Step☆Up 〜3rd Morning〜
(担当 春)





Step☆Up?3rd Morning?
(担当 春)





「久美子ちゃん!やるねぇ!けっこう!けっこう!」

「おっちゃんも無理すんなよ〜」

「ははは!けっこう!けっこう!」



庭先で聞こえる声に眠りから引きずり出される
「けっこう」って何回言うんだよ・・・
っつーか「こけっこー」にしか聞こえねぇよ鶏!
山口の声もするから俺は体を起こし
声のする庭へと足を運ぶ


「おぉ!沢田!おはよ!早いな!」

「はよ・・・お前ら煩い」

「私が何時に起こされたと思ってんだ!!
 5時だぞ!5時!!まだ暗いっての!!」

「さすが・・・鶏・・・早いな」

「がはは!沢田くんとやらも一緒にやらんかい?
 朝の体操は気持ち良いぞー!!
 けっこう!けっこう!」


山口と鶏のおっさんは「1、2、1、2」と言いながら
体操をしている
ってかこの二人テンションが似てるんだな・・・

「おお!お前さんも起きたのかい?
 早起きは三文の得だ!けっこう!けっこう!」


おっさんが俺の後ろへと声を掛けたので
俺が振り替えると昨日の男が欠伸をしながら立っていた

「おぉ!ヨシキ〜!お前もこっち来い!!」

「久美ちゃん・・・朝から元気だね」

そう言って二人の方へと向かう


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


はあ?久美ちゃんだあ?
しかも山口も「よしき」って!!
どう言うことだよ!
知り合いなのか?

「朝から精の出るこったな!!」

「京さん」

「おいおい!慎の字!!なんでぇその顔は!!!
 はっはーん!さてはあの二人に妬いてるなぁ?」

「うるせぇよ!!」


京さんはしてやったりと顔をニヤつかせ俺を肘で突く
なんだよ!!その顔は!!

「いいじゃねぇか!お嬢には今はお前がいんだからよ!
 過去のあの二人には目をつぶってやれよ!」

「はあ?なんだよ過去って!」

「聞いてんだろ?お嬢の昔の男だよ」

これ見よがしに親指を出してきたから
グイッと後ろに反らしてやった

「いでぇー!慎の字!何しやがる!」

「男なんて言うんじゃねぇよ」

「本当の事だろぅがよぉ!
 ヨシキはお嬢の昔のお・と・こだよ!ふんっ!」

親指にふぅふぅ息を吹き掛けながらも
男を強調して鼻息を鳴らす
大人げねぇんだよ!おっさん!


アイツが山口の昔の男だったのか・・・
一昨日に初めて知った事実で
まさか本人に会えるとはな


「ヨシキ〜お前今なにやってんだ?」

「経営コンサルタントだよ
 昨日聞いてなかったの?よっぽど驚いたんだね
 久美ちゃんは教師になる夢叶えたんだね」

二人で話す様子は普通に仲の良いカップルに見える
俺はこれ以上見てられなくなり部屋へと足を戻す


「お?慎の字戻るのか?もうすぐ飯だぞ?」

「ああ・・・」

「なんだよ〜慎の字!!昔の話だろ?
 何ショボクレてんだよ!!」

ショボクレさせたのはおっさんだろーが!!
俺は一睨みしてそのまま部屋へと戻った



敷かれたままの布団にそのまま滑り込む
昨日感じた山口の温もりも匂いも今はない

だっせぇ・・・
京さんの言うとおりだな
昔の事だし気にしても仕方ない
京さんも「お嬢はまだ男をしらねぇ」なんて言ってた癖によ!
その辺の情報もしっかり伝えろってんだ!!

「沢田?入るぞ?」

襖を隔てて山口の声が聞こえる
俺は返事もせずに布団に俯せていた
すーっと襖が開いて山口の気配を感じる

「沢田?」

山口が布団の傍に座り俺の背中に手を置いてくる
体中の血がすべて背中に集まる様な感覚が俺を襲う

「どうした?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「も・もうすぐ飯だからよ!起きてこいよな!」

返事の無い俺に早口に伝え立ち上がろうとするのを
俺は腕を掴みそのまま山口を布団へ押し倒した

「ひゃっ!な・な・なんだ?」

慌てて真っ赤になる山口の唇へ乱暴に口付ける

「ふぁ・・・っ・・ん・・・」

合間に漏れる苦しそうな吐息も
俺には関係なかった
ただ自分の想いを埋めるように
自分勝手に唇を奪い続けた
俺の胸を押し退ける山口の手が俺の背中に触れるまで・・・
背中に温もりを感じ我に返る

「ごめん・・・」

唇を離し体を起こして背中を向けたまま
謝る俺に山口は背中からギュッと俺を抱き締めてくれた

「ごめんな・・・こんな事に巻き込んじまって
 うちの事なのにさ・・・ごめんな」

「山口・・・」

「お前が優しいからつい甘えちまってさ!
 そりゃお前も怒るよな!」

もしかして・・・山口はさっきのキスを
俺が怒ってやったと思ってんのか?

