「さぁ〜てと。じゃぁ働こうかな…」



ズルズルとシーツを引き摺って。
金時はバスルームでシャワーを浴びた後、いつも通り家事を始めた。
大人しくしていろ、と言われたが、これは動く内に入らないだろう、と勝手に思って。



「ふぅ…やっぱ立ちっ放しは辛い…」



洗濯物を干して。
天気の良い空に目を細めた。
これならシーツも乾きそうだ。



「あ、そうだ。買い物しに行かなきゃ」



洗濯物を終えて。
軽く食事を済ませる。
土方もちゃんと昼食を取っただろうか…?



「警察って忙しいって聞くもんね〜」



ちゃんと取っていると良いのだが。
そんな事を考えながら携帯を手に取る。



「今は…仕事中、かな?…メールなら良いよね」



ピピピっと携帯を操作して。


『土方へ
今日の晩飯何食いたい?丸焦げ目玉焼きのお礼に好きなモン作ってやるよー


「えぃ、送信!」



ピっと最後のボタンを押して、携帯を手放す。
返って来るかな?とワクワクしていると、存外返信は早かった。


『大人しく寝てろつったろ。夕飯は何か出前取りゃ良い』


あまりにも土方らしい返信にクスっと笑って。
ピピっとまた携帯を弄る。



『え〜…不経済。却下』

『じゃぁ俺が何か作ってやるから!大人しくしてろって!!』

『…お前は俺を癌にしたいの?』

『悪かったな 料理下手で!!』

『だから金さんが美味しい料理作ってやるって。早く何食いたいか返信しろー!!』

『…簡単なモンで良いよ』

『簡単なモン?…ケーキでも良い?』

『何処が簡単なんだよ

『俺的には簡単』

『んなもんが飯になる訳ねェだろうが!!』

『え〜…じゃぁリクエストしてよ。何でも良いとか言ったら、甘味尽くしにしてやっからな』

『……エビのマヨネーズ和え。他は任せる』

『オッケー。エビのマヨネーズ和えね。お前本当マヨネーズ好きだな』

『放っとけ』

『じゃぁお仕事頑張ってね〜chu(^З^)−



それからの返信はなくて。
金時も携帯をテーブルに置いて。



「じゃ〜美味しいエビのマヨネーズ和え作る為に、買い物行っかな」



鍵を片手に、買い物の準備をした。
スーパーに着いて目的のものと安売りしているものを幾つかカゴの中に。
混む事なくレジを通って、鼻歌混じりに帰路に着く。
穏やかな日々。


(土方何時くらいに帰って来るのかな?)


ふと今の時間は何時だろう、と立ち止まりポケットに入っている携帯を出そうとした瞬間。



「…っ?!」



目の端に移った人物。
それに弾かれるように、金時は買い物袋を手放し、その姿が確かか確かめに走る。



「…っ」



曲がったと思われる角を曲がり、そこを凝視する。



「…!!」
「…よぉ」



そこに居たのだ。
…『高杉』が。
まるで金時を待ち受けていたかのように壁に身体を預けて佇んでいる。



「…久し振りだな、金時」
「高…杉っ…!」



ニヤっと笑って見せた高杉に金時は睨みつける。



「そんな怖い顔すんよ」
「高、杉…お前…」
「あぁ、そう言えばこの間は上手く逃げられたみてェだな…おめでとうとでも言えば良いか?」
「てんめっ…警察にマークさせんのが目的だったんだな!」
「流石金時。ご名答。お前邪魔しそうだからさ」
「邪魔って…お前何を考えてる?何してんだよ!!」
「…革命レボリューションさ」
「かく、めい…?」
「腐敗は根元から絶やさなきゃならねェからな」
「な、に言…」
「腐った部分は全て俺が片付ける。後は…金時。お前に任せる」
「おいっ!どう言う意味だよ、そりゃぁ!!」
「『攘夷』の時、出来なかった事をやろうぜ。…お前と俺だけの世界を」
「高杉っ!!!」



♪♪♪♪♪



走って高杉との距離を縮めようとした。
その瞬間、鳴り始めた携帯。
まるでそれは警告のように。
静かな辺りに鳴り響く。



「手筈は全て整った。…今夜、祭りが始まるぜ、金時」
「ま、つり…?」
「乗り遅れんなよ…あばよ」
「待てよ!話は済んで…っ!!!」



去ろうとする高杉を追おうとした。
…だが金時は動く事が出来なかった。
その目はまるで自分を映していない。
何がこんなにも彼を変えてしまったのだろうか。
絶望で足が竦む。
…そして。
何が彼と自分の道を違えてしまったのだろうか。



「く、っそ…!」



苦々しく吐き捨て、金時もその路地を後にした。
途中で落とした買い物袋を拾って。
出て行った時とは正反対の気持ちで家に辿り着く。
足取りが重い。



「何、やってんだ、…俺」



部屋の前に着いて。
ポケットから鍵を出して。
部屋に入る。
その瞬間。
嗅ぎ慣れた煙草の匂いが香る。
幸せな空間が眼前に広がって。
幸せな瞬間。
それなのに。今は。
…それらが酷く自分を責めている気がした。



「ち、っくしょ…っ」



ズルズルと壁にもたれて座り込む。
遠くで、携帯がまた鳴ったが金時は決して取ろうとはしなかった…。






2006/07/11UP