投資と運用リスク
リスクとは何でしょう 自己責任の原則 ボトル貯金とタライ貯金 株価は予測可能か
投資行動心理学  株価の変動要因 投資信託の真実 投資信託の基礎
金利ゼロの銀行がある  元本保証の変額年金

 

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なんとなくムードに乗せられて始めてしまう前に

投資・運用の基本についてちょっと勉強しましょう


リスクとは何でしょう

「リスク」は通常「危険」と訳されますが最近ではそのまま使われる場合が多いほど日本語として定着しています。リスクマネージメント、リスク商品、リスクヘッジ、ハイリスク・ハイリターン等々です。「Risk]の語源はイタリア語の「RISICARE」で「勇気をもって試みる」という意味だそうです。危ない、恐ろしい、近寄るな、というイメージよりも、向かってゆく、切り開く、というどちらかといえば積極的な言葉なのです。

リスクを覚悟して事に当たる場合に「リスクを取る」という言い方をしますが、リスクを取らずに生きて行くことは実は不可能です。生きている以上我々は常にリスクと対面しています。リスクの中で、リスクとともに生きています。リスクを非常に嫌う主婦が、『明日にでも亭主が死んでしまって、収入がなくなるかも知れない、だからお金を使うリスクは犯せない、だから食事を取るのを止めよう。』この人はリスクを回避して、結局死んでしまうのです。リスクに向き合わなければ生きられないのです。車にはねられて死んでしまう危険があるから、今日も外出しないでおこう、といって毎日会社へ行かないとどうなるでしょうか。

・・・最近のテレビCMでスマップの吾朗氏が、色々危険なことが多すぎると言って家に閉じこもっていると、その家にUFOが落ちてくる、というのがありますね。 このCM、軽そうに見えて実は深いものがあるのです。(確か東京海上火災のCMです)

さて、金融商品で変動利回りのものをリスク商品、確定利回りのものをリスクのない商品という場合がありますが、これは実は少し違います。リスクのない金融商品は実はありません。
確定というのは、取り扱う金融会社が一応お約束しますと言っているということなのであり、このお約束が実際には守られなかったことがあるのです。特にここ数年は沢山の事例がありますね。

破綻した生命保険会社数社の年金保険は毎月1万円を30年間払うと、60歳から月々3万円の年金が20年間受け取れるという具合に確定商品でありました。さらに加えて、配当の予想額まで設計書にはうたってあったものです。
しかし受取額はその約束された金額の50%以下、月額1万5千円にも満たないという結果となっています。(実際には年齢や払い込み期間等によって減額割合は様々です)

つまり確定利回りの商品といえども運用会社の破綻というリスクは元々有った訳なのです。
大きな会社は潰れることはない、有名企業は安心というのは全くの誤解、幻想なのですが、このことを多くの日本人は数年前まで忘れていただけです。
ここ数年の金融業界の大波乱で日本人はずいぶん勉強したと思いますが、まだまだ、大きな組織の傘の下ならとりあえず大丈夫、という感覚を捨て切れないでいる人が多いように思います。

「もらえるかどうか分からないし、幾らもらえるかも人によって違うのだから、所詮保険はギャンブルでしょう。」という人が時々います。
一瞬、そうかなと思ってしまいますが、本当は違います。「様々なリスクが我々を取り巻いており、ギャンブルは犯せないから保険に加入する」のです。保険に加入しない事こそがギャンブルと私は考えます。 なんだか禅問答っぽいですね。




自己責任原則

自己責任という言葉を聞くと、わたしは一種の「うさん臭さ」を感じます。 日本版401Kの導入の動きや、中国株式投資は今が旬などという広告などを見ていると、おれは決して騙されないぞと思ってしまいます。
(〜この記事を書いたのは3年前です。2004年の初夏に、イラク人質事件でこの言葉がまったく的外れな遣い方で一時期流行言葉になりました。言葉はよく考えて遣いたいものですが、ここでは資産運用等に関する自己責任の話しです。)

