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fellows 〜1st stage〜









  俺が大石と暮らし始めたのは、大石が大学を卒業して、俺が青学に教師として戻って来る事が決まった年の夏・・・。


 大石は大学が6年間だから俺の方が先に社会人になってたんだけど、俺は卒業した年に就職できなくて(学校に上手い具合に空きがなかった)、今までずっと、大学の研究室に残って助手のような事をやってた。そんな俺も、今年やっと就職が決まり・・・それが母校、青春学園中等部。日本史の先生が体調を崩されて辞められたため、その欠員の募集があったので試験をうけたら、ばっちり合格w
 それが丁度大石が卒業する年と一緒になったので、約束通り一緒に暮らそうってことになったんだ。

 俺が大学卒業したときに「一緒に暮らそうか」って話しも出たんだけど、アイツはそっから益々忙しい時だったし、何よりアイツの勉強の邪魔はしたくなかった。離れてる間は何とか我慢できるんだけど、目の前にいたら、やっぱり我慢できなくて甘えちゃうだろ?そんでアイツは俺に甘いから、俺の言うことは片っ端から聞いちゃうだろうし(笑)。
 そりゃぁもちろん、一緒に暮らしたかったよ?でももう俺達は、この先ずっと一緒にいようってとっくに決めていて、『この先二人はどうなっちゃうんだろう・・・?』みたいな不安はななかったから、ここで焦ってお互い駄目になりたくなかった。
 だから、一緒に暮らすのは大石が卒業してからにしようって決めてたんだけど、いざその時が来ると『大石と暮らす』という事を家族にどう切り出せばいいのかが、すっごく難しいことに気づいた。だって、やっぱり一般的に見たらおかしいだろ?自宅から徒歩圏内の青学に就職が決まった俺が、わざわざ実家より遠いところに引っ越して、いい歳した男二人で今更一緒に暮らし始めるなんて、普通はありえない。これだっ!!って理由がないんだよなぁ・・・。
 俺は、何日も何日も一生懸命、無い知恵絞って考えた。普段なら大石に相談するとこなんだけど、アイツは試験前で大変な時期だし・・・。でも俺、嘘つくのヘタだから、妙な理由を捏造しても、家族相手になんて余計すぐばれるだろうし・・・。
 でもさ・・・。本当のところは、できるなら家族にも俺と大石との事を・・・認めてくれとは言わないけど、事実として認識していて欲しかったんだよね・・・。だから、できる事なら正直に話してしまいたかった。家族からしてみれば、こんなこと聞きたくないかもしれないけど・・・でもやっぱりちゃんと伝えておきたくて・・・。それも、できるなら家族全員そろってるところで言いたかった。バラバラに伝えるのが面倒だったってのもあるし、時間差ができると他の家族から聞いちゃうだろ?この件に関しては、きちんと俺の口から全員に説明したかったんだ。

 しかし、いい加減成人ばっか8人っつーと、これがなかなか全員一度に揃う機会が無い。朝はもちろんのこと、夕飯なんて俺だって家で食べる事などほとんどなくなってるし・・・。この事を家族に言おうと決心してから丸々二ヶ月、一度もその機会に恵まれなかった俺は、かすかな焦りとともに結構煮詰まってきていた。煮詰まるのは、大石の専売特許だと思ってたんだけどなぁ(笑)

 そんな中、チャンスはある日突然やってきた。
 定職につかなかった(って、つけなかっただけだってばよ・・・)末っ子の就職を記念して、家族が久しぶりに全員揃ってささやかながらお祝いをしてくれることになったんだ。この機会を逃したら、もう、いつ家族全員がそろうかわからないので、この日を『菊丸英二、人生の決断報告日!!』と勝手に決め、どう言ったら俺の気持ちを上手く伝えられるか、毎日密かに練習してた(笑) それなのに・・・

 「お、俺っ、なっ夏から…おおお大石と暮らす事にしたからっっ!!」

 さらっとさりげなく、大石が何かを話すときのようにおだやかな微笑をたたえて報告するつもりで練習したのに、きちんと話すどころか緊張しすぎて声まで裏返ってしまった・・・。

  急に大声を出した俺に対し、家族からは何のリアクションもない。母ちゃんがチラッとこっちを見たけどそれだけ。

 ・・・どういう事?

