ドタドタドタっっ!!!!



「な、何だ?!」



突如鳴り響いた足音。
そして…。



「土方〜っ!!!土方ちゅうはどいつじゃぁ?!」
「?!」



真っ黒な髪に天然パーマ。
サングラスをした怪しげな男が叫ぶ。



「待て!待てと言うのが聞こえぬのか?!ちょっとは落ち着かぬか!!」
「うるさい!おんしは黙っちょれっ!!…土方!土方ゆうのはどいつじゃ?!
「…っ、ココは警察なのだぞ?!!」
「ほがな事、百も承知じゃっ!!離せぇっ!!!」



後ろで長髪の男が叫ぶ男を止めに入る。
しかし男は一向に叫ぶのを止める気配はなく…。



「土方ぁぁっっ、何処なが、出て来ぃっっっ!!!!」



土方を呼び続けるのだった。
何だ何だ、と署に居る警官がそれを眺める。
土方達も呆然とそれを見ていたが…。
ふと山崎が。



「…あ!あれ!あの怒鳴ってる男を止めに入ってる長髪って、『桂』じゃないですか?!」



男の長身で見え隠れしているが、山崎の言葉に近藤と沖田も視線を向ける。



「あ、本当だ!」
「そう言われればそうですねぃ…」
「ぁ…そ、それに叫んでる男…、あの男、土方さんトコに居る金髪が会ってた『坂本医院』の男ですよ!!」
「何?!!」



再び気づいた山崎の台詞に土方はバっと顔を向ける。
そして…。



「おい!俺が土方だ!てめェ…何の用だ?!!」



男に向かってそう叫ぶと。



「おんしが土方か…」



男は叫ぶのを止め。
ズンズンと土方の方へと歩み寄る。



「おんしんくを教えぇっっ!!!」
「…は?」
「お、落ち着け『辰馬』!!順を追って説明せねば、相手も解らないではないか!!」
「おんし馬鹿か?時は一刻を争うんじゃ!こがな役立たずの警察に事情説明したってやちがないじゃろう!!」
「何?!…てめェ言うに事欠いて『役立たず』ってなぁ…聞き捨てならねェ!!」



坂本の言葉にピクリと血管を浮き上がらせた土方。
ガっと坂本の胸倉を掴む。



「こっちは大事な話してんだ!!いきなり人の名前叫んで、ふざけた事抜かしてんじゃねェぞっ!!!」



しかし坂本はそれをバシっと払い。
土方に冷たい視線を向ける。



「こがな男に金時任せたのがへちじゃった」
「何?!」
「辰馬っっ!!!いい加減にしろっっ!!!!」



その言葉に今にも殴り掛かろうとした土方だが、桂の大声にピタリと動きを止める。
周りも静まり返り…。



「いい加減にしないか。時は一刻を争うと言ったのは貴様だぞ。それに警察に喧嘩を売りに来たのではないのだろう」
「…そうじゃけんど」



キっと桂は坂本を往なすと、スィっと坂本の前に立ち。



「…突然仕事場に来てすまない。…金時と連絡が取れぬのだ。火急の用事がある。済まぬが、家の場所を教えてはもらえぬか?」
「金時と…?…連絡取れないってどう言う事だ?!!」
「携帯に架けても出ないのだ。…ちょっと気になる事もあって……時は一刻を争う」
「気になる事…?」
「おんしに説明しちょる時間がない!さっさとおんしんく教えぇ!!」
「ちょっ、ちょっと待て!何であいつが俺ん家に居るって知ってんだ?!」
「金時に聞いたからだ」
「金時に…?いつ……?」
「エェからしゃんしゃん家の場所を教えぇ!はよぅしやーせんと手遅れになる!!」
「手遅れって何だよ!!!」
「エェからしゃんしゃんせんか!!…あぁ、もうエェ!!」
「ぅわっ!!!」
「辰馬!!」
「走りながら訳は説明しちゃる。しゃんしゃんせぃ!!」



