夏山単独登山バトルロイヤル

(名古屋の山の登り方Vol.6より 加筆修正)

もう一息なのはわかってるけど

8合目から先を攻めあぐねているのをよそに、次々と登頂を果たす者が現れた。バラカルピス、グロセージャ、ミルク、ピーチ、マンゴースペシャル(辛口)、グランベリーミルク、宇治金時…。みな、次々とガラスの器を手に取り、シロップを飲み干してゆく。

やった、見事登頂したぞ! やった、見事登頂したぞ!

私はといえば、例の溜ん人…ではなくタマリンドに苦戦していた。この酸っぱさといったらどうだ。こんな酸っぱいかき氷は食べたことがないぞ。レモンのかき氷だってもっと甘い。それでも、2人のシェルパの助けを借りながらもなんとか登り続け、最後はその濃縮されたシロップを飲み干したのだ(うわ)。
さて、同じように苦戦している2人はどうだろうかと、様子を見に行った。例のパステルカラー、「洋梨」と「小倉」である。
2人は、ちょうど山小屋を掘り当てたところで、氷をつつきまわしていた。「小倉」は氷がシロップと程よくなじんで、まるで粥(かゆ)のようになっていた。

小倉粥はいかがですか? 小倉粥はいかがですか?

もう一息じゃないか、と思われるだろうが、この「もう一息」が登れないのが、マウンテンのかき氷の侮れないところなのである。3日3食カレーを食べ続け、なおも4日目の朝にカレーを出されたときの心境を想像してほしい。いや、悪名高き「なべスパ」を完食したのに、「なべの湯も飲まないと完食にならない」と言われたときの心境だろうか。とにかく、「もういいじゃないか」という気分になるのである。
結局、この2人は9合目まで登ったところで遭難。登頂は次の機会に持ち越しとなった。

なぜわれわれは山に登るのか

戦い終わり、ふと周りを見渡せば、店内は空席が目立つようになっていた。時刻は午後5時を少し過ぎたところ。することもなく、体も冷え切っていたので、先に店を出ることにした。
駐車場も半分ほど空いており、客が入ってくる気配もなかった。これが夕方6時頃になると、夕食を食べにまた登山客でごった返すのだろう。駐車場は、他府県ナンバーの車でいっぱいになるのだろう。
しかし、われわれを含め、なぜ山(=マウンテン)に登るのだろうか。そこに山があるからなのだろうか。理屈ではないことはわかっているのだが、なぜか来てしまう、不思議な魔力を持っているのがこの「マウンテン」だ。とんでもない料理に叩きのめされ「こんなところもう来るか!」と思っても、やっぱりまた来てしまうのだ。
われわれも、またここへ来るだろう。今回完食できなかった「小倉」と「洋梨」に再挑戦するために、そして、品切れで食べられなかった「カルピスラベンダー」、「ミルクチェリー」、そして「エメラルド」に挑戦するために。
乞うご期待!

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