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自動車保険の通信販売 対物賠償は無制限に 保険金額の設定 地震保険の悩ましさ
自動車保険は特約だらけ 賠償責任保険
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自動車保険も通販ですか


自動車保険のインターネット販売や通信販売が始まってから3年ほど経ったでしょうか。現在数社がやっていますが、当初の見込みに対して販売は伸びていないそうです。ある会社では保険料収入が目論見の半分にも満たないため広告費の方が高額なのだそうです。すごいですね。アメリカではそれなりに成功しているらしいこの方式ですが、彼の国と日本の消費者心理の違い、自動車文化の違い等も背景にありそうです。

私が自動車保険を自分でも扱うようになったのは昨年のことですが、安さを売り物にしたこのやり方については以前から大いに疑問を持っていました。そもそも保険という形のない、一般の人に分かりにくいこの商品を対面販売でなく通販、ネットでやることがとても危険なことであると思っています。(対面販売で買う方がよほど危険である場合も勿論多いのですが。このことは生命保険のコーナーでも述べています。)


先日ダイレクト商品の自動車保険に加入している方の相談を受けました。

車両保険が一般車両保険ではなく、単独の自損事故や当て逃げされたときには保障されず、相手の車の所有者等が確認できなければならず、その場合でも5万円は自己負担であることをお話したところ、そのことはよく理解していなかったようでした。打ち合わせの結果、全ての事故で保障される車両保険をつけることになりました。保険料は約6万円から9万円になりましたがお客様は納得の上なのです。商品に優劣がある訳ではなく、商品設計が顧客ニーズときちんとマッチしていないという通信販売の典型的な例であります。

このこと以外にも私にはどうにも気に掛かる点があります。そもそも保険は多くの人達がお金を出し合って貯めておいて、誰かが困った時にそこから費用を出すということから始まった助け合いのシステムです。一方このダイレクト自動車保険はリスク細分化保険であり、リスクの少ない人の保険料を大きく下げて、安いことを最大の売りとしています。年齢が高めで、せいぜい日曜日に買い物に行く程度しか車に乗らないサンデードライバーはリスクが少ないので保険料が安いのです。


そういう人たちを安くする一方、反対側の人達、たとえば20歳で免許取り立ての人や、仕事にも車を使う人は保険料が高くなります。場合によっては後者の保険料は前者の数倍にもなります。
となれば、保険料の高い人はこの会社の保険には現実には加入しないことになるでしょう。他の保険会社で契約することでしょう。であれば、この会社はリスクのない人たちだけを集めて、リスクを排除しているのですから、一体これが保険といえるのでしょうか。

このことを保険会社に質問すればおそらく「リスクの高い人には相分の負担を求め、リスクの少ない人の負担を少なくする、これは保険システムの公平性を保つ原則です。」とかなんとか答えるでしょう。
また保険評論家やFPの先生方も選択肢が増えたといって概ね歓迎のようです。


死亡する確立の低い若い人に高額の死亡保障を掛けさせて、高齢になると保障が極端に減るような保険ばかりを売っている日本の大手の生命保険会社の姿勢とこれは実によく似ているということもあり、私はとても気に入りません。みなさんどう思いますか?

事故のない人ばかり集めていると、支払いも少なく、経費もかからず、さぞ儲かることでしょうが、事故処理のノウハウがなくても良いとも言えそうですね。それに一度事故ったらもう付き合ってくれないのではないかと思ってしまいます。

安い安いといって喜んで継続していたお父さんが息子が免許を取ったので年齢制限を30歳以上から制限無しにしたら保険料が数倍に跳ね上がった。そうしたら止めざるを得ないでしょう。そしてリスク細分化でない普通の保険会社のところに帰ってくるのです。

みなさんどうお考えですか。自分さえ良ければ良いという人には私は保険に入ってほしくないという非論理的な気持ちにもなってしまいます。そして安いのにはそれなりの理由が必ずあるということを決して忘れないでほしいと思います。




