「…誓…ぅ」
「……………………………」
「……………………………」
小さく呟かれた言葉に、桂は坂本に視線を向ける。
その、瞬間。
「!!」
ガシっと掴まれた、銃身。
「な、に…?!」
「…う訳ねェだろうが!!」
「は…離さぬかっ!」
「離すか!!」
「撃たれたいのか、貴様っ…!」
「あぁ、撃ちたきゃ撃てば良いだろうが!ここまで来て、スゴスゴ帰るくれェなら死んだ方がマシだっ!!」
「何故そんなに必死になる?!貴様が金時と過ごした時間は…そんなに長くはなかろう?!!」
「時間なんかじゃねェっ!」
「!」
「過ごした時間の長さとか、んなんじゃねェんだよ…!!」
「命を…賭ける事になるんだぞ…?」
「上等だ!今張らねェで、いつ張るってんだ…?!」
「…本気なの、だな?」
「ったりめェだ!アイツを…金時を取り戻す為なら何だってしてやるっ…!!」
吐き出すように叫ぶ土方に。
坂本はやれやれと言う感じでソファーの背もたれに身体を預け。
桂は眉間に皺を寄せる。
そして。
「…おんしの負けぜよ。桂」
「…ふん」
「…?」
「いつまで掴んでいるんだ」
「…ぁ…?」
「離せ。…うつけものが」
紡ぎ出された言葉に、土方は銃身から手を離そうとすると。
「っ、あっ、ちゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
ピュっと銃身から出て来たもの。
「…ふん。本当に俺が銃を突き付けているとで思ったか。水鉄砲だ」
「っっ、中入ってんの、水じゃねェよ、熱湯だ、熱湯!!」
「ふん。本物と偽者の区別も着かぬとは…。貴様本当に警察か」
「あっはっは〜、それだけおんしの演技が真に迫ってたちゅうこっちゃろ?」
熱湯を浴びて、大騒ぎする土方を冷ややかに見つめ、桂は水鉄砲をテーブルに置いてソファーに腰を下ろす。
「あっはっは〜やき言うたじゃろが?金時の惚れた相手なんやき、信用出来るって」
「…自分の目で確認出来るまで信用など出来るか。大体貴様は何でもかんでも信用し過ぎなんだ。もっと見極めてから…」
「ほき?この男は合格なんなが?」
「…辛うじてな」
「あっはっは〜素直じゃなかね〜」
さっきとは打って変わった雰囲気に土方は面を喰らう。
一体何だと言うのだ…。
「…また、俺は試されたと言う訳か?」
「人聞きの悪い事を言うな。信用出来る男か見極めただけだ」
「あっはっは〜気を悪くしやーせきとおせ?」
「気を悪くするなってのが無理だ!何なんだ、テメェ等は!!!」
「まっ、試練だと思って受け入れるんやき」
「試練、だと…?」
「今回の計画に参加しうる人物かテストして居たのだ」
「ふっ…ざけんなっ!!!!!!」
その言葉にとうとう土方の堪忍袋の緒が切れた。
「さっきから何なんだ、テメー等は!テストとか何とか、何様のつもりだ!!!!!」
「まぁまぁ、そう怒らきとおせ」
「これが怒らずに居られるかっ!!!」
「…落ち着け」
「落ち着いてられるか!!」
「…確かに。先程の非礼は詫びよう。…すまなかった」
「え、ぁ…ぅ…」
あっさりと頭を下げて来た桂に、土方も度肝を抜かれた。
「…これからの作戦、キーとなるのは貴様なんだ。土方」
「…お、れ?」
「…騒ぎを収めるだけなら警察にも出来よう」
「!」
「だが、騒ぎを収めるだけだと何も解決せんのだ」
「解決、しない…?」
意味が解らない。
土方は問い詰めようとした矢先。
桂はゆっくりと紡ぎ出した。
「…騒ぎが広がる前に金時と高杉を止めたい」
「それは、ったりめェだろう、が…」
「それには。…貴様に飛び込んでもらいたいのだ」
「!飛び込む?」
「夜兎も加わるだろう。…十中八九、銃撃戦となる。その中に…飛び込んでもらいたい」
「!」
「勿論。わし等も援護するき」
ゴトリとテーブルに置かれた銃。
それは先程の水鉄砲とは違う、重く闇を示す黒い色。
重く響いた音と、2人の微かな緊張感に土方は本能でそれが本物だと悟った。
「…テメェ等…これを、何処で…」
「蛇の道は蛇、と言う奴じゃな」
「……使う気はない…と言うか、出来れば使いたくない、と言うのが本音だ」
「………………………」
「だが、邪魔をする者が居るなら止む得ないと思っている」
「殺す気は全くないがな」
銃に落としていた視線を、桂は再び土方に向ける。
「…今一度、確認をする」
「!」
「おんしは現役の警察じゃ。…バレたら失うものも多か」
「俺等には…これ以上失うものはない」
「愛じゃぁ恋じゃぁ言うて、全て失って良ェと思うほど子供じゃなかろ?」
「それでも。…我等に協力してくれるのか?」
2つの真摯な瞳に見つめられ。
土方は静かに瞳を閉じた。
今までの事。
これからの事。
(俺は…)
確かに、愛や恋だと言って全てを失って良いと思うほど自分は子供でもない。
それなりに夢を持って警察と言う職務に就いた。
やり甲斐は感じている。
上司も部下も好きだ。
「…確かに」
静まり返った部屋に、土方の真剣な声が響く。
「愛だぁ恋だぁ言って、全てを失える程、俺も子供じゃねェ」
閉じていた瞳を、土方はゆっくりと開いた。
そして。
「…でも」
間の前に居る、坂本と桂を見つめる。
「だからって何もかもなかった事にして、全ての事に目を瞑って居られる程。 大人でもねェんだ」
沈黙が部屋を支配する。
だた、真剣な眼差しが交差する中。
フっと口元に笑みを浮かべ。
「…後悔は、しないな?」
「…死んでからするさ。正に死ぬ程、な」
「絶対におんしを死なせん。…金時が悲しむからな」
スっとどちらともなく差し出された手に。
お互いの手を重ねた。
![]()
2007/05/01UP