おじさん工房
汎用実験基板 APB-1の製作

超広帯域スペアナのGigaSt、フィルターなどの部品特性を測定できるFRMS/FREXには無い
狭分解能(帯域)を持つスペアナ、ネットワークアナライザー機能を筆頭に多種多様な顔を
持つAPB-1キットがおじさん工房さんで頒布されています。
0.5mm幅のFPGAを筆頭にチップ部品満載のハードルが高い(?)キットですが製作に挑戦して
みました。部品代20000円+送料500円で頒布していただきましたが、これが驚きのキットでした。

おじさん工房さんに頒布意思確認のメールを出し、頒布対価の振込みをしてまもなく部品パックが届きました。
部品のカテゴリーごとに分類され、ラベルも貼って頂いたので員数チェックが楽でした。頒布していただいた部品に0.5mm、0.8mmの半田、半田吸い取り線まで入っている。ここまで製作者を配慮したキットは珍しい。さすがにフラックスは入っていないので手持ちの奴を使用。
全ての機能を確認するために追加で必要な部品はロジックアナライザーをテストする際に必要な抵抗1本です。頒布していただいているおじさんの先見性に脱帽です。
もっとも手ごわいXC3S250E付近のPCBパターン。APB-1の基板無くしてこの最強実験基板は無い。
このピンのピッチと部品の細かさ、多さに気持ちが引いてしまいすぐに着手できなかったのは事実。
過去にOptimizeさんのEZ-USB+ロジアナキットを作った経験が無かったらこのキットに手を出していなかった可能性は否定できない。
左右に配置されているチップ集合抵抗の半田付けは位置調整をきちんとしないと半田付け不良になる。(対向ピン用ランドの距離が離れすぎ)
Atmel社のARMを使ったコントロールCPUが搭載されている。
CPUだけ載った基板は過去に多数雑誌付録等で添付されていたが、実用キットとして使っている例は今回がはじめての経験。
書き込み用のソフトウエアのVersionが最新だと上手く書き込めないというヒント(専用BBSの諸先輩のご経験によるメモ)が無ければこのキットの完成は無理でした。( AT91-ISP v1.12.exe で書き込みました)
チップ抵抗、チップコンデンサー等々、チップ部品満載のキット構成で苦戦。ピンセットでちょっと強めに掴むと思わぬときにどこかに飛んで行ってしまう。部品は若干余計に入れていただいているので助かった。我が家でLostした部品は結局チップ抵抗1個だった。未だに見つからず…多分部屋を掃除したときに掃除機のゴミとなってしまっただろう。チップ部品は半田付けのフラックスによりピンセットから段々離れなくなってくるのでピンセットを時々アルコールで拭くか、針や竹串で押さえながら半田付けすることになりました。写真の半田は0.4mmの太さ。チップ部品が小さすぎる!
付属しているスイッチとピンヘッダーの一部は結局未実装とした。
ハンダゴテは過去の経験から新しく新調した物(太平洋産業のPX-501)を使用。コテ先の温度を320℃から400℃に対象物とランドのパターンにより調整、これが一発完動のポイントだったかもしれない。
FPGAもARMも半田付けは大変楽であっという間に完了。ポイントはフラックスの多用、先人の知恵、少し高温のハンダゴテ+地球の引力+フラックスの力によるブリッジされた半田の除去。結局半田吸い取り線は不要だった。

トロイダルコアに巻くUEWは3本を捩って巻くのだが捩るのが面倒。我が家は手動で捩りました。穴が小さく、慎重に撚り線を通さないと皮膜を傷つけてしまい思わぬトラブルになる。
チップ抵抗等の部品は本当に小さい。ランドがグラウンドに繋がっている場合は半田コテの温度を少し上げる必要あり。位置あわせはハンダゴテの先と鉄の針か先を削った竹串で行った。
一番手ごわかったのが4ピンの水晶発信器。マニュアルでは補助リード線をつけて基板につけろとアドバイスしているが面倒なので直付け。最初にランドにはんだを山盛りにして発信器を取り付けた。
タカチのケース(YM-130)に格納。前後の寸法がギリギリでちょっと苦戦。基板とケースの間のスペーサーは現物あわせのため適合する物は見つからず、ネジとナットの組み合わせでごまかした。一応収まったという感じでしょうか。MicroSDカードはもし使用するなら入れっぱなしになりそう。毎回ケースのネジを外して入れ替えるなんて考えられない。かといって、SDメモリーカード用に穴をあけるのも面倒。
スプリアス、ノイズ対策のためノイズ低減用のコアを基板上に並べたが効果は疑問。