思えばバブル崩壊直前の平成元年頃数年間に私は変額終身保険を多く販売しました。変額終身保険は究極の保険と心から信じていました。 当時変額保険の運用実績はというと会社によって色々ですが、年換算で7%くらいから20%くらいという高い収益率でした。(一時期だけを見れば40%などという時期もありました)

しかし、あくまでも変額なのですから、貯金目的のみの人には勧める事はありませんでした。財テク商品としてではなく、あくまで終身保険として販売していました。
死亡保険金は最低保証があるので、保険としては損害を生じる事はないのですが、解約返戻金の額は保証されていない、つまり死亡時ではなく生存時の貯蓄としてみた時には元本保証がないからです。

 ところがそんな変額保険の高利率という見た目のよさに目を付けた一部の業界人が、銀行等と組んで資産家の相続用金融商品として大々的に売りまくりました。 保険としてではなく貯蓄商品として、確定でない利率をクローズアップして売込んだのです。 
結果は皆さんご存知の通りです。不幸にも破産状態となって自殺された方も存在します。
ここ数年の間に多くの裁判が保険契約者から起こされて多くのケースで保険会社や銀行が責任を取らされています。

われわれの業界には大変厳しい業法があって、顧客に対して説明すべき事をきちんと説明しないといけないことになています。 不完全な説明ということでも罰せられます。
しかし、元金保証ではないことを例えば1分間だけ説明した上で、その後20分間過去の高い利率の実績データをこれでもかとばかりに見せられて、その後10分間今後の展開が非常に高利率の可能性があると言う各界の著名人の意見や記事等を見せられたら、印象はどうなるでしょう。

そして、さて今ご決断なさらないと後悔しますよ、等と言われ、横では信頼の置ける(当時)一流銀行の一流銀行マンがうなずいているような場面で、初めに聞いた元金保証なしという事を第一に考えて沈着冷静に判断できる人がどの位存在するでしょうか。

前述の訴訟の例などはおそらくこんな感じでプレゼンテーションが行われていたのではないかと想像します。保証はしませんとちゃんと言いながらも、私の口では保証すると言えないのですが、実際は大丈夫ですよなんて言い方をしていたのではないかと想像します。

最近、こうしたハイリスクハイリターン商品の売込みに当たっては、説明せよというだけでなく、商品の中身や留意事項についての説明書類を必ずお客さんに提示し、手渡すように法律ができたり通達が出されたりしています。
しかし、きっとそういう事はいかにも手続き上の事のように短時間で済ませて、いかにメリットが多いかについての説明を証拠の残らない言葉や雰囲気や色々なセールストークを駆使して売り込むのでしょう。 そして結果については「自己責任」という訳です。
事故責任も自己責任なのです。 みなさん気をつけましょうね。





ボトル貯金、タライ貯金

これは私の造語なのですが、タライ貯金とはタライに水を無造作に入れて放ってあるような状態の貯金という意味です。つまり流動性が極めて高く何時でも気軽に引き出してすぐに使うことができるということです。 これはこれでいざという時に便利なのでいいのですが、このタライ貯金だけしか持っていないと、結局は何だかんだで使ってしまって、ちっとも貯まらない可能性が高いでしょう。

そこで私は、ボトル貯金をお勧めします。  タライより非常に小さな口でしかも蓋ができるので、いつでも簡単に引き出すというわけには行かないボトルに貯金をして、そのボトルには、ラベルを貼るのです。 たとえば、△△雄の大学入学時まで開けるな、とか、○○子結婚時まで封印、とか妻60歳のときに開けること、等と書いておきます。

当たり前ですがボトルに入れるというイメージの話しであって現実としては、例えば子供の大学入学時を想定して専用口座への積み立て貯蓄をするとか、学資保険や養老保険に加入する、年金貯蓄をするというようなことです。 また定年退職された方が、その退職金の一部を終身保険の保険料として払ってしまう、等々とにかく目的別にこまめに分けて、きちんと整理して棚にしまっておくのです。

