Step☆Up 〜2nd Morning〜
(担当 春)
「ん・・・・・」
腕の中の温もりが動いて俺は目が覚めた
こんなにゆっくり眠れたのは何時振りだろう
一人で暮らすようになって知った
一人で眠るベットの冷たさも
目覚めた時の武者震いも今日は無い
カーテンの隙間から零れる光が暖かくて
人肌を感じて目覚める心地よさに
温もりを離したくなくてギューっと力を入れた
大きく息を吸うと同じシャンプーの匂いがした
あ・・・俺の匂いだ
我慢できずに印した鎖骨への赤い刻印が目に入る
昨日はこれが精一杯だった
本懐を遂げることは出来なかったけど
俺の欲望丸出しのキスには答えてくれた
それの意味することも理解しただろう
それだけでも進歩だよな
抱きたかった想いと
抱かなくて良かったのかもと言う
二つの相反する想いが俺の中を占めていた
「う・・・・・ん・・・」
俺の強い抱擁に身じろぎ
うっすらと瞳が開いて行く
惹かれて止まない瞳と交差する
「はよ」
「う・・・ん・・・・・はよ・・・」
まだ完全に覚醒していないのだろうか
甘えるように胸に擦り寄ってきてまた眠りにつく
舌っ足らずな言い方に愛しさが込み上げ
無防備な山口に軽く小さなキスを送る
「チュッ」と音まで鳴らしても起きない
それを良いことに何度も唇へ触れる
俺はある事を思い出した
山口の昔の男
俺より前に付き合った男
嫉妬して山口に詰め寄って
キスもしてないって聞いて安心した
だけどそれは山口がそう思ってるだけなんじゃないだろうか
もしこうやって一緒に朝を迎えていたなら
男がこっそりキスをしていても不思議は無い
ゲームをしながらそのまま朝まで・・・
無自覚な山口なだけにありえる話だな・・・
もしかしたらこの唇に男が触れたのかもしれない
そう思うと長めに唇を合わせる
もしかしたら少し手を伸ばして胸を触ったのかも知れない
さすがにそれは起きるよな?
何度唇を合わせても起きる気配の無い女に不安になる
恐る恐る山の片方へと手を伸ばす
山口・・・・・ブラを付けてない・・・
初めて触れたそれは服の上からでも柔らかくて
ぞわっと背中を何かが走る
これ以上は止められない
解ってるのに
服を少し捲ると白い腹が顕になる
ブラを付けていないって事は・・・
想像するだけで喉が鳴る
そっと服に手を触れると
「さ・・わだ・・・・・」
名前を呼ばれ我に返る
素早く手を離しわざとらしく髪の毛を梳きながら
「起きたか?」
「ん・・・私・・・・・」
「俺が風呂から出たら寝てたよ」
「そっ・・・か・・・・・ごめん・・・」
「いいよ・・・・・」
ちょっと悪戯したしな
だけど俺には山口の昔の男が頭から離れなくて
その後の言葉を繋げる事が出来なかった
「ごめん・・・・・・」
俺の沈黙を怒っていると思っているのか
寝起きで頭が働いていないのか
申し訳なさそうに謝る山口
「なあ山口・・・・・」
「ん・・・?」
「お前さ前の男ともこうやって朝まで一緒にいた事あんの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あるんだ・・・・・・」
「いや・・・あの・・・」
俺の質問に漸く頭が働いたらしい
たとえキスをしてなくても
一方的なキスだとしても
今目の前にある唇や白い躰に
俺じゃない男が触れたのかもしれない
「さ・さ・沢田!あのっ・・・ゲームしてそのままとかだぞ?」
「やっぱり・・・」
「やっぱり・・・って!でも今みたいじゃないぞ?」
「そんなの解んねぇじゃん
お前が寝てる間にとか・・・
今だってお前気付いてなかっただろ?」
「今って・・・」
「あ・・・悪い・・・俺・・・」
思わず漏らしてしまって自分の悪戯を暴露するしかない
「気付いてたよ!!」
「は?」
山口は真っ赤になって口を尖らせて
俺に背中を向けた
「お・お・お前がっ!キ・キスしてきたのも
さ・触ってきたのも気付いてたよ!」
「マジで?」
「だからっ!私はッ!寝てても気付くんだよ!」
俺は後ろからギュッと抱き締めた
絶対じゃないかも知れない
山口の言っている事は
気休めに過ぎないかも知れないけど
だけど・・・
「俺になら良いって思ってくれた?」
「う・・・・・・」
「俺だから何も言わなかった?」
「あ・・・う・・・」
「俺に触られるの嫌じゃなかった?」
「い・嫌じゃないよ!!!
お前だから・・・私・・・
お前以外なら殴ってるよ!」
「昨日殴ったじゃん」
「あう!それはっ!」
俺はもう一度ギュッと抱き締めた
本当に寝てしまっていたらキスの一つはされても気付かないだろう
だけど山口が必死に俺の事考えて言ってくれたから
その気持ちが嬉しかった
>>続く
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