 俺は一大決心して告白したつもりだったのに・・・聞こえなかったはずは無いのに・・・。何で誰も何にも言わないんだろう?俺が考えすぎてただけで、もしかしてそんなに大した事じゃなかったのかな・・・。それとも、あまりに咬みまくりで、何言ってるのかわかんなかったのかな・・・。反対されると予想してただけに、ものすごい肩透かしを食らったような感じ。でも・・・俺の決意は固いんだっ!聞き取れなかったんなら、今度はゆっくり言ってみようかな・・・?
 「俺!!夏から大石とっ・・・ぃでっ」
 「うっせーな、英二!何回も怒鳴らなくたって、一回聴けば分かるって!」隣に座ってる兄ちゃんに、頭を叩かれた。
 何だよ。聞こえてんじゃねーか。ってことは、やっぱり無かった事にされちゃってんの・・・? 反対されることは予想してたけど、こういう展開は予想していなかった。うちの家族のことだから、ぎゃいぎゃい言っても、スルーされるなんて思ってなかったんだ・・・。『家族からのリアクション別対処法』みたいなのを、もっとしっかりやっとくんだった!!
 そんな時、家族の思わぬ反応に大焦りな俺を『きょとん』とした顔で見ながら、大姉ちゃんがこう言った。
 「何で夏からなのよ?中途半端ねぇ。」

 ・・・はい?

 ・・・えっと・・・突っ込むとこ、そこ・・・?

 またしても想定外の質問が飛んできて、すっかり自分を見失った俺は、姉ちゃんの質問に対して、聞かれてもいないことまで交えて正直に答えた。
 「…えっと、大石の試験が2月末にあって、それが終わってからだと今度は俺の方が新学期の準備で忙しくなっちゃっうから・・・俺・・・精神的に疲れると体調崩すだろ?いくら母校だっても、初めての仕事じゃ緊張するだろうから、英二がおちついてからゆっくり部屋さがそうかって大石が言ってくれて・・・」
 「ああ、そっか。大石君、医学部だっけ。」
 「でもさ、それなら、試験が終わってからますます忙しくなるんじゃない?研修医になるんでしょ?あれって、忙しくて寝る時間もないって言うじゃない」
 「いや、試験は受けるけど、大石、医者にならないから…」
 「「「えぇぇぇぇっ?!なんで?!もったいないっっ!」」」
 「も、もったいないって・・・」
 「英二」
 どんどん話が変な方向へズレていきそうになるのを起動修正するかのごとく、それまで一言も発してなかった母ちゃんが、俺の名を呼んだ。
 「…なに?」
 「大石君が医者にならないのは、お前の所為なのかい?」

 え?

 ここで何で俺の所為って質問が来るの・・・?

 「えっと・・・理由は分かんない。何度聞いても大石、訳、話してくんないんだ…。『もう決めた事だから』って…」
 「そう…。大石君はお前と違って賢い子だから、よくよく考えての結論だろうけどね。で、二人で暮らすって、わざわざ全員揃ってる席で報告するって事は、“そういう”事だと思っていいのかい?」

 は・・・? そ、そういう事って…

 「どういう事・・・デスカ?」
 「英二が大石君とこに、お嫁に行くってことだろ?」

 はいぃぃぃぃぃっっ?!!

 「ちょ、ちょっと父ちゃんっ!お、おお落ち着けよっ!」
 「むしろ英二が落ち着けよ・・・」

 お、おお落ち着けって、む、むむ無理無理無理無理っっ!!っつか、よりにもよって、なんで父ちゃんからそういうセリフが出ちゃうわけっ?!
 「なななな何言っちゃってんのっ?!い、一緒に部屋借りて住むって言ってるだけっ・・・」
 あれだけ告白する決心固めてたのに、父ちゃんがそんなこというから、咄嗟に否定しちゃったよ俺・・・。
 「あれ?違うのかい」
 か、母ちゃんまで・・・っつか、ここにいる全員が『違うの?』って目で見てる。・・・なんで?
 「・・・えっと・・・違うと言うか何と言うか・・・当たらずとも遠からずというか・・・」
 「なによそれ・・・はっきり言いなさいよはっきりっ!」
 「っは、はいっ!そうですっ!!」

