「元気だったネ?金ちゃん」
「あぁ」
パっと顔を綻ばせながら駆け寄る神楽に金時は微かに微笑を浮かべる。
「私ずっと連絡待ってたネ。それなのに金ちゃん連絡もくれないで…薄情アル」
「ごめんごめん。ちょっと……ゴタゴタしててな」
拗ねた物言いをする神楽に、金時はヨシヨシと神楽の頭を撫でる。
しかし神楽はその手を跳ね除け。
「私子供じゃないネ!子供扱いしないヨロシ」
「はぃはぃ」
プクっと頬を膨らませてそう言う。
(この歳でマフィアのボスだもんな…)
そんな仕種がますます子供染みてて。
多分思っている事を口にしたら、ますます怒りを買うだろう。
こんな子供が…一声で自身すらすぐに抹消出来る力を持っている。
「…神楽」
「ん?何アルね、金ちゃん」
「会って早々なんだけどさ、…頼み事がある」
金時がそう言うと、先程まで柔らかだった神楽の瞳がスゥっと細くなり。
「…『高杉』の事ネ?」
「っ!…知ってたのか?」
「知らないはずないネ。こっちのシマまで荒らされて困ってるアル」
「取り戻したいんだ…高杉を。手伝ってくれるか?」
ジっと神楽の瞳を見て、金時が呟く。
神楽はその瞳をジっと見返し、一度瞳を閉じると、ニコっと微笑んで。
「勿論ネ。他ならぬ金ちゃんの頼みアルね。『夜兎』の総力をあげて、手伝うヨ」
「…サンキュ」
快諾してくれた神楽に礼を言い、金時は瞳を伏せた。
…手立ては全て整った。
後は覚悟だけだ。
金時が決意をゆっくりと固めていると。
「金ちゃん」
不意に呼ばれて、振り返った瞬間だった。
『ゴト』
静かな部屋に響いた、重々しい音。
そして目に飛び込んで来たのは…。
「おい、神楽…こりゃどう言う事だよ?」
「私達もまだ、高杉の組織解らないネ。でもマフィアが関係してるのは確実アル。保険ネ」
黒々しく光る、黒い金属。
それは…銃だった。
「んなモン、要らねェよ!」
「持ってるだけで良いネ。金ちゃん、私が守る。でも何かの時に備え、ある方が良いアルね」
「…………………」
真摯な瞳で言われて。
グっと息を飲む。
…確かに。
どの組織だが知らないが、高杉の背後に何らかのマフィアの匂いがする。
それは自身を襲わせた、黒服からも伺えた。
そして…その黒服が銃を所持していたのは誰にも言っていなかった事…。
「神楽…お前……」
「ん?何、金ちゃん?」
銃を持たせたのは保証の為。
それ以外、意図はないのだ。
(何考えてんだ、俺…)
金時は微かに首を振り、
「…ぃや…何でもねェ…悪ぃ」
「?変な金ちゃんネ」
(今は…高杉の事だけ、考えてりゃぁ良い…)
俯いて、瞳を閉じる。
そして、今度はゆっくりと顔を上げて。
…金時は正面を見据えた。
それはまるで迷いを一蹴するかのように。
「今日、何かの取引があるみたいネ」
「…あぁ」
「金ちゃん、知ってたアルか?」
「あぁ…高杉から聞いて」
「そう…場所は?」
「…いや」
「そう。…私達、場所知ってるネ。案内するから付いて来るヨロシ」
「…あぁ」
「ぁ。机のモノ、ちゃんと持って行くアルよ」
「……………………」
言われて。
金時は机の上に置かれた銃をそっと掴む。
ずっしりとした冷たい重みが手の中に広がる。
(使うはず、ねェだろ…?)
これを使う時なんかあるのだろうか?
否、ないだろう。
では持つ必要はあるのか?
「…金ちゃん?」
「あぁ…今、行く」
静かにそれを懐にしまった。
使う時なんかないだろう。
そう思うと同時に…使わせないでくれ。
そう願う。
金時は銃をギュっと胸に抱えて瞳を閉じた。
それは祈るように…。
そして金時はゆっくりと瞳を開けて、ドアに向かって歩を進めた。
薄暗い部屋から電気のない廊下へ。
…それはこれから進む道を暗示するかのようだった。
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2007/02/04UP