「山崎、ただ今戻りました!!」
「おぉ、ご苦労」
夕方。
土方が所属する課に声が響く。
書類に目を通していた土方がそちらに目をやり、山崎が帰って来たと解るや否や書類を机に放り出し。
「おぃ、どうだった?!!」
山崎の方へと詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ、土方さん!!」
「落ち着け、トシ。まだ何の報告も受けてねェよ」
「そ、そうか…」
「ったく。土方さんはせっかちでいけねェ」
「総悟?!てめェいつの間に…」
「さっきから居やしたぜ」
「じゃぁ…早速だが山崎。報告を聞こうか」
「は、はい!」
誰にも聞かれないよう、近藤・土方・沖田・山崎は会議室に入ると、鍵を掛ける。
「で?どうだったんだ?」
「はい…土方さんから電話があって、俺はすぐに金髪のホストを見つけました」
「へぇ。土方さんが山崎呼んだんで?」
「あぁ、そうだが?」
「いえ、別にね?随分執着してたみてェだから、意外だな、と」
「…てめェっ…そらぁどう言う意味だ?」
「どうもこうも、女に興味ねェのかと思ったら、やっぱ男…」
「てめェェェェ、それ以上口にしてみろ、殺すぞ、コラァァァ!!!」
土方は沖田の胸倉を掴むと、カチリと銃を沖田の眉間に押し当てる。
「ぁてててて。何でぃ、土方さん。図星突かれたからって逆ギレですかぃ?大人気ない」
「図星じゃねェよ!!!好きじゃねェよ、あんな奴!!!」
「誰も好きとは言ってやせんぜ?」
「上等だぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
「まぁまぁ。トシも総悟も揉めるな。…山崎続きを」
漫才(?)を始めた2人を諭し、近藤は山崎に先を促す。
山崎もコクリと頷き、手帳を開き、言葉を続ける。
「向かった先は歌舞伎町より程近い、『坂本医院』でした」
「病院…?」
「トシ、そいつは何て言って出たんだ?」
「確か…『昔馴染みの友達んトコ行く』って」
「昔の…?」
「それって昔一緒に働いたホストって事ですかねぃ?」
「病院営んでる奴だろ?昔ホストとして働いたって事ぁねェだろ……」
「おぃ、ちょっと待て。病院営んでって…」
「え?何だよ、近藤さ…」
「…BINGOって奴ですかねぃ?」
顔を見合わせ、何やら曰くあり気に話す近藤・沖田に土方は訳が解らない。
「あれ?土方さん知らねェんですかぃ?」
「あぁ…トシがココに来たのは全部片付いた後だったしな」
「??な、何の話だよ!!」
「有名な話ですぜ、
ニヤリと笑う沖田。
「有名…?」
「昔な、『攘夷』ってホストクラブがあったんだ」
「『攘夷』…?」
「そこにな、『四天王』って呼ばれるホストが勤めててな」
「それだったら今だって居るじゃねェか」
「それは『女帝』でしょ?ホストクラブに勤めてるんですから、その『四天王』は男ですぜ?」
近藤の言葉を付け足すように沖田が口を開く。
あぁ、そうか、と土方が納得した時。
「ちょっ、待てよ、それって…」
「えぇ、土方さん。その『四天王』の中に居たんです。病院を営むホストが1人…」
「解っている『四天王』は3人」
「1人はその、病院を営む男。名は解ってやせん」
「1人は 『桂小太郎』。そいつがホスト『攘夷』の代表でした」
「そいつは今、『かまっ子倶楽部』で働いている。ホスト業は失業したらしいな」
「もう1人が…山崎」
「はい」
近藤に促され、山崎が持っていた手帳を数ページめくり、言葉を続ける。
「今、
「原因…?」
ココ最近、ホストクラブに多くの
容疑は殆どが「麻薬法違反」
それの原因。
「『高杉晋助』外国人ホスト・取締りと手を組み、歌舞伎町に麻薬を根回ししている男です」
「高杉…」
「重要指名手配中なんだが、何せ規模がでかい。全く消息も掴めていないのが現状だ」
「それで…それでもう1人は?!」
「…解らん」
「わか…?!」
「そいつ自体が表舞台に全く姿を見せない奴でな。姿はおろか、名前すらこちらも解らん」
「………………………」
「聞く所によると、物凄く綺麗な男らしいですぜ。男にも女にも人気があったとか」
「…………………………」
シン…と静まり返った部屋。