ガシガシと頭を掻き毟り、坂本は土方の手首を掴むと走り始める。
それを桂が追い掛ける。



「お、おい、どう言う事だよ!!」
「金時と連絡が取れん。もしかしたらあいつ…勝手に動こうとしちょるかも知れん」
「動くって…携帯忘れてるかも知れねェだろう」
「それはなか。ホストは絶対携帯忘れんもんじゃ。職業病みたいなもんじゃ」
「…チっ」



走りながらも土方は携帯を取り出し、ダイアルする。



「………………………」



5コール。



「………………………」



10コール。



「…くそっ!マジで出ねェっ!!!」
「わし等もさいさい架けちゅう。ほんでも出んのじゃ。…嫌な予感がしぃ」
「…おい。それってもしかして『高杉』と…何か関係ある事か?」
「…おんし、まっこと金時から何も聞いとらんのか?」



土方が無言で居ると。
坂本は真っ直ぐ前を見据えたまま。



「…ほがか」



そう言って走っていた足を止める。
それに気づいて、数歩先で土方も足を止め振り返る。



「おいっ!時は一刻を争うんだろう?!何止まってんだよ!!」
「…土方」
「何だよ!!」
「おんし、金時の事愛しちゅうか?」
「んなっ…!」



突然紡がれた言葉に土方は動揺した。
何を突然?!
そう思ったが、真っ直ぐ見据えられた坂本の視線に、一瞬戸惑ったが…。



「…あぁ。……愛してる。男同士で何を、と言われるかも知れねェけど…」
「…ほがな事言いやーせん。ほんなら、どがな金時でも受け入れらちゅう?」
「どんな…?」
「そうじゃ。どがな金時でも受け入れられる覚悟、おんしにはあっちゅうか?」
「それは…後ろめたい事、なのか…?」
「…どうじゃろな?」



告げられた言葉に土方はギュっと拳を握る。



「…それが後ろめたい事だとしちょっても。どがな過去を持っとっても。ほがなあいつを受け入れる覚悟。おんしにゃあるか?」



ジっと見つめられる瞳。
土方はもう一度その瞳から視線を外して。
またグっと前を見据えた。
…まるで覚悟を示すように。



「…俺は。俺はあいつを信じたい。…信じてる。でも正直迷ってもいる」
「………………………」
「それが答えになっていないのも解ってる。受け入れられるかどうか…正直解んねェ」
「………………………」
「…でも知りたい。あいつの事を知りたい。どんな事でも。何でも」
「………………………」
「だから教えてくれ。あいつの事、今回の傷害事件と『高杉』の事。あいつはやっぱり関係しているのか?」
「…おんしはまっこと正直な男じゃの」
「え…?」
「嘘でもエェから、『受け入れる』ちゆえば、わしはあいつの知っちゅう情報をおんしに全部話す。それながやきに馬鹿正直に真っ向からまっことをゆうんや」



ずっと厳しかった坂本の視線がフっと緩んで。



「…あいつが惚れるのも解る気がするがよ」
「…っ…な、に…」
「やれやれ。…さっきと言ってる事が違うぞ、辰馬」
「あっはっはっは〜ようやく来たき、桂。遅いぜよ」
「貴様が急に走り始めるからだろうが!!」
「あっはっはっは〜!!」
「全く……どう言う心変わりだ?」
「そうじゃなぁ…心変わりとゆうか、さっきは頭に血ぃ昇っちょったきぃ」
「ようやく冷静になれた、と言う訳か」
「まっ、そう言うこっちや。…わしは金時の幸せを祈っちゅうから。あいつが選んだ男なら賭けてみる価値もあるかぇぁ」
「…そうだな」



そう言う坂本に。
桂も賛同するように微笑する。



「…さぁ、早く金時の所に行こう」






2006/08/03UP