「けやきの道(あかしな廃線敷コース)」を歩く(安曇野市明科)(記:2008年5月11日)


 5月4日、 フリーペーパーで紹介されていたのを見て「これは行ってみるしかないでしょ!」と張り切って出掛けた。
ただし、計画的に出掛けたわけではないので色々と問題が・・・。


 まず、「行ってみるしかないでしょ!」という意気込みとは裏腹に、 予定としては「何時か都合がついたら・・・」ぐらいな気持ちだったのよね。 これは自分としたらしょうがないことで、自分自身の予定や家族の予定、 あと、行くんだったら天気のいい日に行ってちゃんと歩きたいと思ったから。

 で、連休中は結構いいお天気が続きそうだったから、4日か5日辺り、都合がついたら出掛けるか・・・と思っていた。 そして・・・4日はメチャクチャいいお天気。実際に発表された気温は知らないけど、 日中の最高気温は30度近くまでいったんじゃないかな。



 明科という場所は私にとっては「遠く」て、心の何処かでは先延ばしにしたい気持ちもちょっとあったみたいで、 ちょっと「明日にしようかな・・・」と思ったりもした。だけど、これで明日、天気が悪かったらもうね、 自分自身がアホみたいでしょ、たぶん、すごく後悔するじゃん。 だから「よしっ!」と準備をして出掛けた。
(しかし!この「準備」というのもなぁ・・・フリーペーパーと携帯とお金だけは忘れないように・・・ってそれぐらい。)



 連休中だからなのか、普段から混む場所なのかわからないけど、途中渋滞に巻き込まれ・・・ 1時間ぐらいで着く(とフリーペーパーには書かれていた)はずが2時間近くかかり・・・ 結局お昼過ぎになってしまった。
 更に場所が全然わからない。
 私としては車で走ってる時に、 道路脇とかに『あかしな廃線敷コース』みたいな矢印付の看板が立っていて、 「あぁ、ここか・・・」って、そういうのをイメージしてたのよね。 けど、そういうのは全然ない。 一応、フリーペーパーの簡単な地図ではコースの片方の端が明科駅みたいな感じだったから、 明科駅に車を停めて駅の案内図を確認してみた。 よくあるでしょ、近くの名所・旧跡を紹介してるのとか。 けど、それを見てもそれらしいことは全然書かれてない。 あれぇ〜おかしいなぁ、この近くじゃないのかなぁ・・・ど〜しよ〜・・・ フリーペーパーに宝さん(おやきの会、珍しいしいいお名前ですよね)個人の携帯らしい番号が載っているから、 そこに電話したほうがいいのかな・・・でも休みの日だし、なんか悪いよなぁ・・・ 交番があるから聞いてみればいいのかなぁ・・・ でも、交番でわからないって言われたら結局宝さんに電話することになるんだよなぁ・・・ と色々考え、 結局宝さんに聞くしかないんだったら直接電話してみるか、と「決心」した。 あ、そうそう、フリーペーパーには「駐車場に関しての問い合わせ」も宝さんへと書いてあったので、 ま、いずれにしても連絡はしなくちゃダメかもっていうのはあったのよね。 ただ、平日ならともかく・・・休み、しかも連休中はどうなのかなぁ・・・と。



 この日はそこまで来る途中でお祭りらしい一行に出会い (後で話しを聞いたら「船」だそうです、そこにほぼ実物大ぐらいな鎧?を着た人型が何体か乗ってました)、 民家にもずらぁ〜っと注連縄と四手 (縄と四手をセットにして注連縄というのだろうか?)がかかっていたから、 たぶん親戚一同集まって・・・みたいなのもあるだろうなとちょっとは考えたんだけど、 とにかくこちらにも時間がある。 だから迷惑も顧みず宝さんの携帯に電話をしてみた。



 宝さんはすぐに出てくれた。 とりあえず、場所がわからないことを伝えると、19号から木戸の信号で403号に入って・・・ ずっと来てもらったら家の前で待っていますとのこと。 ひぇ〜・・・すごく心苦しい・・・。 とりあえず教えてもらったとおりに進んで行ったんだけど、とにかく知らない道だし、宝さんのことも知らないし、 本当に辿り着けるのかなぁ・・・と、正直不安だった。 あ、その時には信号から宝さんのお家までの距離が近い気分でいたんだけど、 なかなかそれらしい家や人に行き着かない。 あれぇ〜この道で間違ってないよね?ってドキドキし始めた頃に「お?ひょっとしてあれは・・・」という人影を発見した。