私の生命保険のお客様でかなりの件数に加入してくれている方が、生命保険は(貯蓄性もある保険であれば)多少利率が低くたって、切り崩しにくいから自然とお金が貯まるし、しかも保障もあるので好きだ、と仰っています。そういう意味で保険を活用するのもひとつの考えです。

貯蓄や投資の目的である必要資金の性質に応じて運用の仕方や運用対象は違ってくるでしょう。 お金や資産も用途、目的別に分類して管理する事、その組み合わせのことを「資産ポートフォリオ」とよぶのだと理解しておいて下さい




株式投資のはなし〜株価は予測できるか


もしも将来の株価を予測できる人がいたら大変なことになるでしょう。その人は間違いなくどこかのマフィアに囚われて一生こき使われる運命か、或いはどこかの絶海の孤島に逃げて一生涯隠れて暮らす以外に生きる道はないでしょう。その存在が世間に知られた瞬間に彼は表の世界では生活出来なくなるのではないでしょうか。
そういう人がいるという話は少なくとも私は知りませんので、株価を常に予測できる人間はこの世には存在しないのだろうと思います。

仮にそのような人が実はいるのだとしても、また別の問題が生じます。
株価を予測できる人の存在が世間に知られたら、当然非常に多くの人達が彼と同じ銘柄に投資するでしょう。
殆どの投資家がその銘柄を買うとなればその結果、株価は一気に上昇し、では私も、と証券会社に連絡を取った時には既にその銘柄は魅力のある投資対象ではなくなってしまいます。これは大いなるパラドックスなのです。

この人が他人には自分の能力を隠していたとしても、証券会社や取引所の誰かに見つかり、いずれその秘密は世間に知れわたるはずです。株価の予測が絶対に不可能という意味ではありません。常に正しく予測し続けることが出来る人はいないだろうということです。

運用のプロがあらゆる手段を駆使して株価予測を試みます。そして彼の組み立てたファンドが株式市場平均を超える運用収益を挙げる場合があります。しかし、市場平均を上回った運用を実現し続けたプロはいないのだということです。
そして大変優れた予測能力を持つプロがいたとしても、彼が今後も同様の能力を発揮するかどうかは誰にも予測が出来ないのです。

投資理論には大きな幾つかの流れがあります。
「株価予測は技術的に可能である」とする学派と「株価の予測は非常に困難である」とする学派です。
予測する技術には過去の株価の動きから様々なパターンを抽出して、将来に当てはめて予測できるという「テクニカル分析」派や、株価と企業収益との関係や成長可能性と現在の株価との関係等を分析して投資すべき割安の株式銘柄を見つけられるとする「ファンダメンタル価値」学派等であり、これらの人達の間では以前からそして現在も多くの議論があり、沢山の論文や実証データなどが発表されています。

一方それに対するのは、株価は常にランダムに推移しており、一定の法則等により株価の推移を常に予測し続けるのは不可能であるとする「ランダムウオーク学派」です。
ランダムウオーク派の学者が「いかなるプロの投資家も株式市場の平均収益を超えたパフォーマンスを長期的には実現できない」という主張を裏付けるデータを紹介しています。1988年から98年までの10年間のアメリカの株式市場のデータです。

アメリカの代表的な平均株価指標である「S&P500株価指数」の10年間の年換算リターンは18.56%でしたが、プロが運用した株式ファンドの平均は15.24%だというものです。プロのファンドには優れた実績を挙げたものも勿論有るのですが、長期的にしかも平均で見るとこうなるわけです。株式投資の原理原則のひとつがこのデータに現れていると言えそうで
す。

バートン・マルキール著 『ウオール街のランダムウオーカー』は・・・
何故バブル発生が繰り返されるのか、運用手法はその運用ノウハウを売る側の都合の良い方便ではないのか、分散投資と長期投資による無理のない株式投資はありうるか、等々の奥深い考察を比較的面白く読むことが出来ます。 お勧めです。





