遠い空の向こうに
―OCTOBER SKY―
『遠い空の向こうに』に関連して
アメリカと旧ソ連の宇宙開発の歴史を簡単にまとめてあります。
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2000年3月1日 シャンテシネ
1957年10月4日、ソ連の打上げた直径わずか56cmの人工衛星スプートニクは銀色に輝き夜空を横切り世界中の人々に宇宙の夢をみさせました。
いったいどれほどの少年たちが宇宙とロケットに将来の夢をみたのでしょうか。
わたしたちは、自分にとって何か新しいものを知ったとき、触れたときそれを自分の夢として膨らませていくことがとても多いと思います。それを将来の自分の職業にあてはめて進もうとすることも多いと思います。でも、その大半は夢のままで終わったり、別の興味に惹かれてちがう夢を追い始めたりします。
人が夢をかなえていく時には自分の努力はもちろんですが、社会の動きや夢に進んでいく自分を理解してくれる人々の存在、手をかしてくてる人々の存在があると思います。
この作品の原作者であり夢をかなえた少年、ホーマー・ヒッカム・ジュニアにとってもそうだったと思います。奨学金をうけれれば大学に進める。彼の住むウエスト・ヴァージニア州の炭坑町コールウッド、大学に行くひとにぎりの人を除いては、みんなが炭坑夫となり会社の提供する家に住み、その町で生きていく。それが日常の世界。
でも夜空を横切ったスプートニクは彼の過ごしてきた日常を夜空の彼方に連れていき、かわりにロケットを飛ばすという夢を贈り物として残してくれたのでしょう。
ソ連に遅れをとったアメリカ政府の宇宙開発への推進支援、炭坑町ということで、燃料や部品などの調達に比較的恵まれていたこと、溶接などの専門的な作業を手伝ってくれた人の存在、彼の夢に自分の夢も重ねて力をかしてくれたライリー先生、そして夢の実現のため一緒にすすんだ、クエンティン、オデル、ロイというかけがえのない友人。自分の職業に誇りをもち自信をもって生きている父の姿。このすべてが彼を困難な中でも夢に向かって進んでいく力となったのだと思います。
尊敬しながらも、自分の夢を夢のまま終わらせ、炭坑で働くことを強く言う父、ホーマーが自分のかわりに炭坑で働いてくれた時のことがとてもうれしかったのだと思います。
でも、ホーマーはロケットを飛ばす夢を捨てきることはできなかった。石炭を掘るために地下へと向かうエレベータの中から見える空を見ながら、地下へ向かうその距離がそのまま、空を夢見る距離を縮める。炭坑で働くことを薦める父と空を夢見るホーマーの、言い争いの場面、ふとジェフリー・ラッシュ主演の『シャイン』での父の反対をおしきってロンドンに向かう時の言い争いを思い出しましたが、ホーマーの父の怒りの底には、ホーマーのことを認め、夢を理解していることを感じることが出来ました。ただ、ホーマーの父もかつて何かの夢をみたであろう事実と、夢の大切さと現実の重さを知っていての反対なのだろうと思いました。
最後は困難をのりこえて足場のある夢への一歩を歩き出したことと、それを尊敬する父に自分を認めてもらえたホーマーの感動が伝わってきました。
わたしもいままで欲張りでたくさんの夢をみました。一番だいじな夢は、残念ながらかなえることができなくなりましたが、この作品をみて、もしかしたらまだこれから夢に出会えるかもしれない希望と、自分を取り囲む人々のまなざしに気がつくことを教えられました。
だれもがもっている夢という宝物、今は忘れてしまったけれどかつて見た夢、死ぬまで出会える可能性がある夢、夢が夢で終わらないためには、まず一歩を進み出さなければいけないということを教えてもらいました。
この作品の感動は、だれもが信じたい、そうなってほしい、そうであってほしい、そうありたいという心の奥底の何かを充たしてくれるところから出てくる自然体の感情なのではないかなと思いました。
夢をもっている人、かつて夢をみたことのある人すべてにみてもらいたい作品だなって思います。
素敵な感動をありがとうございました。
STAFF
監督…ジョー・ジョンストン
原作…ホーマー・H・ヒッカム・Jr
脚本…ルイス・コリック
音楽…マーク・アイシャム
CAST
ホーマー・ヒッカム…ジェイク・ギレンホール
ジョン・ヒッカム…クリス・クーハー
クエンティン…クリス・オーウェン
ミス・ライリー…ローラ・ダーン
ロイ・リー…ウイリアム・リー・スコット
オデル…チャド・リンドバーグ
エルシー・ヒッカム…ナタリー・キャナディ
更新日 2000.3.6 ADU
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