10月3日
〜昼間〜



「…おい」
「んぁ?…あぁ、多串君。どったの?」
「テメェ…呼ぶ気ねェだろう」
「え?何が??」
「俺ぁ土方だつってんだろうが!いつまでそのふざけた名前で俺を呼ぶ気だ!!」
「あははは、もうこれで慣れちゃったから。…え〜と、じゃぁ改めまして、土方君。元気?」
「チっ、…あぁ、元気だよ。丁度良い所でテメェに会った。ちょっと付き合え」
「へ?何何?昼間っから、俺を何処に連れて行こうってんだよ?」
「…そこの喫茶店で良い」
「あらまぁ。土方君が自主的に俺に奢ってくれるなんて珍しい。今日は雨かなぁ?」
「誰が奢るなんつったよ!…あぁ、もう良いや。テメェのタカリ癖は今に始まった事じゃねェ」
「ん??どうしたの?今日は素直じゃない」
「俺はいっつも素直だよ。…2名、喫煙で」



ばったりと道端で会った、銀時と土方。
丁度良い、と土方は近くにあった喫茶店に銀時を誘う。
特に用事もなかった銀時は、素直に土方の後ろに着いて喫茶店へと行く。
案内された席で、銀時は懸命にメニュー表を見る。



「…決まったか?」
「うーん…取り合えずヨーグルトパフェ」
「取り合えずって何だ、取り合えずって」
「良いじゃん良いじゃん。…ぁ、スイマセン〜ン、注文お願いします!」



近くを通ったウェイトレスに注文を告げる。
それを横目で見ながら、土方は煙草を取り出し火を着ける。



「今休憩中?」
「あぁ?」
「制服着てんだから、職務中でしょ?」
「あぁ。…まぁ、休憩中つうか…テメェん家行く途中だったんだ」
「俺ん家ぃ?何?何か用?」
「だからこうして喫茶店なんか入ってんだろうが」
「ぁ、そっか。んで?何?」
「……………………………」



用がある、と言う割りに、土方はなかなか口を開かなかった。
それを黙って静観している銀時。



「お待たせしました。コーヒーです」
「ぁ、これは土方君のね」
「…あぁ」
「…………………………」
「…………………………」



コーヒーが来て。
でもそれに手を付ける様子もなく。
ただ、黙って煙草を吸い続ける土方。



「お待たせしました。ヨーグルトパフェです」
「はぃはぃ。それ俺の」



そうこうしている内にパフェまで運ばれて。
銀時は自分の前にパフェが来ると、「頂きます」と言ってそれを食し始める。



「…………暇、か?」



それを半分食べ終わった頃か。
ようやく土方が言葉を口にした。
銀時は食べていたパフェから目を離し、土方を見る。



「暇?今?」
「…違ェよ。その…今月の、9日と10日…」
「今月?えっと…今日何日だっけ?」
「10月の…3日だ」
「約一週間後か…。ん〜………」



モグモグとパフェの下に入っていたシリアルを口にしながら。
銀時が天井を仰ぎ見る。
そして。



「んっふっふっふっふ…ひ〜じ〜か〜たく〜ん」
「な、何だよ、気味悪ぃな…」
「…誰から聞いたの?」
「あ?」
「恍けない恍けない。…銀さんの誕生日。誰から聞いたのかな?」
「…………………………」



ニヤ〜っと微笑んで聞いた。
そう。
今から一週間後は銀時の誕生日。



「……………………………」
「その種明かしをしてくんなきゃ、銀さんと一緒に誕生日過ごすのはね〜」
「………………この、前」
「んぁ?」
「この前、お前ノーヘルで捕まえたろ。…そん時、免許証で」
「あぁ。…んな事もあったねぇ。……ふ〜ん、そっかそっか。ちゃっかり見てた訳ね〜」
「た、種明かししたんだから良いだろう!で?!9・10日はどうなんだよ!!」