投資行動心理学

株式相場が下がり続けるとどんどん不安になり、本来は買いのチャンスであるはずのその時期に保有していた株を反対に売ってしまい、結果としてその直後に高騰に転じた情報に接してなんて馬鹿なことをしたんだろうと猛反省をする。
株価がどんどん上がってきて、もうそろそろ売り時であるのに、つい買ってしまい、直後に暴落が始まった。というようなことは株式投資の世界では日常茶飯事なのではないかと思われます。

人間の行動原理は合理的、客観的な理由ではなく、心理的理由が多くを占めている点で、投資行動においても例外ではないという視点から、個人投資の先進国アメリカを中心に、行動ファイナンスという学問があります。
投資に関して人が行動する際に心理的要因がどのように働くのか、どんな心理状態のときに人はどんな投資行動をとるのかを科学するのです。

行動ファイナンスの中で「心の会計」という表現があります。
同じ金額のしかも同じ用途のお金であっても心の動き方によっては全く異なる価値になる場合がある。一つ例を引用します。次の事例を自分に起きた事として想像して下さい。

@あなたが1万円でゲットしたコンサートチケットを持っているとします。
コンサートの当日が迫ってきた時に、あなたはそれを亡くしてしまった事に気づきます。さてあなたはそのコンサートチケットを再度買いに行きますか?
Aもう一つのシナリオです。あなたはコンサートチケットを買いにチケット売り場に向かっています。財布を確認したところ、なんとどこかで1万円を亡くしてしまった事に気がついた。さてあなたは財布からもう1枚の1万円を出してチケットを買いますか。

@には「NO]と答え、Aには「YES」と答えるのが平均的な反応だそうです。 私もそうでした。
どちらも同じ金額を同じ目的に使う話であるのに、答えが違うのはなぜでしょう。
多くの人が@のケースでは娯楽のために2万円を払うのだと感じやすいからなのだそうです。
こうした感覚的な理由による判断は、人の投資の行動に際してはどんな経済理論も役に立たない場面が有るのだということの一つの証明です。

ちょっと面白い行動ファイナンスの例をもうひとつ。
人はいかに統計学的に意味のないサンプルに基づいて投資の決定をするかの事例です。
ある人が新しく出来たファーストフードチェーンの株の購入を検討します。何箇所かにあるお店を観察すると、どこの店も長い列が出来ていました。彼は迷わずその会社の株式を買いましたが、いつまで経っても株価は上がりません。実はこの会社の各店舗にできていた長蛇の列は「店員の手際が悪いために出来ていた列だったのだ」というお話です。

★行動ファイナンス理論を分かりやすく解説した日経文庫「人はなぜお金で失敗するのか」
から引用しました。



株価変動の要因

株価が上がる原因はなんでしょう。
自由主義経済ではどんなものについても当てはまる値段が上がる要因は買い手の増加です。
買い手が増えると受給関係から価格が上昇し、あるレベルを超えれば買い手が減りだして価格は落ち着くというのが市場メカニズムの基本原則のひとつです。

それではどういう場合に株式の買い手が増えるでしょうか。
その会社の業績が今以上によくなることが予想される場合、他の株式と比較して割安だと思える場合が最も自然且つ健全な株価上昇の要因ですね。 しかし様々な企業情報や経済環境の分析を自ら行い自らの判断で株式の選別ができる人はそれほど多くはいないのです。

多くの人は他人の判断を参考にして、情報として取り入れて、自分の判断の材料にします。そしてもっと多くの人が他人がすることを真似して株を買うのです。沢山の人達がある株式を買っていることを知って、自分も遅れないようにと買いに行くのです。

