市販のDC-DCコンバータを改造する 2
HRD12008 編
※ 毎度のことですがこのサイトを見て真似され失敗して 事故、故障 などしても当方は一切責任は負いませんので、自己責任であることを了承したうえで行って下さい。自身のない方は真似をしないで下さい。
「市販のDC-DCコンバーターを改造する」のページでアナウンスしましたHRD12008のモジュールのその後について報告します。簡潔に言うと、電気的な改造は結構難度があります。
当初の目的は、出来るだけ大きな容量で30Vを発生させ、願わくば可変できるものと考えておりました。
KIC-125のモジュールは、制御ICがTL-594だった為、割と簡単に改造を行うことが出来ましたが、今回はちょっと厄介です!!(;^_^A アセアセ・・・
今回のターゲットモジュール、HRD12008はルネサステクノロジー社の「HA16114FP」と言うICが使われており、
チョッパー型DC/DCコンバータ用PWM制御と言うものです。
HRD12008の関連サイト 秋月電子通商 DC-DCコンバータ HRD12008 大容量定電圧電源(12V/8A) 参考資料
※ 元は新電元工業社のものですが、現在は製造しておりません。サイトに行っても資料は
ありませんが、秋月電子さんで購入すると簡単な1枚切の資料を貰えます。
唯一改造を試みた御仁のサイトPC.Labhttp://www.eonet.ne.jp/~hirojp/hirojp/report/hrd/hrd.htm
HA16114FP の資料サイト日立製作所 HITACHI スイッチングレギュレータ チョッパータイプ DC-DCコンバータ
HRD12008のモジュール内の回路をだいたい調べてみましたが、部品や定数が異なりますがHA16114FPの資料にある動作回路例1 (page31 of 36)とほぼ同じ回路でした。この内、出力電圧につていは上記のPC.Labさんのサイトが参考になります。それ以外については、諸般事情がありますので、 こちらで調べた一部だけを紹介します。なお、ぜひとも上記のHA16114FPの資料を入手して動作の理解を深めて下さい。実は私も今一つこのICの動作を理解しておりません ポリポリ (・・*)ゞ
調べたのは以上で、この内「過電流」の値が、HRD12008の仕様と違うことが伺えます。データシートの過電流検出部の スレッショルド電圧VTHがVIN-0.22V(min)〜VIN-0.20V (TYP)〜VIN-0.18V(max)と言う幅があります。この値でmax値を採用すると計算では、約8.3Aくらいになります。 さて、このままの定数で、30Vを出すための改造をします。まずは分解から始めます。
1.モジュールを裏返す |
2.左のツメと右のツメを同時に外方向に広げながらツメめそのものを下へ押す |
3.底のカバーが取れる |
4.ツメをさらに押し下げたことで反対面の銘板カバーがフィンより少し浮くので |
5.浮いた銘板カバーを静かにまっすぐと引き抜きます。 |
6.これで分解完了! |
ここまでの分解作業は比較的誰でも簡単に行えます!ここで、12V以外のわずかな電圧変更(どのくらいかは未確認です)については
PC.Labさんのサイトが参考になります(サイトでは14Vに変更されています)・・・が・・・それ以上の変更となると、厄介な問題があります。
私の目標は大容量のままで30V出力を目指しています。また願わくば可変したい!と言うことでデータシートを睨みつけて調べたところ、
このモジュールのままでは不可能と判断し、思い切って、フェライトに巻いているコイルを取る!ことにしまいた。そうしないと全体の回路が見えず、止むを得ない決断でした。
コイルが外せない方は、ここまでの改造であきらめて下さい! m(*T▽T*)m オ、オユルシヲ・・・
コイルは基板半田面の上下
6Pinずつ、計12Pin箇所半田付けされていて、全てをきれいに取らなければなりません。私は30W級の半田ごてと
ヒータ付半田吸い取り器の2本を持ち、半田面のピン側を吸い取り器の穴を差し、部品面側のピンに30Wの半田ごてをあて
両側から熱を加え、十分半田が解けたところで吸い取り器のスイッチを押し、半田を吸い取る作業を12回以上繰り返し、何とか基板を傷付けることなくコイルを取ることが出来ました。
右の写真はコイルを基板から外し終えたところのものです。さすがに1本の半田ごてではここまでできませんでした。基板の一部を万力でつかみ縦にしたうえで、吸い取り器と 半田ごての2本で取ることが出来ました。 外し終えてからは回路解析です。せっかく外したので入念に回路を解析してみたところ、先ほど上でも言いましたが、データ シートとほぼ同じ回路をしていることが判明しました。
