反転法による算額問題
【新勝寺額堂に奉納された算額の問題】
半径 R の2個の大円とそれに接する直線との間に小円を逐次入れて行く。最初の小円を第1円とするとき
n番目の半径 r(n) を求めよ。
【反転法による解法】
等しい大円どうしの接点 C で反転すると右の反転図となる。
反転像の小´円の半径を a とすると a = 1/(2R) ・・・@
C から各小´円への接線の長さ tn は
t1^2 = (3a)^2 - a^2
t2^2 = (5a)^2 - a^2
・
・
tn^2 = ((2n+1)a)^2 - a^2
反転基本式で、円径に半径を用いると r = (1/(t^2))a
r1 = a/((3a)^2 - a^2)
r2 = a/((5a)^2 - a^2)
・
・
rn = a/(((2n+1)a)^2 - a^2) = 1/((4n^2 + 4n)a) = 2R/4n(n + 1)
∴ n 番目の小円半径は rn = R/2n(n + 1) である。
【 京都・北野天満宮に奉納された算額の問題・・・算額は現存していません 】
【問題】
下の図 に示すように、対称的に4つの同じ大きさの半径の円の鎖(くさり){r(k) }( k= 0, 1, 2, ・・・, n) が半径 r/2 の2つの円に外接し、
半径 r の大円に内接している。このとき r(n) は、つぎのように表されることを証明せよ。
r(n) = r / { n(n+2√2)+4 }
【図1:算額の図(現代用)】 【図2:簡略図】
点B は最初の大円の中心でその半径はr 、 点C は半径 r/2 の円の中心です。また、点C(k) ( k= 0,1, 2, ・・・, n ) は連続的に外接する円の中心で、
その半径はr(n) です。
【図3:簡略図の反転図】
簡略図の反転図 は、つぎのように構成されている。
(a) TA=2r , TA・TA' = k^2, k=1 から TA' = 1/TA = 1/(2r) である。したがって、【図2】の反転の中心T を通り、
直径TA=2r の大円は、【図3】では、点A' を通り、TA' に垂直な直線 (L) に反転されている。
(b) 同様にして、TB=r , TB' = 1/TB = 1/r であることから、 【図2】の反転の中心T を通る、直径TB=r の円は、
【図3】では、点B' を通り、TB' に垂直な直線 (M)に反転されている。
(c) 上記の@とAで示した2直線 (L) と(M) は平行である。
(d) 【図2】の反転の中心T を通らない線分DBEは、【図3】では、線分TB' を直径とする円の半円部分D'B'E' に
反転されている。
(e) 【図2】の点C(0) を中心とする円は、半径 r の大円に内接し、半径 r/2 の円に外接し、線分DBEに接していること
から、点C(0) を中心とする円の反転は、【図3】では、2直線 (L), (M) に接する、点C'(0) を中心とする円である。
(f) 【図2】の点C(1) を中心とする円は、半径 r の大円に内接し、半径 r/2 の円に外接し、点C(1) を中心とする円に
外接していることから、 点C(1) を中心とする円の反転は、 【図3】では、点C(1) を中心とする円に外接し、平行な
2直線 (L), (M)にも接する、点C’(1) を中心とする円である。
(g) 上記のDとEから、【図3】の点C'(i) ( i = 0, 1, 2, 3, …, n ) を中心とする、連続的に外接する円の半径は
r'(i) ( i = 0, 1, 2, 3, …, n ) はすべて等しい。
すなわち r'(0) = r'(1) = r'(2)= ・・・ = r'(n) が成り立つ。
【図3】において A'C'(0) = 2・r'(0) + r'(0) = 3・r'(0) したがって △A'FC'(0) で
FC'(0)^2 = A'C'(0)'^2−A'F^2 = (3・r'(0))^2−r'(0)^2 = 8・r'(0)^2 よって FC'(0) = 2√2・r'(0)
ここで、 r'(0) = r'(1) = r'(2) = ・・・ = r'(n) であるから
FC'(n) = FC'(0)+C'(0)C'(n) = 2√2・r'(0)+2n・r'(0) = 2(n+√2)・r'(0)
したがって △TFC'(n) で
(TC'(n))^2 = TF^2+(FC'(n))^2 = (3・r'(0))^2+4(n+√2)^2・r'(0)^2 = 9・r'(0)^2+4(n+√2)^2・r'(0)^2
よって △TGC'(n) で TG = L とおくと、 C'(n)G=r’(n)=r(0) から
L^2 = TC'(n)'^2−C'(n)G^2 = {9・r'(0)^2+4(n+√2)^2・r'(0)^2}− r'(0)^2
= 8・r'(0)^2 +4(n+√2)^2・r'(0)^2 = {(n+√2)^2+2}・4r'(0)^2
ここで、 2・r'(0) = A'B' = TB' − TA' = 1/r − 1/2・r = 1/2・r から r'(0) = 1/4・r
ゆえに、前節で示した【定理D】によって
r(n) = r'(n) / L^2 = r'(0) / {(n+√2)^2+2}・4r'(0)^2 = 1/ { (n+√2)^2+2 }・4r'(0) = r / { n(n+2√2)+4 }