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<<< 言論弾圧 >>>
新学期が始まるとどの教室の黒板も、所せましとサークル勧誘の落書きで埋め尽く
される。『自由の学風』そよ吹く京都大学の新学期恒例の講義室の 風景 である。
朝一番の講義を担当する教官は、これを拭き取ってから始めなければならないのだ。
たまりかねて、黒板に書きこんでいた女子学生たちに
「授業開始までには消しといてよね」
と頼んだところ
「それって、言論弾圧ですよね?」
ときた。
「やってはいけないって、どこかに掲示してありました?」
「先生、自分で消したら? 給料もらってんでしょ?」
うーーん。あきれてものが言えない様子を見て、おそらく気の利いた反論が
できたとでも思ったんでしょう、ツンツンと誇らしげに教室を出て行く彼女たち。
さすが難関を突破しただけのことはある。
まちがいなく正真正銘のエリートたちになっていくことでしょう。
<<< たまりかねて >>>
黒板は講義で全面使用します。
サークル勧誘などに使った人は,
自分で書いた分を講義開始までに
責任をもって必ず消しておくよう,
ご協力をお願いします。
講義の前に黒板に貼りつけておいた慎ましやかな「お願い」のマグネットシートも
ある朝、ついに数人の集団による糾弾の的となった。 罵声に包まれつつも、
作成者は講義にそなえてノドを守るため、懸命に黙秘権を行使。これくらいのこと
なら理由を説明しない権利も教官にはありますよね?
結局、最後は教官が強圧的に消さない限り、講義を始められないんだから。
<<< 似たような話 >>>
D号館の窓ガラスに接着剤でビラを貼っている学生を見かけて、たまりかねて
「そいつは勘弁してよ。掃除がたいへんだ」
学生「掃除のおばさんの仕事を作ってやってるんだ」
おもわず色をなして
「え?そんな あほな!」
学生「それ、差別用語ですよ」
一応そういうことは知ってんのね。まいった、まいった。
<<< 文化財埋蔵 >>>
埋蔵文化財 = 文化財を埋めておくこと
こりゃあ、レ点を付けてもシャレにはならん。
捏造、改竄、盗用、漏洩、...これ全てヘタなカンニングの成れの果て、怒りを通り
超して、とり繕わねばならない人間の哀しさを見る点でも同じ。
それにつけてもモラルハザードを追及した毎日新聞の 報道倫理 は見事!
<<< カンニングあれやこれ >>>
そう言えば、化学の試験開始直後に机上に小さな紙切れが置いてあったので、しまう
ように注意したら、目をシロクロさせながら慌ててモグモグ食べてしまった学生が
いたが、これは何て言うのだろう? 証 拠 飲 滅? まるで安物の漫画であった。
また別の日、ロシア語の試験で別の学生───
何度も注意したが左手の下に潜ませた紙切れを片づけようとしないので、誘惑にかられ
ないよう預かったまま忘れていたら、何を勘違いしたか試験が終わって引き上げる当方を
廊下で待ち伏せして通せんぼ。 こちとら早くトイレにも行きたかったので、なんとか
すり抜けて通ったら、今度は何やら喚きながら追っかけてきて試験控室まで飛び込んで
しまい、あろうことに教務委員が事情聴取するテーブルにさっさと自ら着席した学生も
いた。 (もしかして常習犯かな?この場慣れした様子は?)