まず、30Vを発生させるための準備として、HA16114FPのデータシートを見ます。 基準電圧Vref =2.5Vであり、発生電圧はPage 9 of 36 の図2.1よりVO=Vref(R1+R2)/R2 と書かれており、 PC.Labさんのサイトにあるよう、R1は12kΩ+5.6kΩ、R2= 4.7kΩとあります。この値での計算ではVOは11.86Vになります。 これより、 R2の4.7kΩを残した場合のR1を算出します。先ほどの式を変形して、R1=((VO-Vref)R2)/Vref とし、VO=30Vの場合、R1=51.7kΩになります。 すでに 12kΩが付いますのでこれは取らずに、5.6kΩを交換します。51.7kΩ−12kΩ=39.7kΩになります。 ちょうど良いのは 39kΩですが、ギリギリは怪しいので、20kΩを2直列して40kΩとして取り付けます。 右写真の下側ですが 中央部一番手前に赤い丸印が見える場所にチップ抵抗2個を元の半田面にそれぞれ1個ずつ斜めに立てて、真ん中でショートして2直列にしています。 これらの改造後を計算すると VO=2.5V×(52kΩ+4.7kΩ)/4.7kΩ=30.16Vになります。 次に出力電圧を可変するためにエラーンプのIN(+)の7Pinに、半固定抵抗を取り付けます。 抵抗の取付にはちょっとテクニックが要ります。私の場合、HA16114FPのICの7Pinの足を浮かせ、浮いた足にリード線を直付けして線を出します。 次に16Pinの基準電圧Vrefラインからも1本リード線を出します。さらにGNDの1Pinからもう1本、 合計3本出します。3本には半固定抵抗VRを取り付けます。 VRのセンターはICの 7Pinからのリード線を接続します。VR残りの2端子は、Vref(16Pin)とGND( 1Pin)を配線します。 リード線は極力短いものにします。さらにノイズ対策として、「VRのセンターとGND間」、「 VrefとGND間」にそれぞれに、0.1uF/50VのセラミックコンデンサをVRのそばに配線しておきます。 これでVRを回すと、エラーアンプ IN(+)には0Vから2.5Vまでの電圧が印加されます。 以上の改造を施し、コイルを元に戻し、右写真の一番下のようにモジュールを基板に搭載しました。コンデンサは秋月電子で売られていた、日本ケミコン社製のKYシリーズ、 2700uF/50Vを入力側に2本、出力側に2本使用しました。写真の右下に見える小さな四角いものが半固定抵抗器(25回転)で、10kΩ を取り付けています。 |
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KIC-125の時と同じく抵抗負荷(120Ω)を接続して試験してみました。初めに入力電圧 を35Vくらいにして、半固定抵抗VRを回し始めたところ、なかなか電圧が現れず、 あれっ!?どうしたのかなぁ〜と思いつつ、さらに VRを回転させたところ、あるところでいきなり出力電圧11Vくらい発生しました。おっと!と思い、VRを逆にもどしてどのくらいでOFFするのかを見たところ、約 9.66Vで出力電圧はOFFになります。この時の7Pinの電圧は0.86Vでした。ある幅のヒステリシス を持っているようです。 続けて電圧をあげる方向にVRを廻し続けました。VRの最終位置で30.8Vになり、とりあえず満足したものだと思い、 その日はこれで終了しました。
次の日、負荷抵抗を20Ωに変更して同様にVRを回して電圧をあげてみました・・・が、VR
の最終位置で電圧が27.5Vくらいまでしか上がらず、更にボリュームをあげると逆に電圧が下がる現象が出ました。結局、VRの最終位置で26V
くらいになり、電圧が上がらないことで頭がいっぱいになり、電流を計ることをしませんでした。何故だろ???・・・としばらく悩む時間を過ごしました。
とりあえず、データーシートをよく読もう!と言うことで、しばらく眺める時間が続きました。そこで着目したのが、「デッドバンドデューティ」でした。この端子は、Page 10 of 36 にもあるよう、「これ以上PWM幅をONさせないタイミング
」とあります。
特に注目するデータは、Page 27 of 36 の「PWMコンパレータ入力対出力ONデューティ特性」の左側のグラフです。fosc=100kHz時のデータは載っていませんが、
50kHzと300kHzの特性から、50kHz側に近いと推察される、グラフから
VDB=約1.0VからVDB=1.6V間でON duty
が0〜100%変化していることが分かる。(実際はそうではないが)
今回の基板はVDB=1.5Vに設定しあるので、この
DB端子(14Pin)の電圧を可変することにした。このため、基板からもう1本のリード線と半固定抵抗20kΩ
を追加し、下記の様な基板になりました。
