スティル・クレイジー ―Still Crazy―

 
2000年5月5日(金)
シャンテシネ1

特集:60年代終わりから70年代に解散したグループと
   60年代終わりから70年代に事故やドラックなどで死亡したミュージシャン



3月の初めに予告編をみて、この映画絶対に観たいと思った!!

時代は1977年、舞台は”ウィズベック野外フェスティバル”の会場、午前3時・・・。
ドラックでフラフラになっているギタリストとともに人気グループだった「ストレンジ・フルーツ」が舞台にあがり演奏が始まる、曲は「デンジャラス・シングス」ボーカルのレイが歌いだすと、夜空に稲妻がはしりステージに雷が落ちて演奏は中止。その後「ストレンジ・フルーツ」も解散してしまう・・・。

時は過ぎ20年後、なにやらお気楽な雰囲気のスペインの観光地イビザ島にあらわれたセールスマン(スティーブン・レイ)。ロック・アーティストの肩書きを捨てきれずにいるという。彼を見てお金持ちのぼっちゃん風の男が声をかける「ストレンジ・フルーツのトニーだろう」と・・・。ここから、昔のストレンジ・フルーツのメンバー探しと、夢の再結成、そして20周年記念ウィズベックフェスティバルへの出演までの道という映画がはじまります。

”ウィズベック野外フェスティバル”という名前を聞いて真っ先に思ったのは1969年のウッドストック(プログラムによると、ウッドストックからその名前をとっているのだろうが、ステージ・セットはイギリスのレディング・フェステヴァルのそれと似ていると書かれていた)。このウッドストックは『ディレクターズカット wood stock 愛と平和と音楽の3日間』というDVDを持っていて何度となく観ている。ジャニス・ジョプリンや映画の中でトニーが宝物にしてた歯の持ち主ジミ・ヘンドリックスの姿をみることが出来る。この「wood stock」のDVDには、ちょっと思い出がある。ドミニク・ミラーが参加したスティングの「ソウル・ケージコンサート」このLDを観てドミニクの弾く「Purple Haze」をカッコイイと思っていた。オリジナルを聴きたいと「wood stock」の3日目に演奏されたジミ・ヘンドリックスの「Purple Haze」を聴いた瞬間、その音楽にへなへなとなってしまった(笑)。

はてさて、映画の話にもどるけど、

一度中断されてしまったものの、不完全なかたちで心に残っている夢をもう一度と、集まってきたこのおじさんたち、50歳を目の前にした面々らしいけど、どうもくたびれてるぞ・・・。このおじさんたちが本当に再起できるのか・・・

グラミー賞で9部門受賞したカルロス・サンタナだって1947年生まれだから、とっくに50は過ぎてるし、エリック・クラプトンだって1945年生まれだし、エアロスミスだってもう50歳だ、スティングだってもう少ししたら・・・・でも、みんなまだまだパワフルでカッコイイ、そしてセクシーだ・・・ わたしが応援しているギタリストのドミニク・ミラーだって40歳を過ぎた・・・でもカッコいいぞ・・・

この、夢を捨てきれずにすさんだ生活をしてきたり、あるいは堅実をめざしてぬるま湯のような生活をしてきて、その音楽も錆びつき気味のおじさんたちが、なんとかなるのか・・・

この話のなかで、一番過去の亡霊にとらわれて、やりのこしたことや、ドラッグ中毒で潰れてしまう恋人を見たくないがために逃げ出したことで、心に穴があいたままになっているのはカレン(ジュリエット・オーブリー)ではなかったのかなと・・・。ストレンジ・フルーツ再生のために動き出した彼女の腕のお守りは、かつての恋人ブライアンがピックかわりに使ったコイン。このコインが最後の場面で感動を呼ぶ・・・これは彼女の再生の旅でもあるのかもしれない。もっと感情的になってもいい感じがしたけど、やはり大人の女性の情熱は蒼い炎のごとくかっこいいのか・・・。

