“赤っ恥”体験のありがたさ
 初めての“赤っ恥”
 「“赤っ恥”体験なんて私にはありません」と言いたいところですが、思い起こせばあるわあるわ…。消してしまいたい過去ばかりです。
 航空会社で乗務員として働いていたときのことです。お客さまから「機内アナウンスの発音がいいねえ、君がやっているの?」と聞かれ「はい、私です」と胸を張って答えたものの、何か違和感を感じました。私はそのフライトではファーストクラス担当で、確かに機内放送をしていました。ところが、お客さまが感心したアナウンスは録音されたネイティブスタッフの自動放送でした。それがわかったのは着陸の際に、録音されたみごとな発音のアナウンスが流れたときです。わざわざ後ろを振り返り確かめようとしているそのお客さまと、乗務員用のジャンプシートに座っていた私の目が合い、バツの悪い思いをしました。これが初めての“赤っ恥”体験です。そうですよね、私の発音がそんなに良いわけはありませんでした。

失敗から壁を乗り越える力と勇気を学ぶ
また、航空会社の関連団体で秘書をしていたとき、大切なお客さまから上司へ電話が入りました。「○○はただ今会議中でございます」とハキハキと伝えた私にお客さまは「あっ、そう。私が電話をかけたのに会議で出られないってことですね」と冷ややかな声でおっしゃいました。そうなのです。会議は手前勝手に行うもの。優先順位はお客さまが上であることに気づかされました。それ以降の電話応対では、単純に事実を伝えれば良いというものではないと考え、「席を外しております。○時には戻る予定です。よろしければ私○○がご伝言を承りましょうか」と応えることにしました。そして、伝言の内容によって秘書としてのアクションを起こすことにしました。
 別の電話ではこんなこともありました。「ご用件を承りましょうか?」と申し上げたところ、「大事な用件をあなたに言うつもりはないよ!」と怒られてしまいました。秘書としての本分を離れるつもりはなかったのですが、「伝言」と「用件」は似ていて非なる言葉であることに気づかされました。
 そして、あるときは「上司が戻り次第お電話いたします」と申し上げたのに、メモをとらなかったために忘れ、先方からお電話をいただいて冷や汗をかいたこともあります。正直に上司へ事実を伝えてお詫びをお願いしました。もちろん後で上司に叱られましたが、お客さまを失わずに済んだと知ったときには、ほっとしたものです。本当にドジな秘書で、失敗の連続でした。
 これからも“赤っ恥”をかくことが多いかもしれませんが、細心の注意を払い、ときには勇気をもってお客さまに質問するなど、常に満足を得られる応対を心掛けたいと考えています。“赤っ恥”体験からプラス思考で壁を乗り越える力と勇気を学ぶことができました。

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