ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
   ―KNOCKIN'ON HEAVEN'S DOOR―

10月30日(土)新宿シネマカリテ3
映画祭も初日、渋谷はさぞや熱くなっていることでしょうと、思いながら念願の『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を観に新宿にいきました。この、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は全然、気にかけていなかった作品なのですが、インターネットで予告編を観て、胸にどきんと響いてしまった映画です。またもや予告編のマジックですね。いろいろと、観たい作品が、入れ替わり立ち替わり、心にうかびましたが、やっぱり一番、マジック度の高かった『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を観に行くことに決めました。なんだか今年はUK映画につづいてドイツ映画も熱いですね。

早めに映画館についたのですが、かなりの混雑。となりの『リトル・ヴォイス』も満員の様子です。『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』も結局、満員で座布団をひいて観ている人もいました。

この作品のパンフには、いろいろな楽しいエピソードが書かれています。例えば最初のダンスシーンの演出家として現われるのは、主演のティル・シュヴァイガーの出世作『アクセルの災難』のS・ヴォルトマン監督、タクシーの運転をしていたのがトーマス・ヤーン監督、最後のエンドクレジットの前にかかれた”ベルントに捧ぐ”のベルント・アイヒンガー(プロデューサー)の監督作品『Der groβe Bagarozy』にはティル・シュヴァイガーが主演すること、そのほかたくさんのカメオ的出演者がいることなどです。

のっけから、きれのいい、予告編でもおなじみのU-STAY WITH MELINAの「I Will Survlve」がかかり床を掃く帚と足元だけを映したカメラワークに続いてダンスシーン、あっというまに場面が変わり、今のシーンは何だったの思っているうちに、電車の中で主役の二人が顔合わせ。
えっ病院で同じ部屋になるんじゃないの?とおもいきや、この場面は、禁煙のマークのある車両内で、たばこを平気で吸っているアウトローなマーチン(ティル・シュヴァイガー)と、まじめでおとなしそうなルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)を印象づけている。 この構図が結局は、共犯者なのに、誘拐犯と人質という関係にみせかける要素になっている。
間抜けなギャングにしても、この二人はどうも、頭が堅くて、何かへまをしつづけるよという印象をピノキオとターミネーターのギャグで伝えている。

この作品、脳腫瘍で余命数日と死の宣告を受けたマーチンとガン体質の家系に生まれて本人も末期の骨肉腫におかされたルディが病院で同室になり、やりきれない気持ちから、偶然、見付けたテキーラをしこたま飲んで、天国と海の話をしながら、海を見たことがないというルディのために海を見に行くことをきめて、偶然その病院にきていた、ギャングの車を盗んで逃走する。途中、着るものやお金がないため銀行強盗をする。そのため、ギャングと警察から追いかけられるはめになる。追い詰められて、マーチンがルディを人質にしているようにみせかける。そして、それが真実として伝わる。人質の心理などという講義まで現われてる。

フランス語の辞書?そうか海に出るためにはドイツじゃないんだ、フランスを突き抜けていくんだ・・・

(これはわたしの勘違いということが、あとからメールなどを通じて指摘していただいたので、DVDやプログラムで 確認して、向かった海はオランダの海、撮影も北海沿岸ということがわかりました。でも、映画館で観たときは、ベルギーをぬけて フランスに入ってかな?と思ったのでした。WW2じゃないのにね.......笑。指摘して下さった方々、ありがとうございました)


マーチンの薬をもらうために、ルディがみせたはじめての・・・自分の意思の表現。いい人のルディがマーチンとかかわりあっていくうちに、本当にいいヤツになっていく。(やっていることは悪いことなのだけど)。 ワルを気取っているけど、だれよりもやさしくて、自分にふりかかった運命をを怖がり、そしてルディよりも海を見たがっている様子が伝わってくるマーチン。このマーチンを演じているティル・シュヴァイガーって、すごいひとだな、と感じました。かっこいいですね。

そして、まあ、よくもあそこまで、はずして撃てるものだというくらい、弾が人間にあたらない。結局、あれだけの派手な銃撃戦があっても、死人の姿はどこにあるの?
病気で死の宣告を受けた二人は別として、銃撃戦があったり、切れやすいあぶないやつがいるわりにはだれも死なない。まあ、これでちゃらではないけど、強盗したお金も返して、もう強盗犯ではない(?)善良な人々のお金は返して、悪いやつのお金を使ってしまう。

そして、たどりついたのが、「I Will Survlve」を背景に冒頭に出てきた、なにかいかがわしげな店。なるほどね。

そしてラスト、それまで、まるっきり姿をあらわさなかった、この作品の、テーマ”海”が姿を表す。最後に流れる「KNOCKIN'ON HEAVEN'S DOOR」(天国への扉)この曲はボブ・ディランのオリジナルやエリック・クラプトンのカバーによるもので知っていたのですが、ラストシーンにかぶさったSELIGのうたが、まるで自分も、彼らと一緒に、ようやく、”海”にたどりついたという気持ちにさせてくれるものでした。いつのまにか、この二人とともに、警察やギャングたちの手から逃げ、”海”をめざす旅に出掛けていたことにきづきました。いいことといったら、海にたどりつけたことだけなのだけど、でもエンドクレジットが終わった後、「いい、映画だったね」と言える映画でした。いろんな人に観てもらいたいなと思いました。

天国じゃ、みんなが
   海の話をするんだぜ

   

監督―トーマス・ヤーン(Thomas Jahn)
脚本―トーマス・ヤーン(Thomas Jahn)、ティル・シュヴァイガー(Til Schweiger)
製作―トム・ツィックラー(Tom Zickler)、アンドレ・ヘンニッケ(Andre Hennicke)、ティル・シュヴァイガー(Til Schweiger)
撮影―ゲーロ・シュテフェン(Gero Steffen)
編集―アレクサンダー・ベルナー(Alexander Berner)
美術―モニカ・バウアート(Monika Bauert)
音楽―ゼーリッヒ(SELIG)
衣装―ヘイケ・ヴェーバー(Heike Weber)

出演
マーティン・ブレスト ― ティル・シュヴァイガー(Til Schweiger)
ルディ・ブリッツァー ― ヤン・ヨーゼフ・リーファース(Jan Josef Liefers)
ヘンク(ベルギー人) ― ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ(Thierry Van Werveke)
アブトゥル(アラビア人) ― モーリッツ・ブライプトロイ(Moritz Bleibtreu)
フランキー(ボーイ) ― フーブ・シュタベール(Huub Stapel)
シュナイダー ― レオナルド・ランジンク(Leonard Lansink)
ケラー ― ラルフ・ヘアフォート(Ralph Herforth)
マーチンの母 ―コーネリア・フローベス(Cornelia Froboess)
カーチス ― ルトガー・ハウアー(Rutger Hauer)



更新日 1999年10月31日 ADU
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