APB-1の後継基板となるAPB-3は個人頒布のキットではなくCQ出版から製品として発売されました。
細かいチップ部品のはんだ付けを期待(?)していましたが、頒布後に発生する様々なトラブルを考えると贅沢な期待だったかもしれません。
組み立てて使い込むことを期待されているのだと判断して購入に踏み切りました。
我が家で入手した電子工作組立てキットとしては最高クラスの価格です。
1月に入ってケース無しキットが少し安価で発売されて入手性が向上しました。
CQ出版の販売ページでは発売初日に瞬間販売完了となっていて予約もできなかった。 その後も再販のアナウンスがあったが、すぐに売り切れて購入させてくれない。 こまめにホームページをモニターしたところ予約ページで予約することができた。 しばらくしてCQ出版の担当者からメールが届き、購入専用のページに誘導された。 所定の費用を振り込み、待つこと暫し、やっと小包が届きました。 APB-1と違って装丁がプロっぽい。 |
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箱を開けたところ部品実装済みの基板、入出力コネクター群、ケース、ソフトウエアが囲まれたCDRが入っていた。 基板は青いプチプチの梱包材にくるまれていたが、これは導電性のものではなかった。 CDRにはきちんと印刷が施されており、見た目はCDRに見えない。 APB-1の時と比較するとすごくシンプルな梱包だった。 |
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メイン基板を見るとFPGAから引き出されたパターンの一部がミアンダ・パターンになっている。 どのようなCADを使ってこの基板を設計されたのだろう。 |
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キットに入っていた部品をすべて並べてみた。 APB-1頒布時(はんだやはんだ吸い取り線も含まれていた)の驚きはない。 ケースのパネルがすでに穴あけとレタリング済なところが今まで入手したキットと大きく違うところだ。 自作パネルと比べると見栄えが雲泥の差、これがアマチュア自作と製品のだろう。 |
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メイン基板の裏側。 APB-3がフルキットだったら、このチップ部品すべてを手はんだ付け! 途中で心が折れそうな数のチップ部品群だ。 |
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コネクターやピンをすべてはんだ付けした。 LEDと4ピンのはんだ付けにちょっと手間がかかったが、30分もあればすべて完了する。 押しボタン式のスイッチは基板にぴったりつけて取り付けないとダメ。 ケースに入れた時に難儀する(スイッチとパネル穴の径が絶妙にピッタリで、ずれると摩擦が増加する)らしい。 ヒートシンクを取り付けることを想定して当面不要なピンのはんだ付けはすべて見送った。 |
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パネルを取り付けて基板左横から見たところ。 秋月電子さんで入手しておいたクールスタッフ(放熱フィルム)をFPGAチップに両面テープで貼り付けた。 こんな薄っぺらいもので放熱できるのがマジックだ。 |
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基板を後ろ方向から見たところ。 ピンヘッダーを事前にはんだ付けしていたらクールスタッフを取り付けることはできなかった。 他の信号を取り出す時は別の形状の放熱器をさがして取り付けないといけないようだ。 |
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基板を右横から見たところ。 クールスタッフのエッジは導電性の銅が出ているようなので本来であればポリイミド・テープを基板側に貼ったほうが安全かもしれない。 |
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前パネル側から見たところ。 クールスタッフはケースの天板に潰れて接触するのでそこで放熱するらしい。 BNCコネクターに取り付けるプラスチックリングをニッパーで一部切り取り、やすりがけして高さを合わせるところがちょっと面倒。 |
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ケースの取り付けがこのキットの鬼門。 付属のタッピング・ビスでねじ穴を作って基板とパネルを収めることになる。 この穴を垂直に開けることと全面パネル、後面パネルの平行度合がプッシュスイッチをスムースに動かせるかどうかに影響する。 おじさん工房さんのBBSで共有されている情報ではアルミパネルの裏側からスイッチ穴をざぐるといいらしい。 |
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専用のケースに入れて前パネル方向から見た。 見かけが美しい。 LED穴も特別な加工をせずそのまま青色LEDから光が漏れている。 小さいLEDの頭を切ってこの穴にいれると美しいらしいが、我が家のAPB-3は素のまま使っている。 入力インピーダンスを50オーム/1Mオームに切り替えるプッシュスイッチが嬉しい。 |
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裏パネル方向から見た。 APB-1にはなかったAudio Inputポートがついている。 外部電源が必須になった点が少し残念。 パネル上の情報では5V 800mAと明記されているがマニュアルでは5V 2Aの電源が必要、と記載されている。 念のため5V 2AのACアダプターで使っているが、5V 1Aの電源でも全く問題なく動作した。 本当はどっちが正しい? このクラスのキットを購入される方ならこのクラスのACアダプターはすでに持っているだろうからキットに入れなかったのは正解だと思う。 |
