何が正しくて、何が間違っているのかなんて、俺には解らない。
それぞれに正義が存在し、それぞれの価値観がある。
だから、それが100%の悪だとは、俺には断言出来ない。
けど。
だけど、…高杉。
これだけは言えるぜ。
誰かの幸せの為に。
誰かが不幸になる必要なんてない。
誰かの不幸の上に。
誰かの幸せが成り立ってる訳じゃない。
お前が暗闇に堕ちる事で。
誰かが。…俺が。
光に当たるなんて事はないんだ。
その部屋に。
導かれるように金時は足を踏み入れた。
ジャリっと、砂利の音が靴底から聞こえて来る。
辺りは電球1つない暗闇なのに。
…金時は確信していた。
この部屋に。高杉が居る、と。
「…居るんだろ、高杉?……出て来いよ」
部屋に向かって投げ掛けた声は。
空っぽの部屋に反響して、静かに響いた。
きょろりとする様子もなく、金時はただ部屋の奥を見つめる。
その時だった。
ガラスのない窓からさっきまで覆っていた雲が晴れたのか、微かな月明かりが部屋を照らした。
「…待ってたぜ、金時」
黒張りの汚れたソファーに腰掛け、煙草に火を着ける高杉の姿が浮かび上がった。
「止めに来たぜ、高杉」
「止めに?くっくっく…何言ってんだ、金時。祭りだぜ、祭り。お前も好きだろう?…止める必要が何処にある?」
「これは祭りなんかじゃねェ!!俺達が歌舞伎町に戻っても…変わらない、変えられないんだ」
「何を言ってる?『変える』んだろう、お前が」
「高杉!!」
再び静寂と暗闇が辺りを包む。
静まり返った部屋に、キラリと鈍く光るそれを、金時は見過ごさなかった。
「…高杉…」
「なぁ、金時」
「……………………………………」
「…俺が誰と手を組んだと思う?」
「…?」
突然の問い掛け。
意味が解らないと口を噤んだ、金時に。
また、ゆっくりと淡い月の光が届き。
「…高、杉」
「絶対に裏切らない、信頼出来る仲間が必要だった。それも大勢」
「……………………………………」
「手駒は多いに越した事はない。武力・勢力共に備えた。…それを考えた時、俺は思った。そうだ、マフィアと手を組めば良いってな」
「テメっ…!マフィアがお前に何をしたか…!!」
「知ってるさ。知ってるから、利用しようと思った。バレて、殺されたらそれまで。…それで良いと思ったんだ」
「な、で…!!」
「…なぁ、金時」
「…?」
向けられた銃口。
鈍い光を放つ、ポッカリと空いた穴が金時に向けられていた。
「安心しろよ。俺はマフィアを信用なんてしてねェ」
「…………だから、何だってんだよ」
「信用してねェが、手を組む以上、絶対に裏切らない、そう言う確証の持てるマフィアが…俺には必要だった…」
「……そんなの……ある訳ねェだろうが…!」
「だが、1つだけ当てがあった。…そいつは、そいつだけは信じられる。…確証もあった」
「………ちょ、……待て。…お前……何…言ってんだ…?」
「そいつに辿り着くまで大変だったぜ。何たって、チンピラ揃いのチンケなマフィアと違うからな」
「ま…!!」
「最終段階になれば、絶対にお前が頼るだろう人物。どうしてもお前には『ココ』に。…来て欲しかった」
「ま、さか…っっ!!」
「……俺が手を組んだのは」
その先を高杉が口ずさむ前に。
金時は懐にあった銃を手にした。
そして、その銃口を…。
「言うなっっ!!!!」
高杉へと向けた。
銃口を向けられた高杉は表情も変えず、ただ金時を見続けた。
「嘘だ…嘘だ嘘だ、嘘だっっ!!!!」
「嘘じゃねェ。…アイツ等が俺と手を組む条件として出した、交換条件は…」
「止めろっ!!その先を言うな!!」
「 引き金を引け。…金時」
「ぃ…嫌だ!!!!」
「なら何故俺に銃口を向けた」
「黙れ!黙らないと…!!」
「撃てよ。俺はそう言ってんだろ?」
「……っっ……」
目の前が真っ暗になるのを金時は感じていた。
手が震える。
それを知らせるように、かちゃかちゃと銃が音を立てている。
震える。止めようとしても止められない。
信じたくない。信じられない。
その思いだけで胸はいっぱいだった。
「撃てないんなら言ってやろうか?」
「ゃ、めろ…」
「じゃぁ、撃て」
「無理、だ…!!」
「じゃぁ、言ってやるよ」
「止めろ…!止めてくれ、高杉…!!」
「 俺と手を組んだのは『夜兎』、そして交換条件は『攘夷の金時を除く、全てを」
「止めてくれ…!!!」
「 …………殺す事』」
「止めろぉぉぉぉぉぉぉっっっっ…!!!!!」
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2008/05/30UP