株式市場の相場を動かす要因は企業業績の客観的情報や景気の動向だけでなく、一般投資家の心理も大きな要因の一つであって、他の客観情報とは全く無関係に、心理的要因だけで市場が動くことすらあるのです。投資理論研究の世界には投資行動の心理を研究する「行動経済学」という新しい概念が既に大きく育ってきているようです。

心理的要因が株価に大きく影響することによって場合によってはある特異な社会現象を生じ、そして場合によってバブルの生成に結びつくことがあります。
冷静に検討すれば崩壊すると分かっているバブルを追いかけて失敗をする人がいつまでもいなくならないのは、バブル騒動が歴史上何回も繰り返されるのは、人間のどうしようもない「心の部分」が大きな要因となっているからなのでしょう。






投資信託の真実

日本において一般的に認識されている投資信託というのは実は本来のあるべき姿のものとは別のものであるらしい、というお話しです。

投資には当然リスクが伴います。そのリスクをできる限り少なくするための手法がリスク分散です。投資対象である株式銘柄を単一ではなく複数にすることで、大きな資金減少のリスクを低減させます。でもそれだけでは不十分です。株式市場全体が大きく下がってしまうことはあるのだし、そのこと自体を常に避けることは不可能です。

ではどうするか。ここで出てくるのがもう一つのリスク分散、時間によるリスク分散です。
下がってしまったファンドを売ってしまえば資産が実際に減少してそれでおしまいです。しかし、売らずに保有し続ければ、とリあえず損失は出ません。
そのうち市場も回復して、そのファンドの価値も元に戻り、いづれは大いに成長する可能性があります。でも売ってしまえば損失が出て、それで終わりです。

投資の専門家の意見では市場の上がり基調を確実に常にとらえる事はどんなプロにも全く不可能であり、上がってゆくタイミングを逃さないためには市場に居続けるしかないということです。
つまり長期保有するということは投資信託が資産運用の効果をもたらす大きな要因であるということです。

さてここで日本において一般的に認識されている投資信託の実態がどうなのかという話しです。
あるファンドを売り出して投資家(といっていいのかどうか疑問ですがとりあえづ投資家と呼びます)の資金が集まって運用が開始され、結構な実績を挙げたとします。

1年くらい経過すると投資会社はそのファンドの株式をどんどん売り始めます。つまり現金化します。どうしてかというと、まずまずの運用実績を確認した投資家(と一応呼びます)達はすぐに儲けを手にしたいと、解約してしまうのだそうです。

投資会社側はその返金に対応するために株式をどんどん売って現金を用意する、つまりそのファンドはもうおしまいになってしまうという訳です。せっかく大きく育つ兆しを見せていた優良ファンドも1年かそこらで消えてしまうというのです。

長期保有などという原則はここでは全く無関係であって、これでは「株で一発大儲け狙い」の単品買い、投機買い、ギャンブル投資でしかないではありませんか。

このような行動パターンの背景には、日本の証券会社の体質があると思います。
顧客の保有株式を短期的に売ったり買ったりさせることで、その都度発生する手数料が大きな収入源となってるようです。顧客の資産を殖やすことではなく顧客の資金を小刻みに移動させることが、目的になってしまっているという実態があるようなのです。

もともと、アメリカ人などと違って、投資だとか資金運用だとか資産管理といった世界について全く教育を受けていない日本人ですから、証券会社の思うままに行動してしまうのは仕方が無いかもしれません。株も馬券も宝くじも殆ど区別がついていないのではないでしょうか。(私の経験した先物取引の場合も事情は同様です)

、、、、とまあそんな訳で、日本において一般的に認識されている投資信託は実は本当の投資信託ではない場合がある、ということのようなのです。 
既に現実化しつつある日本版401K、確定拠出型年金の制度は、投資信託の年金版でもあります。投資信託とか株なんて関係ないよ、と言い切れない時代になってきています。早めに何らかの勉強を始めておくことを強くお奨めいたします。