つぎに過去の亡霊の取り憑かれているのはボーカルのレイ(ビル・ナイ)だろうか。人気グループ「ストレンジ・フルーツ」にドラックで死んだキースの後がまとして入って、その亡霊を追い払えないままグループは解散。もう一度集まり動き出しても、いつまでたってもよそ者感が抜けない。キースの亡霊を追い払えば追い払うほど、グループから浮いていく。鏡の前で気合いをいれて奮起する。でも気合いが裏目々にでるタイプの人はいるものだ。でも、まあ、このおじさんは、かわいい。

キーボートのトニー(スティーブン・レイ)はどうやら、カレンに昔から恋ごごろをだいている様子。いい人だけど、いい人すぎてどうしても女性に一歩縁のない人の典型かな。どうして、こうもいい人ぶるかな(ぶるというよりは、自然にそうなってしまうのだろうけど。時には、自分をぶつけることも必要だよ、おじさん・・・ストレートな感情はカッコいいものだよ・・・)。カレンといい感じのムードになった時、彼女の口から「ブライアン・・」なんて言われたら、もう全身に哀愁漂って・・・でも、世の中、こういう人がいるから、荒んだ世の中でも救われる・・・。

決してお友達になりたいタイプのひとじゃないけど、スウェーデン人の元グルーピーという妻アストリッド(ヘレナ・ベルクスローム)は最初イヤな女だなぁと思ったけど、これがなかなか性格がかわいひと・・・これはこれで、うらやましい生き方だ。

ドラムのビーノ(ティモシー・スポール)は、わたしとしてはちょっと苦手なタイプだけど万年ワンパク坊主っぽくて、大口をたたきデリカシーのかけらもないように見えて、実は植物園に訪ねて来た税務監査官らしい女性から逃げ続ける様や、グループのムードを盛り上げたり、なごませたりと以外と、外見とは裏腹にナイーブな人かもしれない。

ベースのレス(ジミー・ネイル)この人は頑固だ。でも素敵だから許そう。妻や子どものために、堅実な屋根ふき職人をして、いい夫、いい父親をしていたけど、いったん自分の眠っていた夢が首をもたげると、そんなものが木っ端みじんになってしまったストレートさもいい。この人も過去の亡霊に悩まされて、そのうっぷんをレイにぶつけてくすぶり、そしてまた悩んでいる(実はわたしはこのレス役のジミー・ネイルの歌う歌のすっかりフアンになってしまったのです)移動バスの中でアコースティックギターを弾きながら歌う「炎は消えず」、CDに録音された「過ぎし日を想えば」を聴けば、レスではないジミー・ネイルのCDをほしくなっても不思議はない。この人の感情の表現の不器用さや、融通の利かない頑固さは、身近にいたら嫌かもしれないけど、でも寡黙さが素敵だから許そう。

行方不明のブライアンにかわってギターを弾く若いギタリストのルーク(ハンス・マシソン)、このルークのギターやものおじしないストレートさをみると、70年代のロッカーとの違いを感じるような気がする・・映像で観ただけだけどね。おじさんたちも、さぞ刺激をうけたことだろう。

このルークに恋心をいだくカレンの娘のクレア(レイチェル・スターリング)、ルークにイライラしての言葉にしてもクレアがカレンに向かって言った「母親もきちんとしてほしいものだわ」ということばは、娘としてのわたしにはよくわかる。八つ当たりに違いはない、でもカレンはどうか、たしかにカッコいいかもしれない、でもまだ大人になりきれていない娘としてはどうか、わがままじゃないよ、カレンは自分の夢の穴をつくろうのに走り、まだその手を必要としている娘に対して、母親業をすこしサボってはいませんか。やさしくするだけが母親とはいいません、娘にとって必要なのは、手を差し伸べなくても言葉をかけなくても、自分のことを考えていてくれるという信頼感がなによりの安心になるのだから。と娘としてもわがままを言ってみる・・。

ローディのヒューイ(ビリー・コノリー)が手伝いにかけつけて準備がととのう。
この、ちょっとへんな、くたびれたおじさんたち、楽器をもって、アンプに電気が通ると、あれれ、少し感じがかわるじゃない・・・。音楽はまだまだ、錆びついたままだけど、ちょっと活き活きしてきたよ。