 車を道路の端に寄せて降りていくと宝さんが待っていてくれて 「車で行くからついてきてください」って。 しかし!この道がビックリするくらい急坂。あたしは自分の軽で行ったので運転しながら「うぇ〜・・・大丈夫かな・・・」 と思った。あ、なんとか上っていきましたが。 その急坂はそれほど長くなく、上りきったところ(と言っていいのかどうかよくわかりませんが・・・) がコースの途中になっていました。



 宝さんのお話では、普通の車なら特に駐車場を用意してあるわけではなく、その道路の端に停めてもらっていいとのこと。 ただ、団体の場合、バスなんかで来られた場合はここには停められないので・・・ということでフリーペーパーに 「駐車場に関しては・・・」の記載があったんだそうです。



 車を停めてから宝さんのお家(東平荘)で色々なお話を聞かせていただきました。 急にお邪魔したにも関わらず時間を割いていただき本当に申し訳なく思いましたが、お話は大変興味深いものでした。 この「あかしな廃線敷コース(けやきの道)」は元々は明科旧国鉄篠ノ井線だったそうです。 (「国鉄」というのが既に懐かしい感じ・・・。) 明治35年から昭和63年まではちゃんと鉄道が走っていて、当然レールもあったのですが、 廃線になったあとレールや電線等、お金になるものは売り払われてしまったそうです。



 この地区は昔380戸(か360戸)もあったのに、今では180戸(か160戸)になってしまった。 家も人も段々減ってきていて、荒れたままの鉄道跡をこのまま放っておいたら自然災害も起きるだろう。 (実際、鉄道が通っている時も土砂崩れ等は起きていたそうです。) そうなって今住んでいる人がもっと他に移って最終的にここに住んでいる人が誰もいなくなっても、 それはそれでしょうがない・・・というのはあまりにも寂しい。 だから、そういう自然災害を防ぐためにもこの鉄道跡を整備して、 出来たらみんなにも楽しんで、というのとはちょっと違う感覚だけれども、活用してもらえれば・・・ と考えて整備を始めたそうです。(平成17年の冬?ぐらいに活動を始めたとのこと。) とにかくお金儲け、集客目的ではないので、最初はなかなか一緒に活動する人も集まらなかったそうですが、 今では100人近い人が会員となって活動しているようです。

 また、宝さんはご自身の持ち家を開放していて(「東平荘」、お話しを伺った場所です)、 山女の塩焼き、灰焼きおやき、手打ちうどん等の体験が出来るとのこと。
(ただし、こちらは多少まとまった人数での予約が必要です。)
このお家の中には囲炉裏やだるまストーブ等、 とにかく「昔」を感じさせるものや、廃線になった鉄道の簡単な歴史やその他資料等もあり見せていただきました。 そうそう、お話を伺っている時にふいにツバメがお部屋の中に入ってきてスィスィ〜と飛んでいて、 ちょっとビックリしました。


 そんな感じで自然がいっぱいのところです。


 最初に宝さんから「ちょっと車では入れないんですよ・・・」 と言われたのですが、もちろん!歩く気満々で来てるのでそんなのヘッチャラです。 キレイに整備されているので車で入ってもよさそうな感じなのですが ガードレールみたいなものが何もないので、万一転落事故なんかが起きると非常に困ったことになるとのこと。 なので今現在は車では入れません。 個人的には車が来ないということは車を気にせずに歩けるということで、 願ったり叶ったりってもんです。もうワクワクします。



 そして、これから歩きに行くか・・・というところで宝さんから 「なにか飲むものとか持ってきてますか?」 と聞かれたのですが・・・ 残念ながら何も持ってきてなかったのです。 私はもっと簡単にわかるところだと思っていたので、 まぁ、歩き出す前にコンビニにでも寄ってペットボトル飲料を買えばいいかなぁ・・・・ なんて安直に考えていたのです ・・・ということを話すと・・・なんと宝さんは 「そりゃいけない。歩くとノドが乾くから何かないと・・・。」 と2Lのペットボトルのお茶を持たせてくれました。本当に重ね重ね申し訳ないです。 「これ持って行くのは重いけど、どんどん飲んだら軽くなるから・・・。」と。