誘惑に負けるのを未然に防ぐよう苦心したつもりが、あとで科目担当の Y 教授から
「あの学生は卒業がかかっていたのだ」 と非難めいた苦情までいただいた次第。苦い
思いをしたのは監督の方。
<<< 義務と演技 >>>
学生『先生の書かれたFortranの教科書について質問があるんですが、著者なら当然、答えて
いただく義務がありますよね?』
教授『え?』(尋常でない剣幕に、論争でもふっかけに来たかと、ちょっと構えに入る)
『そりゃあ、ま、そうでしょうけど...』
学生『工学部の化工の4回生ですが、この問題のプログラムがどうしても動かないんです』
教授(なんだ。一安心して)『じゃあ、作ったプログラムを見せてよ』
学生『いや。試験に落ちて追試の代わりに1題レポートで出さなければならないんですが、
まだ作ってないので動きません』
教授(ほぼ察しがつき、いじめの体勢に入る)『それなら出来るところまで作ってきてよ』
学生『それが、今日の夕方までに出さなければならないのに、今日は学部のコンピュータ室
が使えないんです』
教授(このあたりで形勢逆転)『じゃあ、僕の講座の学生演習室のを貸してあげますから』
学生『それは無理です。今まで一度もプログラムを作ったことがありませんから』
教授(トボけて邪険に抑揚を付けて大げさに演技)
『ん?要するにイ、その問題の答をそっくり教えてくれってことオ?』
学生『ええ。著者なら解答はあるんでしょ?
こんなもの1題のことで1年を棒に振るなんて、先生もバカバカしいと思いませんか?』
教授『うん。そう思うけど...』(結論はそのとおりなんだけどォ、その次がちょっと
違うんだなァ...。 自分でやろうとする意欲さえあれば、援助することに決して
やぶさかではないんだが。)
学生『化学のパンキョーなんて履修登録しておいただけで松本先生、単位くれたんですよ、
試験受けてもないのに。 それを、ここまで本人がお願いに来てるんですから』
教授『...』(ついでに工学部専門科目の単位までパンキョーの先生にやってもらおう
ってこと? そんなの手柄話として、そこらじゅうで吹聴されたら た ま ら ん。)
<<< 環境型SH >>>
「サザンクロス」というのは本当にサッカークラブかい?
それとも 「単なる タマ転がし です」 って Black-Joke かね、あのポスターは?
工2の宮○君、法2の藤△君よォ。毎年毎年、性懲りもなく...
<<< Black-joke にならなかった、いい話 >>>
掲示板に飽きたか、階段にまで各段ごとにワンゲル部勧誘のビラが貼りまくってあった
ので、書いてあった連絡先に電話し、
「君たちは渓谷や森でこういう風景に出会ったら、何か反応するんじゃない?」
とひとこと言ったら、すぐに 「わかった」 と対応され、謝りにまで来ていただいた。
何も謝ってもらう立場ではなく単に考えをお伝えしただけなのだが、これは感激。
ていねいにお願いすれば、ときにはこういうこともある。
<<< そうそううまくはいかなかった話 >>>
同じ調子で、講義前の黒板に 能楽サークルの勧誘の書き込みをやっていた学生に
向かって
「君たちの能の世界では 礼儀作法 は厳しいんやろうなぁ?」
当の学生さん、得たり とばかり うれしそうに
「ええ、そりゃあもう。特に お師匠さん の前では。」
うーーん、お師匠さん かぁ。
<<< お ま ま ご と >>>
入学試験の日になると相も変わらず折田先生の着せ替えごっこ、丸太小屋の秘密基地
ごっこ。最近は「寄ってらっしゃい」と寄せ鍋の お ま ま ご と まで開店。
え?『京大の自由の学風』『反骨精神』だって? マジ?
端的に言って、遊ぶことを知らずに大人になっただけのことでしょうが?
