晴れた天気の良い日。
銀時は行き先も決めず、ただ歌舞伎町をブラブラと歩いていた。
オヤツにしよう、そう思って出たのは良いが…。
「オヤツにするにも先立つモンがねェと、それも儘ならねェわなぁ…」
ごそりとポケットを漁ってみたが、寂しい財布の中身は変わらずで。
はぁ、と溜息を吐いて、銀時は行き先もなくブラブラと歌舞伎町の町を歩いた。
いつもなら。
そう、いつもなら財布が寂しい時フラリと立ち寄って。
『お〜おぐ〜し〜く〜ん、あっそびましょ〜』
なんてからかいがてらに屯所に行くのに。
そして。
『どぅわれが多串だ!つうか、俺は職務中だっての!!』
なんて怒鳴りながら姿を現すのに。
今はそれすら儘ならない。
会いたい。
けど、会えない。
…会い辛い。
「…はぁ」
溜息を一つ吐いて。
俯いていた顔を、空に向ける。
夕暮れの紅色に染まる空の向こう。
フと、過ぎる顔。
それは…。
「しょうまっこと事情聴取ばあぜよ?わしゃ、ちっくと急ぎの用があるんじゃけど…」
「……………………………」
思わず。
銀時は思わず我が耳を疑った。
それは懐かしい、懐かしいと言うか、今聞こえてはならない声が聞こえて来たから。
「…ぇ…ちょっ…」
それから声が聞こえて来た方向に駆け出した。
空耳であって欲しい。
けど、微かに期待する気持ちもある。
相反する気持ちを抱えて駆け出した先に。
「急ぎの用があんなら、きちんと正規のルートで入ってきやがれ!こっちだって面倒だって……」
「…っ、ちょっと、ごめ……!」
真選組の制服を着た人物とガランガランと下駄の音、そして大きな笑い声。
そんな異様な風景に見物人が集まり、その人を掻き分けて、銀時が目にしたモノ。
「…っ、辰馬?!」
「…ぉ、金時!あっはっは、参ったぜよ。おんしに会いに来たら船酔いで不時着してしもうた」
「は、はぁ??!」
紡ぎ出された言葉に呆気に取られていたら。
「…銀時」
呼ばれた声に、銀時は視線を辰馬から微かにずらした。
その先に居た人物に銀時はますます驚いた。
「…っ、ひじ、かた…」
小さく呟いて。
ドっと汗が出た。
そして心臓が。
血液が。
身体中を駆け巡った。
「…ぁ…」
「……………………………」
「何じゃ、警察に事情聴取ば受けねばならんちや。すぐ終わるみたいじゃから、おんしは家で待っとれ。すぐ行くぜよ」
「ぇ、ぁ、ぅ、ん…」
言われた言葉の意味が解らない。
(こ、この場合…)
銀時は迷っていた。
土方に弁解をするべきか。
それとも。
…辰馬に何か言うべきか。
(…何を?)
弁解と言っても、何を弁解すれば良いのか。
何か、とは何を辰馬に言えば良いのか。
「…おい、行くぞ」
「解ったぜよ。…んじゃ、後でな、金時。良い子で待っちょれよ」
「………………………」
「ぇ、あ…ちょっ…!」
ポンと辰馬は銀時の頭を軽く叩いて。
結局何も言えないまま、土方と辰馬は銀時の傍を離れて行く。
銀時はそれを呆然と見送ったまま。
「…どうしよう…」
引き止めようと、中途半端に振り上げた手をそのままに。
銀時はポツリと呟いて、その場に立ち尽くすのだった。
![]()
2007/03/12UP