リップルが結構大きかったので入力側に3300uF/50Vの電解コンデンサを2個追加しています。(水色のもの)
半固定VR(上写真一番右)は左の黄色いものが10kΩで出力電圧可変用、右の青いものが20kΩで
VDB可変用です。14PinのDB端子はVrefからの電圧を分圧して入れているため、
配線は1本のみで済み、写真では合計4本の線を出して、4Pinのコネクタ配線をしています。
先ほどの実験で一番低い出力電圧が約10Vだったので、最低電圧を10Vとします。従って10V〜30Vを可変する改造
と目標を修正します。・・・・・とここで思ったのですが、この制御IC、HA16114FPは可変する電源には向かない様に思えてきました。
販売されていたモジュールが
12V/8Aと言う約100W級のすごいものだったの、もしかして簡単にできるのでは!!と言う思いだったのですが、そう甘くはないようです。このジュールの基板だけを使い、
別に外付けでコイルやFET、放熱フィンなどを付ければ、改造は楽なのですが、それでは今回の主旨から外れますので、最低限出来ることをやってみたいと思います。
早速抵抗負荷20Ω
をつないで、特性を取ってみたいと思います。ちなみにVDBは当初の1.5Vから、出力電圧を見ながら1.58V
くらいまであげると、20Ω負荷でも30V発生させることが出来ました。
試験条件はKIC-125と同様に、入力電圧=35Vとし、負荷抵抗は 10Ω/75W抵抗を2個使い、「5Ω」と「10Ω」の2条件で試験してみました、
入力電流 [A] |
入力電力 [W] |
出力電圧 [V] |
出力電流 [A] |
出力電力 [W] |
効率 [%] |
0.32 | 11.2 | 10.00 | 1.007 | 10.07 | 89.9 |
0.70 | 24.5 | 15.00 | 1.510 | 22.65 | 92.4 |
1.22 | 42.7 | 20.00 | 2.015 | 40.30 | 94.4 |
1.89 | 66.2 | 25.00 | 2.525 | 63.13 | 95.4 |
2.72 | 95.2 | 30.01 | 3.034 | 91.05 | 95.6 |
← 所 見 ・・・負荷抵抗=10Ω
数値を見る限り、結構素晴らしい効率をしています。手持ちの電源の容量が100Wくらいまでしかないので、もう少し高負荷をかけることができませんでした。試験をしていて気になったのは、若干ですが コイルからだと思いますが唸り音がします。これは想像ですが、ディーティを広げたせいで、周波数との関係で、起こったものと推察していますが、波形を見ていないので何とも言えません。 (゚-゚;)ヾ(-_-;) オイオイ...
入力電流 [A] |
入力電力 [W] |
出力電圧 [V] |
出力電流 [A] |
出力電力 [W] |
効率 [%] |
0.65 | 22.75 | 10.00 | 2.013 | 20.13 | 88.48 |
1.43 | 50.05 | 15.00 | 3.020 | 45.3 | 90.51 |
2.52 | 88.2 | 20.02 | 4.038 | 80.84 | 91.66 |
3.03 | 106.05 | 22.02 | 4.446 | 97.9 | 92.31 |
← 所 見 ・・・負荷抵抗=5Ω
今度は負荷抵抗値を先ほどの半分にして電流を流してみました。上と同じようにコイルからの唸り音は先ほどより大きくなっていますが、左記の数値から同じ電力値付近では若干効率が落ちています。 もう少し調整が必要の様です。また波形を見なければならないのですがリップルはどうなっているか、時間切れで見ていません。ヾ(--;)ぉぃぉぃ 機会を見てレポートします。
もう少しパワーが欲しいところですが、5Ω負荷の出力電圧が22Vなのは、これ以上入力電流が取れないせいで、 電源側でリミットを掛けているからです。元の電源の容量不足で仕方ありません。どこかでまた手ごろな直流電源を見つけてきます。ところで、電流を流した時のモ ジュールの熱は手で触れるほどですが、明らかに少しほんのり温かいくらいでした。
今回のモジュールはKIC-125の様にはいかなかったのが印象でした。特jに、コイルを外さなければ改造が出来ないことは、「簡単に! 」とは言えません。時間の都合で調べることが出来なかったことは機会を見て報告しますが、目標としている30Vを発生することが出来たことは一つの成果だと思っております。コイルを外すのは結構手間がかかります。 今回、2回ほど取ったり付けたりをしました。(・0・。) ほほーっ 基板化するときの注意としてやはり電流を流しますので、ベタパターンにして下さい。 私も今回裏に0.3mm程度の銅板を張り巡らせました。リップルが結構変わります。あと秋月電子の資料から、低損失のコンデンサ を使うことは言うまでもありません!