今、学生が反骨精神を発揮して立ち向かわねばならないことは、世の中に山ほど、
いくらでもあると思うが。
<<< 吉田参道にて >>>
本部正門から出てきたらしい学生の自転車が、車道の 「右端」 を猛スピードで
東一条交差点の方へ向かっていく。西からゆっくりと走ってきた、やはり自転車の
年配の婦人が、衝突を避けようとしてあわてて中央寄りによける。幸い、後ろから
徐行していたミニバンが急ブレーキをかけて停止し事なきを得たが、暴走学生は
そのまま知らん顔で西へ。
交差点へ来ると当の学生が信号を待っていたので
「今そこで、なにが起きたか気がつかなかった?」
と聞くと
「ハ イッ↑?」(例の尻上がりのやつ)
「左側を走れということですねッ」
なんだ、わかっとったんかい。
<<< そこのけそこのけ >>>
駐輪で極端に狭くなっていた歩道を、若い女性の自転車が猛スピードでこちらに向かって
無謀にも突っ込んできてすれ違いそこね、並んでいた自転車をなぎ倒して派手にひっくり
返ってしまった。
こちらは店の壁に張りついてかろうじてよけたため被害はなかったので、同情してしまい、
将棋倒しに倒れた自転車を起こすのを手伝いながら
「あなた、学生さん?」
「ええ。京 大 です!」
ああ、ああ、そういうことを聞きたかったんではないんだけど...
(学生なら、こういう事態になるくらいの予測をして、徐行するなり待避するなりする
判断能力、危機管理意識を身につけないといけないよ)
と言いたかっただけなんですが、「あやまれ」と言わんばかりにえらく目をつり上げて
お怒りのご様子。これでは言われなくても京大生とわかるわ。
<<< メタセコイア >>>
『自然環境破壊反対』?
あの木、アメリカの学者が中国大陸奥地で 新発見 したと称して、勝手に海外へ
持出したもの。
列強諸国による中国植民地支配の歴史を物語る、まさに 『生きた化石』、
しかも世界各地の植生環境を破壊しかねない 『樹木界のブラックバス』 という。
(『人間・環境学フォーラム』会場のチラシより)
なるほどね、そういうことだったんですか、
あの、生きた樹木を電線でグルグル巻きに呪縛するイルミネーションは。
「メタセコイアを守れ」 の主張かと早とちりして、喝采してしまった不明を恥じます。
<<<『新解さん』のこと >>>
どうやら新解さんの本領が発揮されたのは、3、4版あたりがピークだったようだ。
「新明解国語辞典」5版のはしがきには主幹が亡くなったことが記されているのみである。
あとは初版から5版まで並べて逐語的に変遷を分析してくれる人が現れることを期待する
しかない。
・『火炎瓶』
初版の「瓶のふたに砂糖・塩酸カリ」...大丈夫、砂糖と塩では発火しない。
編者達は警察から追及されたときの言い逃れのためか、ちゃんと最初から酸素を
抜いていた。
異様に作り方を詳しく説明してあることに喝采するむきもあったが、学習辞書
たるものに堂々と手心を加えた編者たちの度胸、その方がよほど興味深い。
(『塩酸カリ』は『塩化カリウム」の俗称。正しくは『塩素酸カリ』だろう。)
とまれ、初版発行時の大学紛争の残臭は版を重ねるに従い消えていく。
当時の学者による実感のこもった『ジレンマ』のていねいな実況例も、今の世では
ピンとこないと判断されたか、なんとも無味乾燥な説明に替わってしまった。
改訂のあとを2つ3つたどるだけでも、編集会議の中にいくらでも『ジレンマ』の
好例はあったろうにと思われるが。
・『合体』
元より「○×の婉曲な表現」どころか、より直接的な生物学用語である。
有名な『恋愛』の説明における「合体」は、はしたなくも
「...、出来るなら交尾したいという気持ちを持ちながら...」
と言うに等しかったのだ。
5版ではその学術用語の意味を並の辞書なみに併記したため、そこから派生した
婉曲表現であったことの種明かしをしてしまった。
これでは合体玩具で育った世代におけるウケは半減どころか無に帰し、軽妙さが
失せた。
したがって、『恋愛』etc の説明からも『合体』は姿を消し、おかげであの、
想いがとげられないときのせつなさ、まれにとげられたときの歓喜にまで言い
及んだ迫真の説明の文学性には、逆にいっそう磨きがかけられたとも言えよう。
・物理学用語
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