 あ・・・

 はっきりしない俺の態度にイライラしだした、気の短い姉ちゃんの剣幕に押されて、ついぽろっと言ってしまった・・・。
 「でもさー。それだったら、夏なんて言ってないで、やっぱ6月じゃない?花嫁は6月って相場は決ってんのよ?」
 「は、花嫁って・・・結婚するんじゃないから・・・」
 ・・・さっきっから姉ちゃん、ポイントずれてるから、質問の・・・。
 「大石君のご両親は、このこと知ってるのかい?」
 「・・・多分まだ知らないと思う。大石、試験これからだから、話す暇なかったと思うし・・・」
 「そう・・・。じゃぁ、この話は、大石君のご両親が納得されてからだね。うちだけOKすることはできないよ」
 はぁ・・・やっぱり反対かぁ・・・。で、でも、俺の決心はゆるがな・・・・あれ?何かひっかかるぞ??『うちだけOKすることはできない』って言わなかった??えっ・・・?
 「えぇぇっぇぇぇぇぇぇ?!!」
 「だから、ウルサイよ英二っ!!」
 「ちょ、ちょっと待ってよっ!もっかい言ってっ?!」
 「なんだい。聞いてなかったのかい?だから、大石君のご両親が納得しない限り許さないよって・・・」
 「っってことは・・・ってことは、うちはOKなのっ?!」
 「さっきから、母さんそういってんじゃない。人の話はきちんと聞きましょうって習わなかったの?あんた、それで春から先生なんかやってけんの?」
 いや、だから、姉ちゃんが口挟むと話ズレるから・・・
 「だ、だって、大石とだよ?大石の妹ちゃんとかじゃなくって、大石本体だよっ?!」
 「ぶっっ! 言うにことかいて本体って、あんたっ・・・」
 「もうっ!!姉ちゃんはちょっと黙っててっ!!」
 「落ち着けよ、英二。分かってるよそんなこと。っつか、大石君の妹さんとって方がビックリするよ。」
 まぁそれは100%ありえないけどさ・・・でも・・・
 「だって・・・大石・・・・お・・・」
 「お・・・?」
 「・・・お、男・・・だよ・・・?」


 当たり前の事を言うだけなのに、とても言いにくい一言。


   『大石は男』


 そして、当たり前の現実。


   『俺も男』


 案の定、食卓は一瞬静寂に包まれ、そして・・・

 「ぶっっ・・・あっはははははは!!な、なにそれ〜っ?!!」
 気がつけば、家族全員で大爆笑。何で爆笑??ここ、笑うトコじゃねぇだろ・・・?
 「な、なんで笑うんだよっ!! 俺・・・俺、まじめに言ってんのにっ!」
 「だ、だって、あんた・・・ぶっ・・・・っっくくくくっ・・・い、今更何言ってんのよっ・・・」
 「そうだよ。大石君が男だって事は、みんな知ってるし、逆に本当は女性だったって事にでもなったら、そっちの方が大問題だろ?!・・・てか、大石君が女性・・・・ぶっ・・・ぶっっっくくくく・・・」
 「大石が女って・・・変なこと言わないでよっ!! 何勝手に想像してんだよっ!!」
 俺が言いたいことがどうしてか家族に伝わらなくて、もう泣きそうだった。・・・いや、既に半泣きだったかも知れない。
 やっぱり分かってもらおうというのは、無理だったのかな・・・。