製作過程のレビュー、成功のポイント

0.徹底した部品員数チェック。適正な工具と材料(無洗浄フラックス)の準備。
1.製作マニュアルの印刷と熟読。
  製作マニュアルと部品配置図で矛盾があるが部品配置図のほうが正しい。
2.先輩のノウハウが詰まったBBSの確認と理解。
3.製作マニュアルどおり、順番に製作。チェックリストの作成、マーカーで終了部分のマーキング。
  ・チップ部品は半田付け前に(確認のため)テスターで仕様どおりの部品かどうか確認した。
   半田付け後では確認が極めて困難。
  ・半田付けはフラックス多用、ここでケチったり手を抜いてはいけない。
   ハンダゴテを当てる前に対象ランドにフラックス、一度でも熱を加えたら再度ハンダゴテを
   当てるときはその前にフラックス…、ひたすらフラックスを塗ることが大事。
   もちろんこて先はこて先クリーナーで毎回掃除することが必要条件。
  ・ルーペ、虫眼鏡で徹底した半田付け状況の確認。我が家では1.8倍、8倍のルーペを多用。
  ・部品の方向の確認、極性の確認。
  ・ハンダゴテの温度はて材料とランドの配線にあわせて細かく調整。
  ・チップ部品を使うとき、ピンセットで強く掴んではいけない。チップが飛ぶ!
   事前に部屋、床の掃除、整理整頓が大事。部品が飛んでも探すことが出来るかも。
  ・ピッチの狭いCPUやFPGAなどの半田付けではブリッジする位に半田を盛った方が良い。
   半田ブリッジしたところにフラックスを塗り、基板を縦に、ブリッジしたピンの方向を
   地面に向けて傾け、クリーニングした高温(380℃位)のハンダゴテ先を地面から天の方向に
   向けてブリッジに当てると半田がハンダゴテに吸い取られる(地球の引力+αで落ちてくる)。
  ・集中力と根性あるのみ。コツコツつくればあとは時間が解決してくれる。
   「成功」のイメージを持ち続けること。一つ一つの部品の実装後のイメージ、自分の工作手腕の
   イメージが無いとちょっとしたトラブルで心が折れる。
  ・半田は手持ちの0.4mm銀入スパークル半田でした。(キット付属の半田でも当然問題無し)

でした。
もしもう一度このAPB-1を作成するとしたら以下の点を考慮したい。
  ・ケースは一回り大きめにする。(工作が大変だったので)
  ・FB801コアは基板の裏側に付ける。(スプリアスが激減するようだ)
  ・付属のBNCコネクターは使わず直接同軸ケーブルで引き出す。(ノイズ対策+レイアウトが自由になる)
  ・低周波領域もカバーできるようにしたい。
  ・ケースにレタリングを入れる(現状はラベルを印刷してテープで蓋に貼っているのでちょっと…。)
  ・基板上のコネクター全てをケースの裏側から取り出せるようにしておく(今後の拡張を考えて)

追加改善施策
  ・おじさん工房BBSにADCチップ入力部分のシールドがノイズフロア低減に効果有りとの書き込みがあった。
   実際に試したところノイズフロアが5~10dbくらい低下した。これならFB801コアは基板の裏に移す必要はない?

動作状況、結果

 ・スペクトラムアナライザー、入力無接続時の波形(Audio OutはOff、ケースの蓋はネジ止め)
 ・スペクトラムアナライザー、入力無接続時の波形(ADCチップの入力部にポリミイドテープ+銅箔シールド)
 ・ネットワークアナライザーによるXTAL特性(入出力のインピーダンス調整無し)
 ・ネットワークアナライザーによるGroup Delayの測定
 ・ネットワークアナライザーによるトロイダルコアの特性測定(単にジャンクコアに線を巻いただけ)
 ・スペクトラムアナライザーによる10MHzAM変調の測定
 ・スペクトラムアナライザーによる2KHz低周波(矩形波)の測定
 ・インピーダンスアナライザーによるCの測定、AM用バリコン(最大、最小容量)、5pFのセラミックコンデンサー
 ・インピーダンスアナライザーによる適当なL(コイル)の測定。
 ・インピーダンスアナライザー、ネットワークアナライザー併用によるトロイダルコアの特性測定
 ・インピーダンスアナライザーによるDEGENのDE1103アンテナ端子の特性
 ・オーディオ信号発生器から出力された波形(100Hzサイン波、200Hzノコギリ波)
 ・オーディオ信号発生器の信号をSpectranモニター
 ・波形モニターの結果(オシロスコープというには機能が不足?)
 ・復調器によるTBS放送波形の確認
  IQ信号を出力しSDRadioで受信。アンテナは10m程のリード線を窓際に這わせた状態。Gainは48dBに設定。
 ・リターンロスブリッジ波形MW帯特性(上の結果がDUTオープン、下のラインが50オームのダミーロード接続)
 ・リターンロスブリッジ(DUTに1cmφ-2巻のピックアップ)とネットワークアナライザーによる某図書館の盗難防止タグ測定
 ・ロジックアナライザーによる20桁2行のLCDモジュール表示の波形、PSoCからLCDにアクセスほぼ全体拡大

APB-1を製作された方々の公開情報(Links)

 ・汎用実験基板 APB-1 を組み立てる(jun930さん)
 ・多目的測定器の製作 (jr1pwzさん)
 ・APB-1(ソフトウェア技術者の為のCPLD/FPGA入門)
 ・神器製作中!(denmaru2000さん)
 ・おじさん工房: 汎用実験基板 APB-1(tamagomemoさん)
 ・おじさん工房 APB-1(JI3GABさん)
 ・APB-1(TAKAさん)
 ・APB-1(1)(2)(BEACON、冨川さん)
 ・おじさん工房基板完成(kephisさん)
 ・おじさん工房 APB-1のページ(正式なkephisさんのページ?)
 ・APB-1(DAIさん)
 ・ジャンクな電子工作&徒然落書き帳(JA7VRAさん)
 ・ラジオ少年の楽しい電子工作、その他(?さん)
 ・清貧生活(?さん)
 ・APB-1(適当にためしながら学ぶ電子工作お勉強室さん)
 ・doggie's blog(doggieさん)
 ・APB−1を使った多目的測定器(Sec鈴木さん)
 ・超すごいマシン(avrnikkiさんの万能測定器)
 ・APB−1の製作(飛騨の山猿大王(JA2HYD)さん)
 ・Inner Journeys(?さん)

 製作前、製作中に勇気付けられたり、製作後に参考になるページを勝手にリンクしています。
 不都合がございましたら削除いたしますので、お手数をおかけしますがご一報ください。 

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