夢を見た。
凄く優しくて、ひどく暖かい夢。
心地良い疲れに、自分を包む暖かな空気。
そして優しく髪を撫でる暖かな手。
それは以前に何度か自分を包み込んでくれた温もり、優しさ。
夢見心地でその名を紡いだ。
そう、それはいつものように。
ここが何処だとか、今が何時だとかそんなの全部忘れて。
ただその温もりに優しさに心地好さに流れた。
でもすぐに鼻孔をくすぐる香が自分の思っている人物ではない事が解り、意識が一気に覚醒した。


『…ぁ……俺、今何か……言っ、た…?』


らしくもなく、ひどく動揺してしまった。そして思わず口にしてしまった言葉。
何も言わなければ、若しくは何食わぬ顔をしていれば。
回避出来たかも知れないのに。
なのに。


『…いいや。別に何も言わなかったぜ?何だ?寝呆けてんのか?』


否定された言葉に心から安堵した。
否、呟いてないはずがないのだ。
自分は口にして、音になったと自覚しているのだから。
だが、土方から紡がれた否定の言葉に安堵した。
…それは追求されない事への安堵。


(…良かった…)

「………」


良かった?
ふと自分が思った事に首を傾げる。
何もまずい事はないのだ。
彼との事でまずい事なんか、何一つ。
聞かれてまずい事なんかないはず。
…なのに。


(…何であの時、聞かれるのを怖がった?)


自分の思った事に自問自答。
浮かんでは消える疑問、回答。


(…らしくねェ)


この間から、らしくない自分の心情に銀時は顔をしかめる。
昔の事を懐かしむなんて。思い起こして感傷に浸るなんて。


「…はぁ」


銀時は一つ溜息を吐いて、座っていた椅子から起き上がる。
長らく座っていたせいか、微妙に腰が痛い。
パキパキと腰を動かして時計を見る。
時計は3時を示している。


「…オヤツとしよーかねぇ…」


呟いて玄関へと向かう。
小腹も空いて来た。銀時は大好きな甘味を食べに外へと出掛けた。


















































「何の騒ぎだ、これは」


緊急の呼び出しを受けた土方と沖田。
呼び出されたのは江戸から離れた辺地。
そこには不時着したらしい宇宙船が一環。不時着したばかりらしく船体から煙を吐き出している。


「さっき連絡受けたばかりなんですがね、どうやら不時着したらしくて」
「んなの見りゃぁ解る。管理局とは連絡付けたのか?」
「はぁ、一応…」
「一応?!」
「『そっちで処理してくれ』と言われちまって…」
「あぁ?!んだ、そりゃぁ?」
「どうやら向こうでも大きい入室があるみたいで…」
「んな事知ったこっちゃねェよ!職務怠慢にも程があんぞ!」


「ばかん!!」


「土方さん、コック開きやしたぜぃ?」
「何?!」


突如開いたコックに、沖田が土方に声を掛ける。
咄嗟に腰の刀に手をやり、ゴクリと固唾を飲む。
そのままの状態がどの位続いただろうか。
誰も動かずにコックに目をやる。しかし何も出ては来ない。


「お、おい…誰も出て来ねェぞ?」
「ちょっと土方さん、覗いて来て下せい」
「え゛…お、お前が見て来いよ」
「怖いんですかぃ?」
「ば、馬鹿言え…お、俺が怖い訳あるか」
「じゃぁ行って下させぇ。大丈夫でさぁ、土方さんの亡き後は俺が副長を立派に勤めますから」
「てめぇぇぇ!そりゃ俺に死ねって言ってんのかぁぁぁ!」
「いいから行けって」
「いてっ!総悟、テメェ後で覚えてろよ!」


どかっと背を蹴られ、土方が宇宙船の前まで押し出される。
蹴った本人に文句を叫ぶが、本人は聞いているのかいないのか。
…その時。


「がたん!がたがた」


それまで沈黙していた宇宙船ががたがたと動き出す。


「うぉっ?!な、何だ…?」
「ほらーしっかり見ろー土方ー!」
「ならテメェが見ろぉぉ!何木陰に隠れてやがる!!」


拡張器を持った沖田が木陰から出て来て。


「しょうがねぇなぁ〜土方さんは…
お〜い、そこの不時着したらしい宇宙船の搭乗者〜お前は完全に包囲されてる〜!そこの男は殺して良いから大人しく出て来なさい〜!!」

「よぉぉぉし、総悟てめぇ刀ぁ抜けぇぇぇ!」


「がたんがたがたがた」


「な、何だ…?」


「がたがたがたがた」


「人が…?」


「出て来た…?」


皆が固唾を飲んでコックに目をやると…。



「おぇぇぇぇぇぇ」



「…………」


「てき酷い目に遭おった。船は故障する、船酔いはする。最悪やか!………っておんし。こがなトコで何してるんなが?おんしも船酔いなが??」


傍らで跪いて頭を垂れる土方に不時着宇宙船から出て来た男がそう声を掛けた。


「だ…」
「だ?」
「誰が船酔いだー!!この船テメェの持ちモンか?不時着なんかしやがって、余計な仕事増やすんじゃねェ!!」
「あっはっはっは、ほりゃあ済まんかったの〜。おんし警察か?」
「そうだよ!!〜っ、一応確認はするがお前天人じゃねェな?」
「わしか?わしゃ坂本辰馬ぁ言うモンじゃ!立派な地球人ぜよ!あっはっはっは〜」
「たつ…!」


不時着した船の持ち主が名乗った途端に、土方は身体を強張らせた。


『…辰、馬…』


今朝聞いたばかりの名。
それは銀時が呟いた、その名。







2006/09/01UP