「おいっ!居るか?!!!」
「…あ、お帰り〜…って早くね?さっき出てったばっかだよね?土方君」
勢い良く家に帰ると、土方は金時を呼ぶ。
金時はベランダで洗濯物を干していたらしく、ベランダから顔を出すと、そう答える。
「ちょっと聞きてェ事がある」
「聞きたい事?ん〜…ちょっと待って。これで最後だから」
「んなの良いから早く来いっ!!!」
「ちょっと待ってってばぁ!…もぉ〜せっかちだなぁ」
怒鳴る土方に、金時は急いでベランダから部屋に入る。
「はぃはぃ。なぁに?」
「…てめェ、何した?」
「へ?な、何って…」
「警察が、てめェ探してる」
「え、ええぇぇ?!な、何で?どーして??」
「しらばっくれるな!!」
ダンっとテーブルを叩いて、土方が怒鳴る。
「…てめェ。この間中国系の用心棒、3人のしたろ?」
「…へ?」
「お前が俺んトコに転がり込んで来た夜だよ!忘れたとは言わさねェぞ!!」
「それって…俺が例の客の用心棒から逃げた時の話?!ってか俺逃げたけど、のしてねェぞ?!」
「…ほっほぉ。あくまでしらぁ切るつもりか」
「な、なんだよ…」
「じゃぁ、警察が『金髪のホスト』捜してるってのはどうしてだぁ?」
「…金髪って…」
「てめェしか居ねェだろうが」
「…………………」
「…………………」
「……プっ」
「!?」
「あ、あはははは!!ちょ、ちょっと待ってよ、土方君!!」
突然笑い出した金時に、土方が驚く。
「なっ…!んで笑ってんだよ?!!」
「あははははは!!だって笑わずには居られないよ!き、金髪って…あはははは!!」
「て、てめェっ…!」
「あのねぇ、土方君?」
「あぁ?!何だよ!!」
「そんな怖い顔しないの。前も言ったけど、格好良い顔が台無しだよ?」
「良いから続き言えっ!!!」
「はいはい。…あのね」
「何だよ」
「珍しくないよ、
「…は?」
「だぁかぁら。金髪ホストなんて俺以外にもいっぱい居るって事。土方君は金髪ホスト=俺なの?」
「…ぅ」
「まぁタイミングが悪かったと言えば悪かったけどね。…3人ものせる程、俺強そう?」
「…じゃねェな」
「でしょ。自分で言うのも何だけど、俺逃げ足だけよ、自慢出来るの」
「…………………」
「さて、と。誤解も解けた事だし、折角帰って来たんだから、ゆっくりしてったら?あ、何か飲む?」
「………あぁ」
「コーヒー?お茶?」
「コーヒー」
「OK。ブラックだったよね」
「………あぁ」
かちゃかちゃとコーヒーの準備をし始めた金時の背を、土方は見つめる。
「…悪かった、な」
「え?」
「…疑って…悪かった」
小さな声だったが、土方の言葉に金時は苦笑する。
「…言ったでしょ。タイミングが悪かったって。いーよ、別に」
「…でも、ごめん」
「ん〜…まぁ。好きな人に疑われるのは辛いけどねぇ?」
「ブっっ!て、てめェっ、人が真面目に…!」
「こっちも大真面目、なんですけどねぇ?」
「……チっ、付き合ってらんねェ!!」
そう言うとそっぽを向いてしまった土方に金時は苦笑する。
「…あんま謝られちゃうと、こっちも困るんだよね…」
「え?」
「ん〜?お詫びの代わりにチューでもしてもらえば良かったかなぁ〜って」
「○×△□*?!!」
「あっは〜、冗談だよ」
「たたたたたたたりめェだろうが…」
「まぁ、それは両思いになってからの楽しみに取っとくよ」
「〜〜〜っっっっ!?!?」
部屋にコーヒーの匂いが充満し始める。
ほんの数日前から一緒に居る。
それなのに。
まるでずっと前から2人で居るみたい。
相手が好きな味。飲むコーヒーの好み。
それが伝えなくても解る。
たった数日の内に。
「お待たせ。はい、コーヒーのブラック」
「…サンキュ」
「…てめェのはまた、エラク甘そうな色してんな」
「知ってるでしょ。俺苦いの嫌いなの」
金時の言葉に、土方はクスと少しだけ笑って。
静かな時が流れる。
もしかして疑った事を怒ってるのか、と土方は思って。
向かいに座る金時の様子を伺った。
苦し紛れにコーヒーを口に運びながら。
でも金時は。
特に何かを気にする様子もなく。
ふぅふぅとコーヒーに息を吹き掛けて。
舌を火傷しないよう気をつけながら、そっとコーヒーを口に運んでいた。
そんな金時の様子に、土方は気づかない内に口元に柔らかい笑みを浮かべていた。
部屋には。
暖かい湯気。コーヒーの香り。
そして静かな空間。
土方が独りで暮らしていた時には決してなかった時間と空間が部屋を満たしていた。
「…美味いな」
「え?でもコレ、インスタントだよ?」
「でも…美味い」
「そぅ?金さんが淹れたからかな?」
土方は。
この空間に落ち着いている自身を感じた。
「…あぁ」
「…え?」
そして。
心の何処かで。
「そう、かもな…」
金時が。
この事件と関係なければ良い。
自分の勘が間違っていれば良い。
そんな事を考え始めていた。
![]()
2006/05/10UP