投資信託の基礎の基礎


特定の株式を保有するのは株式投資です。しかし、その市場価格の上げ下げに対して一喜一憂し、その都度手放したり買い足したり売りぬいて別銘柄に再投資するということを短期間の間で繰り返すことは、投資というよりむしろ投機であると言えます。凄く儲かることもあれば物凄く損することもあります。

当たり前だと思うかもしれませんが、株式への投資がすべてこのような殆どギャンブルな訳ではありません。数ヶ月とか1年程度の短期的にしかも単一の銘柄を保有して収益を狙うのは、一般の投資家にとってギャンブルです。しかしリスクの分散を考慮して一定の手法に則って行う株式投資は投機ではなく投資だといえるのです。その手法の代表が投資信託です。

投資信託はどのようにリスク分散をしているのでしょうか。まずは「長期投資」によるリスク軽減。同じ株式に投資していても、数ヶ月とか1年程度の短期の投資では運良く市場が好調なときは大きな収益が上がりますが、運悪く暴落の年に当たれば大きくマイナスしてしまいます。5年以上の中長期の投資であればそれほど大きなリスクを伴わずに高いリターンも期待できます。

次に分散投資によるリスク軽減です。複数の株式に投資することによるリスク分散、複数の業種へのバランス投資、複数の国の銘柄への投資によるリスク分散ということです。複数の株式銘柄を選択してポートフォリオ(資金の組み合わせ)を組み、これを投資信託商品A(ファンドA)として販売(投資家を募って投資資金とする)しています。
株式市場平均値に近い動きを目指すファンドとか、世界のベンチャー企業を選りすぐって投資するファンドとか色々なリスクレベルのファンドが存在します。

投資開始後にその運用の実績と今後の可能性を分析してその配分を変えたりするのがこの投資信託の投資責任者、ファンドマネージャーの仕事です。彼らは、株式を保有している企業の財務や経営状態、営業戦略、マーケット状況、等あらゆる最新情報を収集し分析して、経営者への個別のインタビューなども交えて、業績、将来性の予測、分析をします。ファンドマネージャーは投資先企業の数字情報の収集のみでなく、新製品をすぐに購入してみたり新規店舗に足を運んだりもしているそうです。

人によっては、大きなリターンを狙うのが得意なタイプとか、市場が暴落したときに次への展開を図るのがうまい人とか、色々個性があるそうです。この投資のプロを信じて資金を託すのが「投資信託」というわけです。投資信託はそのファンドの運用状況をこまめに定期的に情報公開していますから、投資家はこれらの情報によって場合によっては資産の移動(バランスを変える等)を指示したりするのです。

この低金利が続く中しかも公的年金の給付額が少なくなって行き退職金等も決して増えて行くとは思えないこの時代には、変動商品を全く無視するわけには行かないように思います。かといって個別株式への投資はちょっと、、、、という人は投資信託を始めてみるのも良いと思います。また最近では、投資信託を年金商品として扱うものが出てきました。投資信託でありながら保険商品でもあるので、税金上の優位性や死亡時のリスクヘッジという付加価値もあり、検討に値すると思います。




金利ゼロの銀行

金利には単利、複利、利率、利回り、平均利回りなど色々あってなかなか曲者です。それはさて置き、金利を実感するひとつの方法があります。1年複利で預けた元金が何年で2倍になるかが分かる計算式です。それは「72を金利で割る」というものです。

7.2%複利では丁度10年で2倍になるというわけです。10年前のビッグやワイド一時払い養老などこれでした。それでは、最近の銀行の大口定期ではどうなるかやってみましょう。  72割る0、75= 96、、、間違えました、20%課税を差し引いた率で再計算 72割る0.6= 120 というわけで120年が正解です。

金利の無い銀行があるという話しは以前から知っていましたが、少し前にTVのNHK特集でその事実を確認できました。トルコのアルバラカ銀行という銀行ではお金を預けても利息がつかず、融資をしても利息を取らないのだそうです。それでも開店してすぐに預金が700億円相当集まったそうです。