対物賠償も無制限に

自動車事故で他人を死なせてしまった時に保障しなければいけない賠償額は2億円、3億円という事例も珍しい事ではなくなっており、最近では対人賠償保険の保障額は9割が無制限となっているようです。対人無制限は今や常識です。では対物賠償の保障額はというと、500万円〜2000万円の付保が多いようです。

対物の物とは単に「物」とは限りません。たとえば踏み切り事故を起こして電車を長時間止めてしまったり、高級商品を破損したりも考えられるからです。 パチンコ店に車で突っ込んでしまい、機械設備の破損だけでなく営業上の損失も発生すれば逸失利益も対象になります。
高級呉服の輸送車にぶつけて2億6千万賠償請求が認められた判例もあります。

滅多にないことかもしれませんが、なったときは最悪の事態です。対物賠償を無制限にするのと、2千万円とで保険料がどのくらい違うかというと、年齢や等級条件によって違いますが、たとえば8万円と8万5千円という程度の違いです。月額に直せば4百円くらいの追加負担で無制限の保障が得られるのなら、できるだけ対人・対物ともに無制限にすべきであると考えます。

このあたりの保障内容について、あまり深く考えずに契約している例が非常に多く見られます。
保険証券のチェックをお勧めします。



保険金額の決め方

損害保険の場合に保険金額をいくらにするかという問題は生命保険とは違う意味で重要なことです。生保の場合は2千万円の保険に入っていた人が死亡すれば不正等がない限り、2千万円が支払われます。ところが損保の場合、例えば住宅に2000万の火災保険を掛けていて、家が火事で全て燃えてしまっても保険金が満額出ないことがあります。半損とか一部損という場合だけでなく全損でも全額受け取れない場合があるのです。

事故がおきたときには損害額を査定しますがその際にこの住宅の価値が1500万円しかないと判定されれば、いくら2000万円の保険だといっても保険金は1500万円しか出ません。ということはこの差についての保険料は無駄であったということになります。

また逆に実際の価値に対して低い価額で保険を掛けていた場合も不都合が生じます。住宅の価値が実は1500万円なのに1000万円の保険を掛けていたとします。火災によって一部を立て直して500万円掛かった(つまり損害額500万円)としても、保険金は500万円受け取れず約410万円となります。掛けていた保険金額が実際の価値にたいして少ない場合はその割合に応じて保険金額が減額されるのです。

住宅の価額を正確に把握できるとは限らないので、2割くらいの誤差を認めようということで、実際の価値の80%以上の契約または120%以下になっていれば、損害額は全額支払うということになっています。

火災保険や家財保険、また自動車の車両保険等の保険金額は実際の価値の8割以下で契約してしまう事のないように慎重に決定すべきなのです。

保険料を安くして契約しやすくするために、あえて保険金額を低く設定して見積もりをする保険代理店が存在するという話もあります。気をつけましょう。



地震保険の悩まし

地震保険を掛けていますか。日本は世界で地震国として知られていますが地震保険の加入率はとても低いのが現状です。火災保険の加入率は約60%ほどですが、地震保険は10%に満たないようです。

住宅の火災保険は、火災、水害、ヒョウ、爆発等による住宅の損害を補償しますが、火災の原因が地震であった場合には保険金は支払われません。地震費用保険金というのがありますが、これもたとえ家屋が全焼しても保険金額の5%に過ぎません。地震で家が壊れても保険金が出ないというだけではなく、地震が原因で火災が起きたときにも保険金が出ないのです。このことに気づいていない人が多いようです。

地震のときの災害を補填するためには、地震保険を掛けるしかないのです。では地震保険に加入しようとするとここでまた悩んでしまうのです。地震保険は単独で掛けることはできず、火災保険にセットすることになりますが、例えば1000万円の火災保険に付加できる地震保険の保険金は500万円までです。それでいて地震保険をつけた場合の保険料は8割ほど高くなります。何でそんなに高いのだ、と普通は思ってしまうでしょう。それだけリスクが高いということなのです。

