10月4日
〜早朝〜



「…よし」



いつもより早く目覚める。
…まだ新八は来てねェな。
俺は左右を確認すると、机の中から赤いペンを取り出す。



「…キュ、キュっとね」



カレンダーの9日と10日に赤丸を付ける。



「………………………」



そして昨日と今日の日付に×印。



「…………………………」



ジっとそれを見つめる。
……後6日。嫌々、後5日か。
………………。



「…ぇへへ…」



後5日…。



「えへへへへへへへへ」
「何ニヤニヤしてるネ、銀ちゃん」
「うおっ?!!かかかかかかか神楽ちゃん?!い、いつの間に!!」



いきなり背後から声を掛けられて、思わず仰け反ってしまう。
見られた?!つうか、聞かれた?!!



「何アルか?その丸印」
「へ?ゃ、ここここここれはね?!!」



や、言おうと思ってましたよ?!
まさか黙って2日間も居なくなる訳には流石の銀さんもいかないと思ってましたから!
でも、でもね?!
こ、心の準備つうか!!



「何です?その丸印」
「ぅおっ?!!し、新八まで!い、いつの間に!!!?」



アタフタとしている内に新八まで現れて。
俺はカレンダーの前で思わず硬直。
だからね、心の準備がね?!



「何かあるんですか?その日?」
「な、何かって…」
「記念日アルか?」
「き、記念日つうか…」
「……………………………」
「……………………………」
「……………………………」



ジーっと2つの視線…。



「銀さん?」
「銀ちゃん?」
「…ぁぅぅ…」



た、耐えらんねェ…。



「そ、そのだな…」
「はい」
「何アルか?」
「そ、その日、は…」
「その日は?」
「何がアルね、銀ちゃん?」
「……………………………」
「……………………………」
「……………………………」



ぅっわ!
んな見なれて、言えるかぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!



「ぃ、依頼!」
「依頼?」
「何の依頼ネ、銀ちゃん」



ごめん!
新八、神楽!!



「依頼があってな、そ、その、その日に俺、出掛けるから!!」
「…俺?って事は銀さんだけ、ですか?」
「ぅ?う、うん…まぁ、その…」
「それなら万事屋皆で行くヨロシよ。万事屋、3人で1つネ」
「そ、そうしてェのは山々なんだけどよ?!依頼人が1人で良いつってよぉ…」
「…へぇ〜」
「な、何だよ、新八君…」
「依頼人…ねぇ…」



キランと新八のメガネが光る。
…そりゃぁよ、嘘なんか吐きたくねェよ。
出来ればちゃんと言いたいけどよ…でも、でもよ?全部が全部理解されるもんじゃねェし、その、何つうか、さ…。



「…まぁ、良いです。頑張って働いて来て下さいね。…じゃぁ神楽ちゃんは家で預かりますから」
「あ、あぁ…?」



クルリと新八が俺から視線を外して、神楽と向き合う。
…と、取り合えず何とか誤魔化せた、かな?
…本当ごめんな、新八、神楽。
いつか本当の事、話せたら良いな…。



「良いよね?神楽ちゃん」
「勿論アル!わ〜い、アネゴに会うの久し振りアル!!」
「そう言えばね、近藤さんがお肉大量に送ってくれたらしいから、それ食べようね」
「お〜ゴリラもたまには役立つネ!へっへ〜銀ちゃん羨ましいアルか?」
「あ、あぁ…そうだな…」



まぁ、旅館で俺も美味いモン食わせてもらえるだろうし…。
…ごめんな、新八、神楽。
でもよ…俺も、初めてだし。…その、土方と2人で旅行とか…さ。
そんな事を思ってたら。



「ぁ、そうそう。お土産忘れないで下さいね。ちゃんと土方さんに頼んで下さいよ」
「おう。んじゃ、土方君に温泉饅頭でも…」
「………………………………」
「………………………………」
「………………あ」



ジーっと見つめる視線で気づいた。
…ぅわ、何言ってんだ、俺!!