企業への融資では企業が繁栄すれば配当のような形で利益を受け、これが預金者へも繁栄されるのでしょう。逆に経営がうまく行かなければ銀行も損失を蒙るのです。これはイスラム教の「コーラン」の教えに従っているからだそうです。

また「コーラン」には『まだ生まれていないラクダの数を予測して取引をしてはならない』  というのがあって、そのために、所謂 オプションや先物取引は禁止されているとの事です。銀行が企業と協同経営的感覚で運命を共にするとか、実際に存在しないものや事柄をお金に換算した商売をしないとか、イスラム教の一面を始めて知って、少し感動した次第です。

ただひたすら自己の利益を追求するためだけに融資先や預金者を捜し求めて取り合っているような、また不動産さえあれば経営者のポリシーや人格や市場の可能性など一切無視して融資しまくった歴史を持つ、どこかの国の銀行の偉い人達はこんなのを見ても、感動どころか、現実離れしている、などと言い捨ててしまうのでしょうかね。




元本保証の変額年金

10数年前までは金融商品は @元本保証商品と Aリスク商品、の2種類に分類されるものと思っていました。  独立FPを名乗るようになってから、投資・運用の基本書類を読み、運用会社のセミナー等を受講し、専門家の講演に出向いたりして、ようやく資産運用の基本だけは分かってきたと思います。そうして分かってきた事の一つとして、金融商品は前述のように2つのカテゴリーに分けられるのでは無く、全ての商品にリスクがあり、そのリスクの性格と度合いが異なるだけだということがあります。

現実に目を向けてみれば、数年前まで「元本保証」と信じられていたMMFという商品も、実は
「過去の実績からの類推で限りなく元本保証にちかい存在」であったに過ぎず、たまたま元本保証と同じ結果になっていただけなのです。 
2001年11月の米社エンロンの破綻をきっかけとしたMMF元本割れ事件は、投資にはリスクがあるという極当たり前の事実を、我々に分かりやすく見せてくれたのでした。

日本人は伝統的に安定志向が強く、貯蓄動向調査結果(平成15年調査)では株式や債券等の有価証券が貯蓄に占める割合は 9.6%に過ぎません。(預貯金は43%)
こうした根強い安定志向に対して、変額年金を販売し始めた銀行が保険会社に強く要請した結果として、なんと変額年金にも元本保証商品が登場しました。 販売の現場では変動商品と言えども「元本保証」の4文字をどうしても入れたいということなのでしょう。
リスク商品はリスク商品として堂々と販売して欲しいと私は思います。

さて、変額なのに、変動商品なのにどうして元本保証できるのか。ここには矛盾を含んだ理由が潜んでいます。
元本を保証する金融機関側には当然リスクが生じますから、彼らはこのリスクを出来るだけ回避しようとするでしょう。  そのためには、安定度の高い国債等を主体としたできるだけローリスクの運用をする事になり、ローリスクの運用が主体となれば、その結果としての運用収益は当然にローリターンとならざるを得ません。

ローリスクなのにハイリターンの運用対象など存在せず、もしもそんなものが有るのなら金融機関は変額年金の販売など即刻やめて、その運用のみに金と人手を遣うでしょう。
こうしてこの変額年金はローリスク・ローリターンの長期投資ということになり、ことによると、長期的インフレに負けるかも知れず、数年後に登場するかもしれない3%程度の定額の年金にすら負けるかも知れません。

そうであれば一体何のために変額年金を選んだのか訳が分からない状況といなってしまうのです。
営業現場での売りやすさを重視するあまり、せっかく芽生えつつある日本人の投資への意欲の向上に水を射すようなこうした戦略に、私は大いに心を痛めるものです。

みなさん、金融の世界にはどうせリスクは存在するのですから、変額商品は変額としてキチンと受け止めましょう。 そして、リスクを分析し、リスク回避の手段を導入して自分の投資ポリシーに合ったリスクレベルの投資をしましょう。





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