 いい歳して家族の前でなんか泣きたくないのに、ついに我慢しきれなくて、俺の涙腺は崩壊した。

 突っ立ったまま、手放しで泣き出した俺に、流石にみんなびっくりしたみたいで、それまで笑っていた姉ちゃんが、急におろおろと声をかけてきた。
 「ちょ、ちょっと英二。何も泣く事ないじゃないよ・・・。」
 「・・・っっく・・・だ・・だって・・・ぅう」
 「ああ、ほらほら。そんなに泣いて・・・目、真っ赤になっちゃうじゃない」
 「英二、ほら、泣くなよ・・・。兄ちゃんたちが悪かったから・・・」
  まるで小さな子供に戻ってしまったかのように、ぼろぼろと涙を流す末っ子に、みんなびっくりだ。ってか、実際は俺自身が一番びっくりしてた。もう、ここ何年もこんな泣き方したことなかったんだけど、緊張しすぎで情緒不安定になってたのかもしれない。
 「ほら、英二。いい歳してそんなに泣くんじゃないよ。」
 「っっつ・・だ・・だって・・・お・・おれっ・・おれがっ・・・いっしょ・・・っけんめ・・はっはなしっ・・・っしてんっのっ・・・」
 「ああ。わかったから。そんなにしゃくりあげるんじゃない。落ち着いて。」
 そう言って父ちゃんが、水の入ったコップを俺の手に持たせた。
 「ほら、とりあえず座って、それ飲みなさい。」
 えぐえぐとしゃくりあげながらも自分の席に座って、コップの水を一口飲んだ。
 すぐには泣き止まない俺を、みんなはじっと待っている。そんな様子が分かって、俺は必死に泣き止もうとしてたんだけど、一度崩壊した俺の涙腺は持ち主の思惑から大きく外れ、涙を流し続けた。
 未だにぼろぼろと涙を流しつつもようやく落ち着いてきた俺を見て取ると、それを待って父ちゃんがゆっくりと口を開いた。
 「英二、みんなもう口挟まずに黙って聞くから。ゆっくりでいいからちゃんと話したいことがあるなら、言いなさい。」
 「・・・うん」
 俺は、流れる涙もそのままに、ゆっくりと話し始めた。
 「俺・・・もう、ずっと前から大石が好きで・・・。友達としてももちろん好きなんだけど、それだけじゃいらんなくってさ・・・。で、大石も俺が好きだって言ってくれて、そんで、ずっと一緒にいたいねって前から話してて・・・。でも、二人とも子供だったし、そんなことできるわけなかったから『いつか、二人とも大人になって、自分たちの行動に責任が持てるようになったら一緒に暮らそう』って約束してたんだ。」
 みんな、俺が言うことに口を挟まずに、黙って聞いてる。俺はまだ涙がとまらないまま、そのまま話を続けた。
 「大学に受かったときに、もう大学生だから一人暮らしするやつだっているんだし、俺たちも一緒に住んでもいいんじゃないかって大石に言ったんだけど、両親に世話になってるのは変わらないんだから駄目だって・・・結局お互いに実家に居続けようってことになって・・・。でも、俺が大学卒業するときに、今度は大石から『英二、大学卒業するから、一緒に住む?』って言ってくれたんだけど、アイツまだ2年残ってたし、忙しくなるだろうし、アイツの勉強の邪魔したくなかったから、あと2年待つって言って・・・。大石が今年ようやく卒業になるから、これでお互い、両親の世話にならずに二人で生活できるから一緒に住もうって・・・ずっと一緒に居ようって・・・」
 もう、泣き顔が恥ずかしいとかって域をとうに越してる俺は、まだとまらない涙でぐちゃぐちゃの顔になりながら、うまくまとめられないまま、思いつくままそのまま話し続けた。
 「・・・で、俺、この事をみんなになんていえばいいのかすっごい考えて・・・考えて考え抜いたんだけど・・・もしかしたらみんなに迷惑がかかるかも知れないけど、でも俺、この先大石と別々に生きるなんて考えらんないしっ・・・何より俺がそんなの耐えられないからっっ」
 自分で言ってて、大石がいないこの先を想像してしまい、更に涙が落ちる速度を上げてしまった・・・。
 「・・・っく・・だ・・・だから・・・みんなにもっ・・・・っそ・・それをしっててほしっ・・・」
 「ああ。判ったから。もう、いい加減泣き止めよ・・・」
 隣で聞いてた兄ちゃんが『いつまで経っても泣き虫な末っ子だなぁ〜』なんていいながら、俺の頭をなでた。気がつけば、兄ちゃんだけじゃなくって、みんな同じような顔して、俺を見てた。
 「英二・・・お前と大石君がそうじゃないかって、みんな薄々気づいてたよ。」
 ・・・・・・・・えっ?!うそっ・・・・。
 家族からの衝撃の告白に、今まで止まらなかった涙もひっこんだ。
 「っつか、あれで隠してるつもりなんだったら、そのほうがびっくりだわw」
 「・・・。」
 「お前と大石君は、友達ってだけじゃ説明できないほど仲が良すぎたし、大石君のお前に対する接し方も、普通、ただの友達がそこまで面倒見ないだろうってとこまで面倒見てくれてたしね。だからもう、随分前から、英二はきっと、大石君と一緒に行くんだろうなって、みんな思ってた。ね、父さん。」
 「ああ。大石君といるときの英二は、それはもう、とても幸せそうだったからね〜。」
 「だから、うちの家族は反対する理由がないんだよ。英二にとっての幸せがその生き方なんだったら、それが一番なんだから。」
 「でも・・・」
 「何だよ。良いっていってんのに、反対されたかったのか?」
 「ちがっ・・・そうじゃなくって・・・。だって、こんなの普通じゃないって皆思うよ?!俺が大石と一緒に暮らすことで、みんなに迷惑かかるんだったら・・・俺・・・おれっ・・・」

