原作卒業後・お付き合い中

このお話は、慎と久美子の3日間のお話です。
朝:春、昼:響子 夜:双極子 挿絵:尚
という構成で、順に進んでいきます。
朝・昼・夜と、時間が流れていくように、
各作者様の個性と、お話の一体感をお楽しみ下さい。





Step☆Up 〜1st Morning〜
(担当 春)





「山口!!俺っ!!」

我慢しようと思っていたし
無理にしようなんて考えてなかったけど
好きなんだ・・・
滅茶苦茶惚れてんだよ・・・
だから・・・

「俺のもんになって・・・」

そう言ってゆっくりと山口の唇へ近付き口付ける
何度も繰り返し深くなる口付けに
俺はずっと触れたかった所へと手を伸ばしていく



「うぉん!うぉん!」

山口の犬の様な鳴き声も
俺には可愛いんだ・・・

「うぉん!うぉん!うぉん!」

ちょっと・・・五月蝉い・・・
あれ?山口?





「うぉん!」



うっすらと明かりが差し込み
視界に飛び込むのはいつもの見慣れた天井



俺んちだよな・・・



「うぉん!うぉん!」

この聞き慣れた声・・・
傍に有るはずの温もりも無く俺は夢だった事を悟り
玄関を開けた時の光景が目に浮かび溜め息が漏れる

「お前こんな早くになんだよ」

尻尾が千切れそうな程に振られ
周りのゴミが綺麗に飛ばされていく

まあ・・・良いか・・・会いに行けるし
今日は約束もしてなかったからある意味天の助けってヤツか



俺は富士を連れて黒田の門を潜る
朝が早いことを思い出し
玄関の戸を開けるのを躊躇してしまう
ふと縁側に目を向けると山口の姿が目に入り
そのまま縁側へと近づいていく


「おぉ!沢田じゃねぇか!おはよ!どうした?こんな早く!」

「はよ・・・・・」

朝から見る山口の笑顔に胸が高鳴る
富士が繋がっている紐を差し出すとふっと笑って手に取る
少し触れる指先に神経が集中する

「また行ってたのか!お前は本当に沢田が好きだなあ!」

飼い主にも同じだけ好きになってもらいたいもんだよ・・・
声にならない想いを呟く

卒業して告白して付き合えるようになったけど
何も変わっていない気がする

いや・・・変わったか・・・

何度か触れた事がある唇に目が行ってしまう
俺は何時だってキスして抱き締めて
それ以上の事だってしたいけど・・・
相手は山口だ・・・
下手したら一日動けずに寝たまま過ごす羽目になる
それだけは避けたい

「朝から悪かったな!」

思わず今朝の夢を思い出してしまい
邪な気持ちを悟られないように目を逸らして

「お前も珍しく早いじゃん・・・」

「あーー今日はおじいさんの古い知り合いが来てるんだ」

「ふーん」

「そうだ!お前んちゲームあったよな?」

「ゲーム?あるけど・・・」

「やりたいゲームあるんだ!お前んち行って良いか?」

「別に・・・良いけど」

願ってもない恋人からの誘いに
頬が弛むのを押さえながら極めて冷静に答える

「取ってくる!」

そう言って部屋へと戻って行った


組長さんの友人か・・・
山口を待つ間に組長さんの友人を思い浮かべてしまう
その筋の人だよな・・・
京さんも一緒なのかな?
何時もなら気配を感じてすぐに顔を出すのに
それだけ大事な客人ってヤツか・・・



途中コンビニで朝飯買って部屋に入るなり
山口はベッドへダイビングする

「はーーー!!生き返る〜!
 ちょうど暇してたから助かったよ!」

「お前はいなくて良いのかよ・・・」

「なんか夜行で来るって言って朝早くてさ
 出迎えだけな!あとは邪魔になるだけだしな!
 早くやろうぜ!!」

ベッドに横たわって言うセリフじゃねぇな・・・
何も解ってない女にため息を吐く

「それ・・・どうしたんだ?」

「あ・・・えっと・・・昔結構はまっててさ!
 片付けてたら出てきてさ!久しぶりにやりたくなったんだ!」

「ふーん」

少し前に流行ったバトルゲームだ
確かに山口の好きそうなゲームだな



「げぇーーーー!!!また負けた!!!」

「お前大技使いすぎ・・・」

「むーーーっ!沢田お前が強すぎるんだ!!!
 アイツん時は負けたこと無かったんだけどなあ!」

「アイツ・・・?」

「あーー・・・」

一瞬顔を曇らせたのを見逃さなかった

「アイツって・・・テツさん達の事じゃねぇの?」

「そ・そ・そうだぞ!テツとミノルだよ!」

明からに動揺してるのが解る
それを放置するほど甘くないけど?

「嘘吐くな・・・誰?」

「え・・・だれ・・・だろ?」

「隠さないといけないようなヤツなのか?」

「う・・・・・・む・昔・・・付き合ってたヤツ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「いやっ!べ・別に隠してたわけじゃねぇぞ?
 お前も聞かねぇし・・・って・・・沢田?」

そりゃ山口の方が年上だし
付き合ってたヤツがいてても不思議じゃねぇけど
山口にはそんなヤツはいないと思い込んでた俺には
山口の言葉は何も入ってこなかった
ただ山口の昔の男への嫉妬で一杯になっていた



>>続く

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