多分、初期のストレンジ・フルーツを結成したころも、こんな風に田舎町の小さなホールでのギグを繰り返して人気グループになっていったんだろう。でもレスはストレンジ・フルーツが人気グループになってから加入したので、どうもその辺がつかみ切れないみたいだ。

演奏を繰り返すうちにだんだんカッコついてきたではありませんか。約一名カッコのつき方の方向が違っている人がいるけど・・・。

メンバーとの旅をつづけているうちに、いつのまにかこのストレンジ・フルーツのファンになってきている自分を発見。
夢をもって、その夢を叶えようとはしるおじさんたちは
たとえ、あちこちお肉がついてきていても、皮膚がたるんできてても、おなかが出ていても、頭が少し寒そうになってきていても、カッコイイ!!
いくら若くても、外見がカッコよくても、中身のないヤツや夢のないヤツはカッコ悪い!!
人生下り坂にさしかかりながら、なりふりかまわず走ろうとする、おじさんたちは、なかなかかっこいいもんだ。
まあ、みんながみんなそうなったら、それも困るのかもしれないけど、でも自分のまわりにいる人たちもみんな、いろんな夢をもって生きているんだろうな、その表現方法はちがってもね。と、あたりまえのことに気づかされた。

この少しカッコ良くみえてきた、おじさんたちなんだけど、ブライアン(ブルース・ロビンソン)が出てきたとたんに、ブライアンの繊細さもカッコ良さも伝染しちゃって、めちゃカッコ良くなってしまうのです。このブルース・ロビンソン、キリング・フィールドの脚本家ということでも思い入れが強いんだけど、そうじゃなくても実にカッコイイ、彼のすることひとつひとつに涙がじわんときてもおかしくない。哀愁を感じるうしろ姿がいいなぁ・・・と。

と、見た目かっこ悪くても、このままでは終わらないぞと葛藤を抱えながら頑張る、愛すべき彼らの心の旅を観ていると彼らのファンになってしまう映画です。

最後の20周年記念ウィズベックフェスティバルのシーンは何十回でも見たいシーンです。

監督…ブライアン・ギブソン
脚本…ディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ
音楽…クライブ・ランガー
CAST
トニー……スティーブン・レイ
ヒューイー……ビリー・コノリー
レス……ジミー・ネイル
ビーノ……ティモシー・スポール
レイ……ビル・ナイ
カレン……ジュリエット・オーブリー
アストリッド……ヘレナ・ベルクストローム
ブライアン……ブルース・ロビンソン
ルーク……ハンス・マシソン
クレア……レイチェル・スターリング

1998年コロンビア映画/ソニー・ピクチャーズエンタテイメント配給

サウンドトラック
炎は消えず(The Flame Still Bums)……ストレンジ・フルーツ・フィーチャリング・ジミー・ネイル
世界の果てでも(All Over The World)……ストレンジ・フルーツ
過ぎし日を想えば(What Might Have Been)……ジミー・ネイル
ブライアンのテーマ(Briann's Thema)……スティーブ・ドネリー
汚れの街(Dirty Town)……ストレンジ・フルーツ
スティーリン(Stealin)……ビリー・コノリー
ブラック・ムーン(Black Moon)……ストレンジ・フルーツ
今日に生きよう(Live For Today)……ハンス・マテソン
バード・オン・ア・ワイヤー(Bird On A Wire)……ストレンジ・フルーツ・フィーチャリング・ジミー・ネイル
イビザのテーマ(Ibiza Theme)
自由の叫び(Scream Freedom)……ストレンジ・フルーツ
女は皆それが好き(A Woman Like That)……バーニー・マースデン
デンジャラス・シングル(Dangerous Things)……ストレンジ・フルーツ
ブライアンのテーマ(リプライズ)(Briann's Thema)……スティーブ・ドネリー
発売元:株式会社イーストウエスト・ジャパン
販売元:株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
定価¥2000

写真はプログラムより
発行権者/(株)ソニー・ピクチャーズエンタテイメント
定価¥500

2000.5.9
ADU

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