 そんなわけで、有難くペットボトルをいただき歩き始めました。 (ここからは一人です。)


ここから歩き始めました


 まず、歩き始めてすぐに失敗だったなぁ〜と思ったことは「靴」。 普段履いている靴と、ウォーキングの時に履いている靴を持ってきてたんだけど、 ウォーキングの時に履いてる靴はイマイチ足に合っていない気がしていて、 すごく迷った末に普段履いてる靴にした。 結果としてどちらにしても失敗だったような気はするけど、とにかく自分の意識が 「ウォーキング」というところから間違ってる。 フリーペーパーにもちゃんと「トレッキング」と書いてあったのに、 自分の脳内でいつのまにか「ウォーキング」に変換してたみたい。 だからキレイに整備はされているものの一つ一つの石が大きくて、底の薄い(っていうのか?)靴だと もろに足の裏に響く感じ。 私は毎日8キロぐらいをウォーキング+ジョギングしているので、 足腰や体力は特に問題ないと思っていたんだけど、足の裏は別。 あたしの足の裏って全体的にタコとかウオノメとか、そういうなんていうのかな、ケガじゃないんだけど痛い・・・ みたいなことになってるから、ホントこれは失敗だったと思った。 健康な足の人ならまぁ、それほど神経質にならなくても大丈夫かも。

 そうそう、私はいつも音楽を聞きながら歩いているので、いつもどおりのスタイルで歩き始めたんだけど、 周りの鳥のさえずりが止むことがなかったので、結局音楽を聞くことはなかった。 なんていうの?つまらなかったらっていう言い方もおかしいけど、「なんかヒマだなぁ〜」みたいな気持ちになったら 音楽でも聞きながら歩けばいいやって思っていたんだけど、全然そういうのはなく、むしろ邪魔、不要。 周りの景色は素晴らしいし、鳥のさえずりだったり、遠く近くを通る車の音だったり、 平行している今の線路を電車が通過する音だったり、自分の踏みしめていく足音だったり・・・ そういう色々なものがあって一時も手持ち無沙汰なことがなかった。
(現在の鉄道はこのコースとほぼ平行みたいな感じで通っているんだけど ほとんどトンネルで、ちょっとだけ外に出る時電車の音がする。)
 とにかく素晴らしい景色です。


全体的にこんな感じ、素晴らしい


全体的にこんな感じ、素晴らしい


 宝さんのお話では、昔はどの家のまわりもみんな畑だったそうだけど (確かに実家の方も家のまわりは畑だったなぁ・・・) 今ではそんな感じは全然ない。


もうお家の周りは木の方が多いと思う


 ず〜っと並んでいる電柱(っていうのかな?)が昔ここが線路だったことを思わせるけど、 その他にも少しずつ「鉄道だったんだなぁ・・・」というのを感じさせるものがある。 それは道路に埋まってしまったレールとか(昔は踏み切りだった)、 ポツン、ポツンとある見張り台とか・・・。
(見張り台は人が手旗信号?で繋いでいったそうで、だから必ず見張り台から見張り台が見えるんだそうです。)


踏切の跡


踏切の跡、レールが埋まっている




信号?


 そして、地中から顔を出してるメチャクチャ多い電線も・・・。


なんだ?この電線は?


 途中では桜が満開。桜が咲いているからか、お祭りだからかわからないけど提灯も。


桜が満開だぁ〜


 ピンク色の桜もあるけど、ちょっとクリームがかったような緑っぽいような花びらも。


桜が満開だぁ〜


 コースの終わりってものをわかってないので、とりあえず進めなくなるまで歩いて行こう・・・と、 テクテク歩いていくと、途中、たぶん普通の道から車なんかが入ってこないようにだと思うけどチェーンがかかってたりする。 あれ?ここで終わりなのかな・・・と思いつつ電柱を目印に進んでいくと・・・なんだかまだ道は続いているみたい。 そして、もう少し歩いていくと・・・ フリーペーパーにも載っていた封鎖されたトンネルが・・・。


トンネルが見えてきた




なかなかいい感じのトンネル


 隙間からのぞくと・・・結構向こう側が近い。 隙間から涼しい風が吹いてくる。


トンネルの向こう側の光が見える


 トンネルは通れないけど、周り道(山を越えていく感じ)があって トンネルの向こう側に行ける。 この坂道は結構な急坂。ハァハァしてしまった。
途中にも見張り台と石像が・・・。