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ケースの裏にゴム足を貼りつけた。 机の上で滑らないのでこれは必須だとおもう。 最初からキットに入れなかったのは何故? |
組立て過程のレビューとポイント
0.マニュアルを事前に印刷して手元に用意。
1.キット以外に自分で用意した部品。
(1)秋月電子さんで販売しているクールスタッフ2枚
(2)ゴム足4個
(3)AC-DCアダプター(5V/2A)
(4)A-BタイプUSBケーブル
(5)ステレオミニジャック・ケーブルもしくはヘッドフォンかステレオスピーカー
(6)両端BNCオスのケーブル
2.使った工具
はんだごて、はんだ(いつもの0.3oスパークルはんだ)、はんだ付け後の確認用ルーペ
ニッパー、やすり、ラジオペンチ、プラスドライバー
ACアダプター通電後にレギュレーターの電圧を測るためのテスター
3.FPGAコンフィグ用の4ピンヘッダーとLEDのはんだ付かうまくいけばこのキットは9割完成。
グラウンドパターンに熱が奪われるので高温はんだごてで一気に取り付ける必要あり。
4.レギュレーターの電圧(我が家の場合)
IC3 3.302V、IC4 1.196V、IC13 3.309V
5.CD-Rで配布されているソフトウエアファイル群はすべてPCのハードディスクにコピーして使うこと。
CD-R上で実行するとトラブルが発生するらしい。
6.マニュアルに沿ってドライバーとFPGAへの書き込みを実施すれば全く問題は起きない。
7.付属ケースのねじ切りには結構な力を必要とする。
ケースを垂直に立てて片手でしっかり握り、タッピングねじで垂直/一気にねじ切りすること。
合計4か所のねじ切りが必要だがタッピングねじは4個ついているので最初の一つ目のねじ切りが
成功するとその後は楽。 最初の1個目が最重要。
8.フロントパネルの入力インピーダンス切り替えスイッチがオン・オフ時に引っかかるときは
安易にパネル穴を大きくするのではなく、入力のBNCポートを止めているプラスチックの
スペーサーに着目。 灰色のスペーサーがスイッチとぶつかる部分があったので、そこを
少しやすりで削って問題解決。外からは見えないものなので問題なし。
動作状況、結果
・動作テスト時にInput/Outputポートを直結したときのネットワークアナライザー画面の波形。 (マニュアル通り)
フルスパン(0-50MHz)の波形実用的な範囲は0から40〜45MHzの範囲だと思われる。(1MΩインプット)
50Ωインプットの時は少し帯域が拡大するようだ。
・低周波領域におけるネットワークアナライザー画面。
入力インピーダンス50Ω時と1MΩ時。両者ともほぼ変化なし。
・8MHzのクリスタルをネットワークアナライザーで測ってみた。
教科書通り定番の波形を表示。
続いてラベル判読不可能なセラミック振動子を測ってみた(例1、例2)。
・10.693MHzクリスタルフィルターをネットワークアナライザーで測定。
・36MHzのクリスタルをネットワークアナライザー(1MΩインプット)で測定。
最大周波数が50MHzなのでこの程度の高い周波数でも問題なく対応できる。
・インピーダンスアナライザー+ブリッジで50Ωの抵抗を測定。50Ωでキャリブレーションできていないが結果は優秀。
470pFのポリプロピレンコンデンサーを測定。 こちらは値が低めに表示された。
・TOYOCOMの36MHz発信器をAPB-3のスペクトラムアナライザーで確認した波形。
位相雑音、スプリアスが予想以上に多い。200円だとこんなものか?
発信周波数がかなりずれているのだがAPB-3が悪いのかこの発信器が悪いかは不明。
・スペクトラムアナライザー、信号未入力(50Ω)の波形。
APB-1と比較すると雲泥の差でグラウンドフロアが低い。
・スペクトラムアナライザーでNHK大阪第2放送電波(828kHz)を捕獲。
Input portにつないだPCR-1000付属のロッドアンテナでこの程度の強さだった。
・日本橋のDigitでコアを入手。めがねコアの伝送特性を測ってみた。
長いコア(50円)、中位のコア(100円)、短いコア(50円)。 どれも低域のロスが大きい。
FB801−1個の伝送特性、FB801を2個つかってめがねコア風にしたときの伝送特性。
どうもFB801でめがねコアを作ったほうが低域は得策のようだ。
・SAE-1を追加投入した。
広帯域のスペクトラムモニターには向かないが局所的に信号を観察するには十分な性能だった。
SAE基板の基板の裏と表。900MHz波形の観測例。
周波数のずれはAPB-3側の原因だと信じたい。
APB-3を使われている方々の公開情報(Links)
・SDRで BCLを(ktmさん) おそらくAPB-3の組み立て記事を最初に公開された方のページ。
クールスタッフの取り付け位置が参考になりました。
・APB-3を使ってみる(JR1PWZ OMのページ) リニアリティのチェックをされており性能情報が大変重要で参考になります。
・日々の記録(kephisさん)
・Digital Ham Life(JI1ANIさん)
・USB-FPGA信号処理実験基板APB-3(henteko雑記さん)
・ぱなりラボラトリー通信(ぱなり さん)
・通電してみんべ(ca3080さん)
・万年準備中のブログ(JL1VNQさん)
APB-3を活用されてる方々のページを勝手にリンクしています。
不都合がございましたら削除いたしますので、お手数をおかけしますがご一報ください。