また地震保険は損害保険会社にとっても全く儲かる商品ではないようです。地震災害時の国民生活の救済を国と保険会社が共同で行おうという正確が強く、利益を得られないような計算で成り立っているのです。ですから地震保険は誰にとっても非常に悩ましい保険なのです。

しかし地震が起きると、建物が完全に倒れてしまうとか、燃えてしまうという被害よりも実際には住宅が傾いてしまったり、ひびが入って補修が必要になるケースが多く見られます。また家は壊れなくても家具や調度品、電化製品等所謂「家財」の被害の可能性が高いのが現実でしょう。
本当に困った時のために備えるのが保険であれば、やはり住宅と家財両方ともに地震保険は掛けておきたいですね。





自動車保険の特約条

生命保険で特約というと、入院特約とか災害死亡特約、最近ではリビングニーズ特約、特定疾病特約など色々ありますが、自動車保険の特約条項というものにどんなものがあるか思い出せる人は少ないと思います。生保の特約は殆どが保障を拡大するものですが、自動車保険では反対に保障範囲を限定して保険料を安くするための特約が沢山あります。

運転者の年齢が30歳未満での事故は担保しないという特約や、被保険者を家族に限定する特約などはご存知かと思います。また年齢を絞っておいた上で子供が運転する場合だけはその例外とする特約もあります。事故を起こした時、保険金を受け取ると割引等級が3等級下がる場合がありますが、事故の場合にも等級が下がらないことにするという等級プロテクト特約などはあまりご存じないことでしょう。

車両保険の対象を相手が確認できる車同士の場合に限る特約、搭乗者の入院保障を半額にする特約等々、きりがないほどです。こうした特約には当たり前ですがメリット、デメリットがあり、人によって場合によって付加すべきであったり、無駄であったりする訳です。これらのことをキチンと把握して自分の考えに合わせた保障内容にすることが重要です。

しつこいようですが、ネット販売の自動車保険でそんなことができる人って一体どのくらい存在するのでしょうか。
色々な特約条項の意味等については別途書いてみたいと思っています。




賠償責任保険

この保険は一般にはあまり馴染みがないかもしれません。聞いたことがある方でも「生産物賠償責任保険」いわゆるPL保険としての認識ではないでしょうか。

たとえば自転車に乗っていて角を曲がったところでおばあさんに激突し、相手が骨折して3ヶ月入院、その後もしばらく通院、治療が続いて治療費、交通費他諸費用をふくめて400万円を負担することになった例。
スキー場で転んだ際にスキー板で子供の頭を強打してしまい後遺症を負わせてしまって2500万円の賠償。
飼っている犬が突然他人に飛び掛り、相手が転んで打ち所が悪くて重傷を負い、3000万円の賠償請求。

事故を起こして他人の身体や財物に損害を与えてしまい高額の賠償金を支払うことになるのは、何も自動車事故に限らないのです。日本人の意識の変化もあり以前に比べて賠償請求をするケースがかなり増加しているようです。子供のやったことだから、悪気は無かったのだから、では許してもらえない時代になっているようです。

さてこのように他人に損害を与えてしまって賠償金の請求をされた場合にその支払を保険金として払ってくれるが「個人賠償責任保険」なのです。最高額 1億円で家族全員を対象とする個人賠償責任保険は年間の保険料が2000円程度で加入できます。

お子様がいらっしゃるご家庭では家族全員のケガを補償する家族傷害保険にこの個人賠償責任保険を特約付加するのも良い方法だと思います。これでも月額2千円くらいです。ケガだけでなく病気も補償対象とする生保の医療保険はご両親が加入して、子供についてはケガだけを補償する傷害保険に賠償責任保険をプラスするやり方もあります。

いずれにしても、非常に安く売る側にとってあまり儲かりそうも無いこの保険は、実は本当に困った時に役立つ保険らしい保険であると思います。

ただし自動車事故についてはこの保険は対象になりません。



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