誰かと朝を迎えるのなんて何年振りだろう。
前の彼女と別れて、それから恋人なんて何年も作っていない。
土方はうっすらと明けていくカーテンの向こうを煙草を吸いながら眺めていた。
「…んっ、…ケ、ム…ぃ…」
ゴロリと寝返った金時と、チラリと手元の点けたばかりの煙草を交互に見る。
「…………………」
金時と眉間に寄せられた皺に、土方は惜しみながらも煙草を灰皿に押し付けた。
「………………悪ぃ」
サラリと金時の顔に掛かる金糸を撫でる。
微かに赤くなっている目元にすまない気持ちと愛しい気持ちが募った。
そして紡いだ言葉。
ソっとその目元に唇を落とす。
「ん…っ…」
その感触に金時の閉じられた瞳が微かに開く。
「…はよ」
土方は照れくさい気持ちを隠しながら声を出す。
「…………ぉ……ハヨ………ご、ざぃ…ます………」
何度か瞬きを繰り返し、ようやく事態を把握した金時が、枕に顔を押し付けながらくぐもった声を返す。
その声は擦れて居て。
余計に金時を気恥ずかしくさせていた。
「…んで隠れんだよ」
モソモソとシーツに隠れ始める金時に、土方の顔が曇る。
もしかして、後悔しているのではないか。
そんな気持ちが頭をもたげる。
しかし金時は…。
「…ってよぉ…」
「何だよ…?」
「……恥ずか、し…ぃ、…だろーが……」
聞こえて来た、今にも消えそうな声と。
その内容に。
微かにもたげた気持ちを一掃してくれるには充分で。
「…バーカ」
笑みが零れた。
「…俺は土方と違って恥ずかしがり屋なの」
土方から完全に背を向けてしまった金時から少し不貞腐れた声が聞こえる。
土方はその背を後ろから抱き締めて。
「…だから馬鹿だつってんの。俺だって恥ずかしいっての」
「どーだか…」
その抱擁を金時は感受して。
ボソボソと2人で話す。
「…辛いか?」
「………大丈夫」
「…もぅちょっと、寝てて良いぜ?」
「……ん……」
呼吸をする度、腕の中の金時が微かに揺れる。
そして、自分が呼吸をする度に、肺に金時の香りが満たされる。
幸せで。
幸せで眩暈がする。
土方はキュっと微かに腕の力を強くして。
「………愛してる」
溢れる気持ちが自然と言葉になった。
自分が呟いた言葉に、土方自身が驚いたが。
その言葉に嘘偽りはなかった。
ずっと誤魔化し続けた、気持ちの正体。
「…バーカ…」
ふと回した腕に、温もりが灯る。
それは金時の手が、土方の腕の添えられた温もり。
金時の方を見れば、後ろから見える耳は真っ赤で。
「…お前は?」
意地悪心で尋ねてみれば。
「…前に…叫ん、だ……」
「冗談半分にな」
「…本気、だつうの…」
「じゃぁもう1回。…聞きたい。今すぐ」
「……………………」
そう呟けば。
キュっと。
添えていた手に、微かに力篭って。
「…ぉ、れも…ぁい、…してる…」
小さな声で。呟かれた言葉。
多分顔は。さっきより赤いだろう。
その言葉に微笑んで。
もう1度腕に力を込めて。
土方は静かに瞳を閉じた。2つの寝息が重なる。
…とある朝のひと時。
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2006/07/01UP