<楽楽・神戸>練習風景


2008年12月28日(日)

12月20日神戸大学マンドリンクラブ第53回定演の感想

12月20日、新しくできた新神戸にある神戸芸術センターホールにて
第53回KUMC定期演奏会が催されました。
ここ数年、毎年聴きに行っているこの演奏会ですが、
今年もまた、期待を裏切らない素晴らしいもので、
プログラムは日本の作曲家のものが多く、
個性的なものでした。
年々現役達の技量は進化し、
また合奏技術も向上してきていますが、
今年の新たな発見は、
音楽の表情に深みが出てきたことです。
その中で、私が気に入った二曲をご紹介しましょう。
第二部の吉水秀徳氏作曲の初演委嘱作品「無言歌」は、
小品ながら上品な香り(バロックのような)がする作品でした。
パッヘルベルのカノンを連想させるような部分があるかと思うと、
後半には、M1とM2のデュオによる個性的なハーモニーで一瞬ハッと思わせる、
もう一度聴いてみたいと感じさせる、
そんな不思議で落ち着く曲でした。

当日のトリは、小林由直氏の「風の軌跡」
わかりやすいテーマをベースに、
由直氏らしい曲づくりが随所に見られ、
変拍子あたりは、かつての帰山栄治氏を彷彿とさせる雰囲気がありました。
終盤の厚みのある和音展開の連続が素晴らしく、
静かに終わるエンディングもさすがと思わせました。
風の軌跡という曲名らしく、
まさに色々な風が吹いておりました。

現役の演奏を聴きながら、ふと思ったことがあります。
マンドリン音楽は決してメジャーなものではありませんが、
53年もの年月を経て、
衰退することなく進化しているこの様子を見て、
この舞台にいる若者達を焚き付けているものは一体何であろうかと。
一つには、マンドリン音楽に通じた日本の作曲家が、
マンドリン音楽に相応しい新曲を書き、
それが学生達の心に届いているということではないだろうか。
そして、それを聴いて感動する聴衆(多くはマンドリン関係者)が存在し、
過去から現在に至る時を経ても、
その音楽に対する繊細な感性を保っているということ。
彼らと私たちが時代を超えてどこかで通じているという感覚は、
かけがえのないものとして連綿と受け継がれていき、
これからも続くであろうと確信できるということです。

ということで、私達、楽楽・神戸がやっていることもその延長線上であり、
マンドリン音楽に対する感性は、
年齢に関係なく研ぎ澄まし続けていきたいと思うのです。
このような一朝一夕では得られない存在を日頃は実感せずに、
平々凡々と暮らしておりますが、
この集団にこのメンバーが集まっていることは
奇跡と言っても過言ではありません。
                          2008.12.21 J.S




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