ギュっと土方は拳を握り項垂れた頭を起こす。
「その…『四天王』ってのは何、したんだ?」
「…………………」
「その…『攘夷』ってのが何で有名なんだよ?俺ぁ聞いた事もねェぞ」
「………………ホスト狩りです」
「ホスト、狩り…?」
「そいつぁ違うぜ、山崎。『ホスト係り』でさぁ」
「どう言う、事だ…?」
「元々ホストを牛耳る奴等でしてね。まぁ簡単に言えば『教育係』でさぁ」
「教育…?」
「俺も関わった訳じゃねェんでね。…山崎、詳しく説明してやってくれぃ」
「はい」
沖田に呼ばれ、また山崎が説明を始める。
「元々『攘夷』は人気ホストクラブでした」
「あ、あぁ」
「『四天王』と呼ばれる連中はホストと客のトラブル処理班みたいな事をしていまして」
「トラブル処理…?例えば?」
「そうですね…ぼったくりとか、後、女を騙すホストの成敗とか」
「…ケっ、警察の真似事かよ」
「そう言っても人気はあったんですよ。…警察に任せるより頼りになる、と言う実際の言葉もありました」
「…チっ」
「『女性に夢を見させるのがホストの仕事』と言って、『四天王』が居た頃は外国系ホストも形を潜め、ホスト業界も平和だったのは事実です」
「へぇ…それで?その『四天王』さまが今居ねェのは何でだ?」
「…それが」
「事件が起こったのさ」
「事件…?」
「暴走したんでさぁ」
「暴走…?誰が?その、『狩られた』つうホストがか?」
「否…暴走したのは『四天王』の中でも過激派だった『高杉』だ」
「!!」
また出て来た『高杉』の名。
「段々手を伸ばして来た外国系ホスト、それを一網打尽にしようとしてな。…突っ込んだんだ。元締めんトコに」
「それでお縄になり掛けた」
「それを救ったのが…残りの『四天王』だ」
「救ったって…」
「高杉1人を助ける為にホストクラブ『攘夷』を失くし、4人ともバラバラになりました」
「店を持たない、今までやってた事を一切しない。つまりはお役目御免って奴ですね」
「そのせいかどうかは解りませんが、それ以降、麻薬や暴力、問題が歌舞伎町に蔓延しました」
「終いにゃ、『高杉』は恩を忘れて外国系組織に寝返る情報も飛び込んで来た」
「どうにもこうにもやりきれねェ
重苦しい空気が会議室を満たす。
誰も何も発しない。
その時。
♪♪♪
「お?誰です?」
「俺じゃねェ」
「俺のでもないです」
「…っと、悪ぃ、俺だ」
ポケットから流れる音に、土方は3人から離れ、携帯を取り出す。
(非通知…)
携帯を開けると、ディスプレイに表示される『非通知』の文字。
誰だ?と思いながらも、土方は通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『………………………』
声を発しても返事は無い。
悪戯か?
そう思った時だった。
『土方十四郎か?』
くぐもった声だった。
「あぁ…そうだが…誰だ?」
こちらの名を知っている。
が、土方には全く相手が誰だが解らなかった。
尋ねたが、次に聞こえて来た言葉は、俄かに信じがたい台詞だった。
『…金時』
「あぁ?!」
『…坂田金時から目を離すな』
「あぁ?!てめェ何言ってん……」
その言葉を追求しようとしたが。
その言葉を紡ぐ前に電話は切れてしまっていた。
「…何だよ…」
金時から目を離すな?
一体どう言うつもりなのか…。
「トシ?」
「誰からだったんです?」
呆然と携帯を眺めていた土方だったが。
近藤・沖田の声に我に返る。
「あ、あぁ…イタ電」
「本当ですか〜?」
「またどっかの女に手ェ出したじゃないだろうな〜」
「近藤さん、近藤さん。きっとアレですぜ。同棲してるつう、金髪の男からですぜ」
「総悟、てめっ!何で携帯番号交換したの知ってやがんだよ!!!」
「お〜とうとう電話番交換したんですかぃ?ホモ方さん、流石〜♪」
「妙な呼び方すんじゃねぇっ!!ってか誰がホモだっ!!!!」
わいわいといつもの怒鳴り声が響く。
しかし土方の心に引っ掛かる。
先程の電話。
『…坂田金時から目を離すな』
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2006/06/22UP