 どんなに反対されても大石とは離れられないけど・・・それでも家族に迷惑をかけたくない気持ちも本当にある。だけど、それを両方かなえることが出来ないのも、ほんとはちゃんとわかってた・・・。

 「あら。こんなこと、別に何でもないわよ。なまじ変な女にひっかかって、嫁姑戦争とか勃発するようになるくらいなら、あたしは大石君、大賛成だけどなぁ〜。」
 って、え・・・?
 「あ、俺も。大石なら全然問題なし。っつか、大石逃がしたら、英二一生独りだろ(笑)」
 それはどうかわかんないけど・・・って、今はそれどころじゃなくて・・・。
 「私も、英二は大石君と一緒に居たほうがいいと思うな〜。」
 「俺のほうも問題ない。英二の面倒見れるのは、この世の中探しても、家族以外に彼しかいないだろう。」
 「・・・・ほんとに?・・・・本当にそう思ってるの?」
 「疑り深い子だねぇ・・・」
 「だって・・・」
 夢じゃないだろうか。うちの家族って、どっかずれてるとこあると思ってたけど、まさかこんなにすんなり認められるとは、流石に思ってなかった。というか、みんなが俺達の事気づいてたってのが、結構ショックなんだけど・・・。
 「んー・・・まだ19時か・・・。英二、お前ちょっと、大石君に電話して、今から家に来てもらいなさい。」
 「えっ?! な、なんで?!!」
 「英二の話は聞いたから、大石君の話も聞きたいと思って。」
 「ああ。それいいじゃない。大石君に来てもらおうよ。」
 「ってぇぇぇぇ?! 今っ?! これからっっ??」
 「だって、うちの家族全員そろうなんて滅多にないんだから、今しかないでしょう?」
 「だって、大石、試験前なのにっ!!」
 「大石なら、この時期まで焦って勉強なんかしてないんじゃね?」
 「で、でもっ・・・そんなこといったって、大石にだって都合ってもんが・・・」
 「彼なら英二からの呼び出しより優先するものなんかないでしょう?」
 「うっ・・・」
 何でそんなことまで言い出すかな・・・・。
 「はい。ぐずぐずしないで、とりあえず電話して見て、もし都合が悪いようだったらまた今度にすればいいんだし。」
 何でこんな展開になってんだ・・・
 有無を言わせないみんなの視線に耐え切れず、とりあえず電話する事にした。流石の大石だって、この時期のこの時間に、うちにこないだろうし・・・。
 言い出したら聞かない家族の視線を背に、仕方ないので携帯を片手に廊下に出ようとしたところを、
 「あら、どこいくの? ここで電話すればいいじゃない。」
 ・・・・勘弁してよ・・・一体何のプレイですか・・・。
 「ほら、はやく〜」
 「・・・わかったよ。5回コールして出なかったら、今日はあきらめてよ?」
 妙に気恥ずかしい空気の中、大石に電話をかけた。
 あんな告白をした後で、みんなの目の前で大石と話しなんかできません・・・。
 『トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル・・・』
 よしっ、いいぞっ!このまま出るなよ大石っ!! 俺達ゴールデンペアなんて言われてたんだから、俺の心情を察知して、電話に出ないくらいできるよなっ?!
 『トゥルルルル・・・』
 あと一回!!
 『・・・もしもし、英二?』
 俺の願いもむなしく、いつもどおりにさわやかな大石の声が聞こえてきた・・・。


To be continued・・・next stage