バンっとテーブルを叩いて土方が答えを促す。
照れ隠しだろう。



「…良いよ」
「…ぁ?」
「9・10日ね。別に用事も入ってねェし。…うん。土方君と過ごしたいと思ってたんだ。俺も」



ニッコリと微笑んで答えれば。



「そ、そうか…」
「や〜照れちゃって、土方君可愛い」
「だぁぁ!!からかうな!!」
「ぅふふ〜。…ん?でも待てよ。10日は解るけど、9日って何?」
「…コレ」



スっと出されたのは何かのパンフレット。



「これ…」
「ガキ共も居るから、遠出とか普段出来ねェだろ?誕生日くれェは…その、良いかな、と思って」
「土方君が招待してくれるの?」
「あぁ…2日間くれェ、留守にしててもガキ共大丈夫だろ…?」
「うん、まぁ…それはお妙にお願いすれば…」
「…そうか」



何処となく、ホっとした様子の土方。
銀時はパラパラとパンフレットを眺める。


(…あっ、すっげ、離れとかあんだ。…へ〜ほ〜ふ〜ん)


「…そこ」
「え?何処?」
「パンフレットに載ってる、この離れってトコに…予約取ってある」
「え?!俺の答え聞かずに予約取っちゃったの?!」
「人気あるからな。…まぁ、お前がダメだったら、松平のとっつぁんにでも譲ろうと思ってたし…」
「…ふ〜ん」
「待ち合わせはターミナルで良いな?…迎えに行っても良いが、ガキ共には俺達の事話してねェんだろ?」
「お?お、おぉ…」



驚く銀時を余所目に、土方は決して銀時と目を合わせようとしない。
淡々と説明だけを話す。
暫く銀時も黙って相槌だけ打っていたが。
ペラペラとパンフレットを捲りながら。



「しっかし、温泉か〜…。しっぽりしちゃう訳ね〜誕生日にね〜土方君とね〜」
「あぁ?!嫌なら断れば……」
「だ〜れもヤだとは言ってねェじゃん?」
「…う」



乗り気じゃなさそうな銀時の言葉に、カっと土方が銀時の方を見れば。
今までにない、笑みを浮かべた銀時が…。



「誘うなら相手の目を見て。…だろ?」
「…ぅ」
「誘ってくれて有難うな。…すっげ、嬉しい」



嬉しそうにそう呟いて。
思わずそれに見惚れた土方だったが…。



「ぅ…べ、別にどうって事……」



真っ赤になりながらしどろもどろに、何とかそう呟くのだった。



「…そう言えばさ」
「ぅん?」
「土方君、仕事大丈夫なの?休めるの?」
「有給取る」
「えぇ、マジで?!」
「…テメェの誕生日は1年に1回だろ。…ずっと有給消化もしてなくて近藤さんに休み取れ言われてんだ」
「あぁ。土方君、お休み取らなさそうだもんね」
「うっせェ。…まぁ、その前にデカイ捕り物しなきゃいけねェけどな」
「…ふ〜ん」



そう言うと、土方はガタリと席を立つ。



「んじゃ、俺ぁこれで行くぜ。会計は済ませとくから」
「え?あ、待って。俺も行く」



残りをバクバクっと口に入れ、銀時も席を立つ。



「OK」
「ゆっくり食えば良いのに」
「良いの良いの」



会計をする土方の傍で、銀時はキョロキョロとする。



「何やってんだ?」
「んぁ?あ、終わった」
「あぁ」



そんな銀時を会計を終えた土方が声を掛ける。
振り返った銀時が。


…チュっ…


「○×△□?!!!」
「ぁはは、古典的表現」
「おまっ、公共の場所で何つう!!」
「誰も見てねェって。…捕り物頑張ってな。間違っても怪我すんじゃねェぞ。…旅行、楽しみにしてるから」



早口にそう言うと、銀時はタっと走り出す。
土方は、銀時の唇が先ほど触れた頬を触りながら。



「…あぁ。俺も…楽しみにしてる」



そう、小さく呟くのだった。



……銀時の誕生日まで、後1週間……






2006/10/03UP