「ぁ、ゃ、その…」
「はぁ〜やっぱり土方さんとですか」
「しかも温泉とか言ってるネ。2人で温泉でしっぽりする気アル」
「いやいやいや、あの…!!」
「隠さなくても良いですよ、銀さん」
「ぅへ?」
「銀ちゃんまだ気づかれてないと思ってるアルよ。浅はかネ」
「……はぃ?」
「これでもう万事屋公認ですからねぇ。土方さんと銀さんの仲は」
「ぇ?いやいやいや、おま、何言って……」
「いい加減認めるネ、銀ちゃん」
「…え゛。ちょ、ちょっと待って…」
「筒抜けですよ。…付き合ってるんでしょ?」
「え?あ?や…」
「その日銀さんの誕生日ですしね。…僕等のお祝いは帰って来た時にやりますから。プレゼントはまぁ…水入らずの2日間って事で」
「あ…ぅ…お…」
「2人で乳くり合えば良いネ」



………………ちょっと待て。
何もかも筒抜けだってのか?!
嘘?!嘘嘘嘘ぉぉぉぉぉっっっ!!!!



「いつもはこんな手、絶対引っ掛からないのに。銀さん、よっぽど嬉しいんですね」
「べっ、べつ、別にた、たの、たのし、みとかじゃなっ…!!」
「あ〜ぁ、色ボケはしょうがないアル」
「そこ!色ボケとか言わない!!違うから!新八の腕が上がったんだから!!」
「はぃはぃ。そう言う事にしといてやるネ。存分にヤってくれば良いネ」
「そんな言葉何処で覚えて来るんだ、お前は!!!」



あ〜もう、あ〜もう!!
台無しだよ、本当もう台無しだよ、お前等っ!!!



「ぁれ、銀さん?!」
「あ〜もう、あ〜もう!!銀さんもう寝るから!お休みしちゃうから!!」
「え?だって今起きたばっかりで……」
「ぅっさいぅっさい!寝るったら寝るの!…お休み!!」



スパンと奥の部屋の襖を開いて、俺は自室に入る。
9日まで、何?!俺、この日々の辱めを、日に日に強まりながら過ごさなきゃいけない訳?!



「銀さぁ〜ん。別に照れなくても良いじゃないですか〜?」
「黙らっしゃい、新八!!照れてなんかいませんから!銀さん、オネムなだけですから!!」
「しょうがないお子様ネ」
「お前に言われたかねェよ!!!」



バサリと布団を頭から被って。
忘れよう。今日の事は悪夢と思って忘れよう…。


『銀さん、よっぽど嬉しいんですね』


…うっせェうっせェっ!
楽しみにして何が悪い!!
…ぁ、や、悪いとは一言も言ってねェか。
…………………。



「…だって初めて、だもんよ…」



誕生日を2人で祝うのも。
好きな人と過ごすのも。
だから。



「…早く…9日んなれ…」



そう呟いて。
俺はゆっくりと瞳を閉じた。
…午後には、起き、て…土方君に、い、ぉ…新八と神楽に…バレた…って……。










同日
〜深夜〜



「そっちはどうだ、トシ?」
「あぁ、異常ねェ」
「そうか。…じゃぁ一旦屯所戻るか」
「あぁ…。つうかよ、近藤さん」
「何だ?」
「…んで、本部で待機のアンタが俺と一緒に見回りしてんだよ」
「あぁ、それは…」
「山崎の奴を休めるつっても、他の奴が居んだろうが!何で大将のアンタが出て来んだよ!!」
「だって俺が言い出した事だしよぉ」
「……ったく」
「良いじゃねェか」
「良くねェっての」
「……早く解決しねェとな」
「……そう、だな」
「じゃないと、トシは旅行キャンセルしそうだからなぁ」
「!そ、それは…」
「まぁ後は強制捜査ガサすれば終わりだがな」
「あぁ。…強制捜査ガサまでにテロが起きなければな」
「起きねェさ。その為の見回りだろ?」
「…そうだな」
「……!」
「?近藤さん」
「トシ、今そこの角曲がって行った奴、見たか?」
「え?いや…?」
「…追うぞ」
「あ、あぁ!」
「………………………こっちには居ねェか。トシ、そっちは?」
「いや、こっちにも…この中、入ったのか?」
「俺が行こう」
「否、俺が行く。近藤さんは隊士に連絡してくれ」
「解った。…ん?この箱……」
「!近藤さん、触るな!!」



カチカチカチ……



「…時計の、音?」
「っっ、近藤さん、危……っ!!」



カっ…



『…旅行、楽しみにしてるから』



……銀時の誕生日まで、後6日間……






2006/10/04UP