急行「砂丘」の特徴



■ 因美線の特徴「腕木式信号機」


タブレット閉塞と並んで、因美線のもう一つの特徴として挙げられるのが、この「腕木式信号機」です。

腕木式信号機とは、赤と青、二つの信号灯の横に、腕木と呼ばれる羽子板状の物がくっついいている信号機のことです。
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腕木式信号機

鉄道の信号機には大きく分けて2種類があり、我々がよく見かける、道路の信号機を縦にしたような「色灯色信号機」と、 この「腕木式信号機」があります。
この腕木式信号機は、かつて全国各地で使われたSL時代の遺産であり、鉄道における信号機の代名詞です。

この腕木式信号機はその操作を人手によって行うため、タブレット閉塞と対になって採用され、 タブレットによる閉塞区間の出入口に当たる駅に設置されるのが基本です。
そのタブレット閉塞が全国的に衰退してきたため、腕木式信号機も次第に姿を消していきました。
現在では、腕木式信号機は、タブレット閉塞を採用している数路線にしか残っていませんが、 タブレット閉塞を採用している線区でも、色灯式信号機に切り替えているところがあり、その意味では、 タブレット閉塞よりも貴重であると言えます。

腕木式信号機には4種類あります。
駅構内に設置し、駅への進入の可否を示す場内信号機と、同じく駅構内に設置し、駅の通過の可否を示す通過信号機、 同じく駅構内に設置し、駅からの出発の可否を示す出発信号機、それに、場内信号機の手前に設置し、 前方の状況を示す遠方信号機、この4種類です。
このうち、遠方信号機は、全国全てが色灯式に切り替わっており、腕木式の物は残っていません。
従って、現存する腕木式信号機は3種類ということになりますが、このうち、場内信号機と出発信号機は、 外見上は同じ物で、設置する場所が違うだけであり、現存する本数も多いので、この2種類の信号機が、 現在では一般的な腕木式信号機となっています。

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腕木式 場内・出発信号機

この場内・出発信号機は、その腕木が赤い色をしており、腕木が水平であれば「停止」を(信号は「赤」)、 腕木が斜め45度に下がっていれば「進行」を(信号は「青」)を表します。

普通列車であれば、各駅に停車するため、この腕木式 場内・出発信号機の示す「停止」と「進行」だけで十分ですが、 駅を通過する列車がある場合、この「停止」と「進行」だけでは不足です。
通過列車は、駅を通過する場合、減速をし、前方状況等に注意を払わなければなりません。
駅構内で何か異変があるかもしれないし、場内信号が「進行」でも、出発信号が「停止」になっているかもしれないからです。
よって、「進行」「停止」だけではなく、「注意」を示す信号機が必要となり、 通過列車がある駅の手前には、場内信号機を補う意味で、「通過信号機」が設置されています。

この通過信号機は、腕木が黄色をしており、普通、場内信号機の下にくっつけて設置します。

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通過信号機

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通過信号機を組み込んだ
場内信号機

場内・出発信号機と同じく、信号は2灯式で、腕木が水平であれば信号は「赤」、斜め45度に下がっていれば「青」を示します。
通過信号機は、通過列車がある駅における場内信号機の補助的役割を果たすため、場内信号機と組み合わせて使用します。

まず、場内信号機の腕木が水平で、通過信号機の腕木も水平になっている場合、完全な「停止」を示します。

次に、場内信号機の腕木が斜め45度に下がっており、通過信号機の腕木が水平であれば、「注意」を示します。

そして、場内信号機・通過信号機 共に腕木が斜め45度に下がっていれば、完全な「進行」を示します。


以上のように、通過信号機を組み込んだ場内信号機は、3段階の信号表示をすることが出来ます。

腕木式信号機は、その操作を人の手で行います。
腕木式信号機が設置されている駅の一角には、「テコ」と呼ばれる大型の転轍器(リーバー)を収めた小屋があり、 駅員が、そのテコを操作して、信号を変えます。
テコの上げ下げをすると、テコの下から信号機まで延びているワイヤーにその動きをが伝わり、 ワイヤーが信号機を動かす仕組になっています。

テコ(21k)
”テコ”
テコの操作(19k)
テコを動かし、信号を変える

腕木式信号機を設置している線区は次第に減少し、タブレット閉塞と同じく、現在では全国で数路線しかありませんが、 通過信号機は、通過列車ある駅にのみ設置されるため、その数は特に少なかったのです。
因美線以外で、現在腕木式信号機を設置している他の路線では、閉塞区間の出入口の駅を通過する列車が存在せず、 したがって、近年では、通過信号機は、タブレットの”投げ入れ””すくい取り”と同じく、「砂丘」という、 閉塞区間の出入り口の駅を通過する優等列車か運行されていた因美線にしか残っていませんでした。

因美線では、93年9月に、鳥取−智頭間を特殊自動閉塞に切り替えました。それに伴い、その区間の腕木式信号機も、 色灯式信号機に切り替えられました。
これによって、因美線内で腕木式信号機のある区間は、東津山−智頭間となり、通過信号機のある駅は、 タブレット閉塞の出入口に当たる、高野、美作加茂、美作河井、の各駅でした。

しかし、97年11月に「砂丘」が廃止されてしまったため、タブレットによる閉塞区間も、東津山−美作加茂、 美作加茂−智頭、と変更になり、高野、美作河井両駅の交換設備は廃止。
那岐では、信号機が元から色灯式信号機であったため、因美線の腕木式信号機は、実質的には、 美作加茂に残るのみになってしまいました。

通過信号機においても、高野、美作河井、の各駅に設置されていたものは撤去され、美作加茂に残るのみとなっています。

美作加茂駅に残るこの通過信号機は、全国で唯一のものです。


しかし、この通過信号機も、美作加茂を通過する列車がないため、実際には動かされることがないままになっています。

美作加茂駅の腕木式信号機は、99年12月にすべて撤去され、色灯式信号機に切り替えられました。
これによって、因美線から腕木式信号機が姿を消しました。

また、2005年6月には、全国のJR線で最後の腕木式信号機となっていた八戸線陸中八木駅の腕木式信号機が、 色灯色信号機に切り替えられ、JR線から腕木式信号機が姿を消しました。
なお、美作加茂駅に設置されていた通過信号機(場内信号機とセットのもの)2本は、 地元の加茂小学校校庭と、柵原ふれあい鉱山公園に、それぞれ移設保存されています。(2006/10/08 追記)


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