東大寺大仏殿八角灯籠 「音声菩薩(横笛)」



 2010年秋、東京国立博物館において、「東大寺大仏 -天平の至宝-」が開催された。学生時代の恩師の叙勲のお祝いで東京に出たため、これを見に行った。その展示の中に、大仏殿の前にある八角灯籠の音声菩薩が展示されていた。あらためてその四面に彫刻された仏像のすばらしさに感激した。
 この灯籠の四面に彫刻された音声菩薩はいずれも優雅で優しい顔立ちで見るものをほっとさせる。豊かな表情と優しい顔立ちは見るものの心をいやしてくれる。
 以前に(1981年)年賀状用の版画にしたが、あらためてこの作品をもう少し大判で版画にしてみたいとその場で強く思った。2011年にその内の一つを版画にしたが、30年前に一度作品にした横笛を吹く音声菩薩をもう一度大判にしたいと考え、今回取り組んでみた。前回取り組んだ際ははがきサイズでありかなり細かい彫刻が必要であったが、今回は拡大した分幾分取り組みやすかったが、それなりに細かく年のせいで根気強さも薄れなかなか集中できず、作品としてはこれまでで一番出来の悪いものとなってしまった。
 第一の失敗は二版目の彫りを加減しすぎ、一色目を生かし切れなかった。第二の失敗は、二版目で一番大事な顔がゆがんでしまい以後修生が出来なくなってしまい、作品として致命傷となった。その時点で気持ちが離れてしまった。また三版目までの彫りを加減しすぎたために、四版目の緑の面積が相対的に広くなり、その色が強くなりしかも濃くなりすぎ、作品全体が暗くコントラストがあまりつかなくなってしまった。
 この仏像にはことのほか思い入れもありもっときちんと仕上げたいと思ったが、気力の充実している時でないとなかなか思い通りのものが出来ない。年齢を理由にはしたくないが、それなりに気力集中力が落ちてきているということであろうか。
 毎日仕事から帰り以前は夜3時間くらい取り組めたが今回は、仕事疲れもたまり取りかかりも悪くその半分くらいしかできなかった。結局手間暇かけた割には画面の中にオーラが無くなってしまった。
 

50枚限定 6色  W22.4 × H33.0 (p)


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