カチャンと施錠の音が廊下に響く。



「戸締り完了〜」



ひょいひょいと足取り軽やかに金時は土方の傍に駆け寄る。



「お待たせ♪」
「…あぁ…」
「あれ?電話?何か用?」
「あぁ。…ちょっと、な」
「ふ〜ん…。離れてようか?」
「否…もう終わった」
「そっ?」



パチンと携帯を閉じて、土方はそれをポケットへとしまう。



「…なぁに?何だか不機嫌」
「…別に。生まれつき、んな面だ」
「……俺が出掛けるのそんなに嫌?」
「ブっっ!べ、別に、んな事言ってねェだろうが!!」
「大丈夫だよぉ?ちゃんと土方君が帰って来るまでにはウチに居るから」
「べ、別に気にしてねェつうの!…行くぞ!」



最上階まで来たエレベーターに土方が乗り込む。
それに連れて、金時もエレベーターに飛び乗る。



「……………………」
「お〜ココのエレベーター乗るの初めてかも。来た時は階段駆け上ったからなぁ」
「……今日」
「ん?何?土方君」
「…今日、その…会う友達って、のは…」
「……………………」
「その…」
「…お客じゃないよ」
「…え?」



静寂なエレベーターの中。
不意に途切れ途切れに紡いだ土方の言葉に金時が返す。
その言葉に振り向いた土方。
金時はニッコリと笑って。



「客じゃないよ。新宿で病院営んでる友達。野郎に会いに行くんですぅ」
「そ、っか…」
「うん。…だからヤキモチ妬かなくても良いよ」
「?!だ、誰がヤキモチなんか!!」
「え〜違うの?だからムスっとしてたんでしょ〜??」
「だから!このツラぁ生まれつきだ!!」
「またまたぁ〜?」



コロコロと笑う金時に、エレベーターが開くと同時に土方がエレベーターから出る。



「ちょっとちょっと!待ってよ、土方君!早いよ!!」



スタスタとエントランスを通って、マンションから出る。
早足で歩く土方に、後ろから金時は声を掛ける。
それでも土方の足は止まらない。



「…あ」
「…?」



不意に金時から出た言葉に、土方は足を止める。



「…?」
「土方君そこ真っ直ぐ?俺、ここから向こうに行くからココでお別れだ」
「…そうか」
「うん。じゃぁね、バイバイ」
「あ、あぁ」



向こう、と金時は自身が向かう方向を指差す。
バイバイとまた前のように手を振って、金時は信号を渡る。
信号が青から赤に変わって。



「土方君!!」
「…あぁ?」



信号を渡りきって。
土方は署に向かおうと、そこから歩き始めようとした瞬間。
聞こえた声に振り向く。
そこには信号を渡って、勤務先に向かう人の波の中に、ニっと微笑む金時が居て。



「何だよ?!忘れ物か?!!」



雑踏と、車の排気音。
それに負けないように、土方は少し張り気味の声でそう呼び掛ける。
次の瞬間…。



「愛してるよ〜

「あぃ…?!」



叫ばれた言葉にひやりとして。



「こ、っんの…ボケカス、脳タリン!!街中で変な事叫ぶんじゃねェっ!誤解されっだろっ!!
「あははは、お仕事頑張ってね〜チュっ
「うるせェ、黙れ、死ねっっ!!!!



往来でする会話とも思えぬ会話をして。
土方は。
金時が歩き始めたのを確認した。



「…ったく。何だってんだよ」



チっと舌打ちをして。
ポケットから煙草を取り出す。
それに火を点けてから。
少しダルそうにまたポケットに手を忍ばせた。



「……もしもし、俺だ。……あぁ、歌舞伎町のホスト街入ってった。行き先は不明だが、昔馴染みの野郎と会うと言ってた」



出された携帯。
リダイアル∞∞∞∞を押して会話する。



「あぁ。……尾行、頼む」



フゥと吐き出された紫煙は。
雑踏の中に消えた。






2006/06/18UP