平福寺(岡谷市) 「金剛界大日如来坐像」



 我が家の菩提寺である平福寺の本尊の金剛界大日如来坐像を今回は作品にしてみた。 このお寺は、弘法大師空海の密教を擁護する道場として開創された。その開基は不詳であるが、諏訪下神宮寺僧・憲明阿闍梨(?-1396)の中興とされる。
 しかし、天正・慶長年間(1573-1615)の戦乱・洪水により荒廃し、横河川左岸の古屋敷を離れて、東堀郷と共に現在地に遷された。第23世憲栄和尚(?-1729)により、諸堂を建立、本尊金剛界大日如来を造顕し、悲願の復興を遂げた。このご本尊は、この時、京都の仏師に命じて造立されたとのこと。
 またこのお寺はお日限地蔵尊でも有名である。この地蔵尊に「日を限って一心に願掛けすれば、不思議にも聞き届けてくださる」ことで知られ、日々多くの方が参拝している。毎月23日のご縁日、特に4月の例大祭には、大般般若法要が行われ、桜の咲きほころぶなか、露店や青空市も立ちならんでいる。
 本尊であるこの像は、高さが1メートル余あり、堂々とした像である。金剛界大日如来は智拳印を結び、頭には五智宝冠をかぶっている。密教では大日如来は仏像界の王ともいわれている。
菩提寺とはいえこれまでじっくりご本尊を眺める機会はほとんどなく、4年前の父の葬儀以来、機会があればこのご本尊を版画にしてみたいと考えていた。昨年の暮れになりそろそろ取り組んでみようと思い立ち、今回初めてじっくり眺めさせて頂いた。
 2月の初旬より版画に取り組みはじめ、平日は毎日仕事から帰り夜3時間くらい取り組み、土日は一日かけおよそ1月間かかりようやく完成した。1版彫るのに1週間はかかった。仏像の飾りや、背景の彫りが思いの外複雑で時間がかかったが、急ぐ必要がないため時間はかかっても確実に仕上げたいと考え、取り組む。これまでは50枚単位で作品を制作していたが、今回は半分の25枚とした。そのため刷るのは各版1日で終わらせることが出来た。最後の7版目では、彫った箇所が広い部分は、彫った部分で余計なところが色がつき画面を汚してしまったのが残念であった。
 時間はかかったが、出来るだけ丁寧に取り組もうとした分、作品としてはまずまずの出来となった。しかし、細かい作業が必要で、時々集中力が切れ少し詰めの甘いところも散見される。

25枚限定 7色  W22.5 × H33.0 (p)


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