10月5日
〜早朝〜
鳴り響く音に意識が浮上した。
気のせいかと目を閉じようとしたが、戸の向こうから聞こえる音にそれは気のせいではなかった。
「…電話?」
むっくりと布団から起き上がって時計を見る。
ゲっ、まだ6時前じゃねェか。
「イタ電だったら殺すぞ…」
暫く放っておいたら鳴り止むかと思ったが、まだ鳴り続く電話に仕方なく、部屋を出る。
「えぇい、うるせェ!何だ、俺はノーパン派だ、文句あっか!!」
『………………旦那』
「あぁ?!誰だよ?!!」
微かに聞こえる声に誰だと考えていたら…。
『俺です…山崎です』
「あぁ…ジミーか。何だよ、こんな時間に」
弱々しい声と、自身を名乗る。
こんな時間に真選組の奴が何の用事だと聞こうとしたら…。
『すぐ…すぐ真選組屯所に来て下さい』
「はぁ?何だよ、依頼か?だったら、こうちょっと時間を考え……」
『副長が…副長がっ…!!』
「…ぇ?」
『旦那っ!今すぐ、屯所に来て下さい!土方さんが大変なんですっっ!!!』
その声に、俺は受話器を置いた。
自分が寝巻きだって事も忘れて、俺は家を飛び出た。
歌舞伎町をとにかく走る。
スクーターなんて頭はなかった。
ただ、走って。
走って、1分でも1秒でも速く。
屯所に向かった。
「…っ、はっ、はぁはぁ…!」
屯所に着いた頃には俺は汗だくで。
息も途切れ途切れに俺は屯所の門を潜った。
「旦那っ!!」
「じ、ジミー…はぁ、はぁはぁ…ど、どしたの…?」
「…銀時!」
「はぁはぁ…はっ、ジミーから連絡、も、らって…」
「あ、あぁ…」
ほら、とタオルを渡されたが。
「土方…土方に何かあったのか?!」
それよりも。
電話で言ってた事が気になった。
近藤は俺がそう叫ぶと視線を一旦外して、それから俺を見て、何かを決心するかのように重い口を開いた。
「…昨日、爆弾テロの見回りに行ってな」
「……爆弾、テロ…?」
「トシが…巻き込まれた」
「っ!!」
紡ぎ出された言葉に身体が硬直する。
爆弾、テロ…?
「それで…!!」
「落ち着け!!」
「っっ!!」
「…とりあえず、トシは無事…とは言えんが、生きてる」
「生き、てる…?」
無事だと聞かされ、少し緊張が解れた。
生きてる…生きて、る……。
…良かった。
「…ただ」
「!ただ?!ただ、何だよ!!」
「…頭を強く打ってる」
「ぁ、たま…」
「意識が…戻らない…」
「…意識が…」
それでも…良かった、と思える。
俺は掴んでいた近藤の胸倉から手を離し、ホっと息を吐く。
「…医者は何て言ってんの?」
「脳波に異常は見られないそうだ。意識が戻れば問題ない」
「そ、っか…」
「…すまんな、銀時」
「そうだよ〜。生きてるなら、んなビックリさす電話架けて来んなよな〜、ジミー」
「す、すいません」
「ぃや、そうじゃなくて。…その」
「何?もしかして土方君が怪我した事?んなの仕事してる時点で承知済みじゃねェか。俺に謝るの、お門違い」
「そう、だが…俺も…俺も一緒に居たんだ」
「ゴリさんも?」
「…あぁ」
「お宅に怪我はないの?」
「あぁ…。だから……スマン」
頭を下げる近藤に、俺はその頭をポコンと叩く。
「それこそお門違い。アイツはアイツでテメェの使命果たしたんだろ」
「だが…」
「それこそ、ゴリさんが怪我して自分だけ無傷なんつったら、その方がアイツ気にするだろうし」
「……銀時」
「まぁ、それで死んじまったら身も蓋もねェんだけどさ。生憎、アイツは生きてんだし。起きたら、俺達で思いっきり殴ってやろうぜ。…な?」
コツっと近藤の顎に拳を当てて。
ニっと笑った俺に、近藤も微笑んで。
「…そうだな」
そう頷くのだった。
「さてと。じゃぁ俺帰ろうかな」
「え?!トシに会って行かないのか?!」
「ん〜…でもほら、邪魔だろ?」
つうか、いくら付き合ってるのを、不本意とは言え、ゴリさんとジミー、それと沖田君にはバレてるとして、他の奴等が怪しく思うだろう。
「邪魔だったらわざわざ呼ばんさ!俺が案内する。さ、行こう」
「え?!や、あの…!!」
そう言って腕を取るから。
いやいやいやいや!!人の意図、本当汲もうね、お前等!!