「怒ってねぇよ・・・」

「そ・そうか・・・」

「あの男・・・」

「へ?」

「さっきの・・・」

「ああ!ヨシキの事か?」



ピキッ



「アイツ!!お前の元彼なんだろ?」

「な・な・なんでそれを!
 ヨシキから聞いたのか?」



ピキッピキッ


「京さん」

「京さんのヤロー!!」

「そうなんだろ?」

「いや・・・まあ・・・ヨシキとは・・・
 元彼なんて言う程じゃ・・・
 ヨシキにも悪いよ!それにヨシ・・・むぐっ!!」

俺はもう一度山口の唇を塞ぐ

「ん・・・はあ・・な・なにをっ!」

「その口で何度も他の男の名前呼んでんじゃねぇよ!!」

「え・・・あ・・・そ・そうか・・・えっと・・・・・」

俺の怒り具合に何が何だか解らなくなって言葉を詰まらせる山口

「苗字で呼べばいいじゃん
 俺の事も沢田って呼ぶくせにさ・・・
 他の男を下の名前で呼んでんじゃねぇよ・・・」

「へ?苗字って・・・苗字だけど・・・?」

「・・・・・・・・はあ?」

「えっと・・・吉木孝太郎だったかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



はあ・・・俺・・・何やってんだ・・・
ため息をついて頭を抱える俺に
山口から小さな声が聞こえる

「え?なに?」

「・・・・・ったか?」

「え?悪ぃ・・・聞こえな・・「もう嫌いになったか?」

真っ赤な顔で拳ををギュッと握り締める山口に
こんな時でも可愛いと感じてしまう

「私なんて嫌になったか?」

うっすらと瞳に雫がたまってきている
それって少しは期待していいのか?
本当は嫉妬して怒った俺だけど
山口は俺に嫌われたくない女心?

「嫌いになるはずねぇじゃん
 今日・・・夜ちゃんとうち来いよ?」

「え・・・う・・・ウン」

やばい!!ここが黒田じゃなかったら襲ってたぞ
無自覚に煽ってんじゃねぇ!!

「山口・・・ちゃんと京さんに言っといた方が良いんじゃねぇの?
 あのおっさんまた電話してくるぜ?」

「おぉ!そうだな!飯もいらねぇしな!」

そう言って立ち上がり部屋を出る山口
俺もその後を追って部屋を出る


「京さーん」

「へい!お嬢!なにか?」

山口が呼ぶとどこからともなく飛んでくる京さん

「今日学校終わったら沢田んちに泊まるから
 ご飯いらないからね!」

「えぇ!お嬢!!それはぁぁぁ!」

「心配しなくていいからね!!
 あーお腹空いた〜ご飯ご飯!!」

「お嬢ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

消え行く山口を暑苦しく見送ってるのが
極道憧れの黒田の若頭って誰が思うかねぇ

「くぉらぁぁぁぁぁぁぁ慎の字ぃぃぃぃぃぃ!!」

「ぐぇっ・・な・なんだよ・・・」

「て・て・てめぇ!!お嬢に指一本触れんじゃねぇぞ!!!」

「ふっ・・・・・」

「な・な・な・な・な・なんでぃ!その顔はぁぁぁ!!」

「悪ぃけどそんな約束出来ねぇよ」

「なんだとぉぉぉぉぉぉ!!慎の字ぃぃ!!」

「うるせぇ・・・顔近ぇし・・・
 黒田のお嬢は・・・俺のだからよ」

さっき散々俺をからかった罰だよ!

「お嬢ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ふぇぐっ・・・ぐぅ・・・」

京さんは鼻水だ涙なのか解らないものをたくさん流している
まあ・・・それが親心ってやつだよな?
まあ・・・俺も男にならせてもらうって事で・・・ 京さん・・・・・・・



悪ぃけど山口を、女にしちゃうよ




>>続く

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