコンバータモジュールは結構使えることが分かりました。ただ低い電圧での使用は効率を無視するのであれば、使えそうです。 電流についても検証しました。まず5Aは連続で流せそうです。過電流がかかる電流値は 5.53Aでその時の出力電圧が2.5Vくらいまで下がりました。つまり、「フの字型」の動作をするようです。実験で使用した定電圧電源のパワーがもう少し大きければ、 最大時の仕様が分かったと思いますが、そのうち機会があれば実験したいと思います。今回の実験で電子負荷装置なるものが欲しくなりました。
後ほどレポートしますが、こんなものも改造してみました。改造目的は同じなので、30Vが出ることを目標にしています。詳しくは別の機会にご紹介いたします。
上記左のモジュールは12V/8A(100W級)のDC-DCコンバータです。それをターミナルと
コンデンサを載せ、KIC-125のキットと同じように作った基板が右の写真です。DC-DCは新電元工業且ミのモジュールで、
HRD12008と言うものです。秋月電子で販売しています。
このモジュールの改造サイトはあまりありません。右の写真はちょっと部品選定に失敗した作品ですが、何が悪いかは分かっています。
後日、部品を入手次第、レポートいたします。一応、30Vまで出ることは確認しました。また可変できることも確認しました。