「ちょっ、ちょっ…!ゴリさん、マジで良いって!!」
「良いから。…山崎、後は頼んだぞ!」
「はい、局長」
ズルズルと廊下を引き摺られる。
こ、コイツってこんなに押しの強い奴…あぁ、そうか、だからストーカーなんて…!
「…と」
「?」
とか思ってたら、今度はピタリと止まって。
止まったと思ったら、クルリと振り向かれて、頭下げられた。
な、何だ??
「…スマン!!」
「へ?ぁ、な、何…?」
「今度の休みに、お前、トシと旅行行くはずだったんだろ?それなのに、こんな…!!」
「で?!なななななな何でゴリさんが、んな事知ってっ…!!」
「俺は一応トシの上官だぞ?休み取るなら、俺を通さなきゃな」
「グっ…だ、だから言ったのか、休む理由…あんのヤロっ…目が覚めたらただじゃおかねェぞ!!」
「いやいや、トシは言ってないぞ?」
「ほへ?」
「トシは何も言ってないがな。まぁ、長い付き合いだ。何となく、解ったんだよ」
「な、何となく…?」
「そっ、何となく。俺はそう言う勘は悪くない方なんだ」
「…ぁ、あぁ、そっ…」
だったら、自分の方の勘も少しは働けってんだ。
くっそ〜、新八達にもバレ、んでゴリさんにもバレて?
何か最近こんな事続きじゃねェかぁ?!
「…だから…本当に済まないと思ってる」
「…ゴリさん?」
「その日程知ってて…こんな目に遭わせて」
「………………………」
「謝って済む問題じゃないと思ってる。俺、本当…!!」
「はぁ〜…だ〜から!何度も言ってるでしょうが。承知済みだって」
「だが…!」
「生きてりゃぁいつだって行けんだから。気にすんなって。何度も言わせんなよ」
謝られたって、過去は戻んねェし。
…まぁ楽しみにはしてたけど。
生きてりゃぁこれから先、何度だって行けんだから。
「…有難うな、銀時」
「……はぃはぃ」
「じゃぁ、そうだな。トシが元気になった暁には、特別休暇を取らせよう。それで行って来ると良い」
「…ぃ、や、その…」
「ゆっくりして来い。な!」
「…ぁ、あははは…」
豪快に笑ってみせるけど…ゃ、本当もうお構いなく。
こんな公んなって行けるかよ…。
「ここがトシの部屋だ」
「ってかさ、病院に居んじゃねェのかよ」
「居たんだがな。マスコミに見つかりそうになってな。検査の結果自宅療養でも良いって言われてな。連れて来たんだ」
「…ふ〜ん」
マスコミとか色々…大変なんだな。
スっと襖が開く。
「………土方」
部屋の真ん中に引かれた布団。
その中で眠る…土方。
「後は意識が戻るのを待つだけなんだ」
「そっか…」
スヤスヤと…それはあまりに安らかで。
声を掛ければ、今にも目覚めそう。
…何してんだ、って。
「………………………」
「……俺は一旦隊士達に説明して来る」
「…ん」
ジっと土方を見つめる俺に、ゴリさんは気を利かせてか。
そう言って部屋を後にした。
俺は部屋に突っ立って。
眠る土方を見下ろしてる。
「…何、してんだよ」
ポツリと呟いて。
一歩一歩。土方に近寄る。
スっと土方の枕元に立って、座る。
手を出して、頬に触れる。
あったかい…。
「テメェの大将護って…テメェが怪我して…何してんだよ…」
ちゃんと、テメェも護れよ。
そうじゃなきゃ。
テメェの大将が気落ちすんだろうが。
長い付き合いなんだろ?
それなら、アイツの性格だって解ってんだろうが。
早く起きて…安心させてやれよ。
「…怪我、すんなつったろ。馬鹿」
んで。
俺を抱き締めてくれよ。
……銀時の誕生日まで、後5日……
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2006/10/05UP