こんなところに・・・


 西日本では標準らしい白いタンポポも・・・。


白いタンポポ


 そして反対側に。


トンネル「向こう側」から


 更に進む・・・。


これも「鉄道だった」という感じが・・・


 そして・・・ついに、「未整備のため進めません」というようなことが書いてある札のところに辿り着いた。 ここが終点かぁ・・・と思いながら、その札より更に先にあるトンネルの近くまで行ってみた。
(もちろん中は通れないようになってますが。)
ここまでプラプラ歩きながら1時間半ぐらい。
とりあえず、片方の終点に辿り着いたので、では今度は反対側へ・・・と思い引き返してきた。 帰りも特に急ぐわけでもなくプラプラしながらだけど、 行きより画像を撮ったり・・・みたいな時間が少ない分速くて約1時間。





 そして今度は反対側に向かって歩きだした。
少し行くとお祭りの元(っていうのか?)である神社があった。
(お祭りということで景気良く音楽が流れていた。)


お祭りだった神社


 とにかく景色が素晴らしい。 画像ではその素晴らしさがあまり伝わらないかもしれないけど・・・。


素晴らしい眺めだ


来た道を振り返ると・・・


線路はないけど「♪線路は続くよどこまでも〜」


 この真っ直ぐな道 (一度歩いただけなので本当に真っ直ぐかどうか・・・) の突き当たりが反対側のトンネル、終点。


反対側の終点であるトンネル


 画像でもわかる通り、トンネルの上に道路があるのが見えたから上まで行ってみた。 すると・・・


あかしな廃線敷コース入口


 なんだ・・・本当はここが入り口だったのか・・・と思ったものの・・・・ いや、しかし・・・ この辺りの人ならすぐにわかる場所なのかもしれないけど、分かり難い、分かり難過ぎる・・・。 たぶん、自力でこの入り口を探そうとしたら・・・1日探しても辿り着けないかも。 すぐに電話して正解だったなぁ〜と心底そう思った。 とりあえず、ここはちょっとだけ広くなっていて、車1台ぐらいなら停められるかも。 あ、でもひょっとしたら駐車禁止になってるのかな?その辺りはよくわかりません、ごめんなさい。
 それにしても・・・「入口」っていう立て札が無意味に思えるほど分かり難い場所だ・・・。 だって、この道路自体が既に然程広くなくて、この道路に入ってこようとは思わないと思うもの。 ただし、この道路に入るところにはこんな立て札が・・・。


ひょっとしてすごく有名な場所?


 あれ?ということは実はすごくメジャーな道なのかしら?私が無知なだけで。 そして、この道もメチャクチャすごい坂道だった。

 そして、その坂道はこの道路から入って行く。(私もこの道路を上ってきた。) 画像ではよくわからないかもしれないけど、お祭りの注連縄がず〜っと続いている。 集落全部を繋いでいるんじゃないかと思う。


お祭りのために張られた注連縄


 来た道を引き返し・・・一番最初の出発点に戻った。 戻る時はこれで終わりかぁ〜という気持ちがあったので (反対側から引き返してきた時には逆も歩くつもりでいたので多少時間を気にしていた) もう本当に気の向くまま・・・みたいな感じでゆっくり歩いてきた。
往復で1時間ぐらい。





 最初に宝さんから伺っていたとおり、ここはちゃんと時間をとって来たほうが絶対に楽しめるところだと思った。 個人的にお勧めは・・・ 小学校高学年から中学生ぐらいまでの子供がいる家族かな。 もちろんそれ以上でも以下でも楽しめると思いますが、 「疲れた」っていう気持ちよりも純粋に「すごいなぁ」と思える気持ちの 方が大きいだろう年齢がそれぐらいだと思うのね。 それにもっと小さい子だとあそこをず〜っと歩いて行くのはキツイと思うし、 逆におんぶや抱っこって考えるとお父さん、お母さんが大変だと思う。 あ、もちろんそんなに長距離を歩かなければいいだけの話なんだけど。 歩かなくても色々な体験をしているうちに時間はすぐに経ってしまうと思う。 本当にいいところです。

 私ももっと時間があれば説明していただいた「接吻地蔵」とか、 そういうものも見たかったなぁ。 ま、それはまた次の機会ということで。



最後に東平荘からの眺めを撮らせていただきました。


東平荘からの眺め





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