著述の部屋
松生利直記念館
 
松生利直さんの「著述の部屋」です。

 「枯草雑記」は、ご逝去の後に書斎から見つかりました。八枚の原稿用紙は 和紙のこよりで丁寧に綴られてありました。足跡さえも遺そうとされなかった方ですから、これ以外の著述はおそらく乞われて寄稿した著述です。

 「ソクラテスの弁明」、「正しき信」、「教室往来」は三十歳代前半に高知師範学校文芸部機関紙『白菱』に寄稿されたものです。これらの戦前の著述には、 ソクラテス、カント、聖徳太子の研究をされ、親鸞聖人のお心に仏教倫理の確立を目指された白井成允さんの強い影響が読み取れます。

 戦後、京城から日與夫人の生地である岩手に引揚げられ、僻地とよばれた久慈、山形村と流浪され、無知の「知」から無知の「愚」へと、 倫理道徳の世界を離れ、親鸞聖人のお心を宿業の大地に自覚され、虚無の世界を掘り下げ深められていきました。

 「枯草雑記」を書かれた頃、登張竹風さんの『如是経序品』、ニーチェの"Also sprach Zarathustra"を読まれておりました。ニーチェの虚無の世界「永劫回帰」と、 自身が受け止めている、虚無の世界「宿業の永劫流転」との違いを、感じられているようでした。 虚無の世界から「力への意志」へと向かうニーチェの道とは異なり、 宿業の中にあって、その宿業に随順し、宿業の中でありながら宿業に囚われない、広い自由な世界への通を歩まれたようでした。

 

「枯草雑記」


「ソクラテスの弁明」

 

「正しき信」

  

「教壇往来」

  

「白井夫人を偲びて」

  

「畢竟じてなんの用」

「炉のけむり」

 

「寒人閑話」