俺の言葉に、銀八が押し黙る。
俺も他に言葉が見つからなくて黙る。
短くも長い沈黙が、資料準備室に流れる。
「……リ」
「…あ?」
先に口を開いたのは、銀八だった。
「……ムリ」
「…あぁ?!」
言われた言葉にムっと来る。
「何でだよ?」
「…お前…そりゃ卑怯ってモンでしょうが…」
「はぁ?何処が卑怯ってんだよ?それならお前の方がずっと卑怯じゃねェかよ」
「………っ」
「俺はてめェが好きなんだ。それでもてめェが諦めろってんなら、ちゃんと……」
言葉を続けようとして、俺はハっと気づく。
…あれ?
こいつ、顔横に向けてるけど…。
「…お前、何で赤くなってんだ?」
「…っ…!!」
俺の言葉に銀八がビクリと身体を強張らせるのが解る。
「おい…?」
「ばっ、く、来んな!!つうか、俺の顔も見んなっ!!」
「それこそ、無理」
「…っ…」
「………………………」
何だよ。
結局、そう言う事なんじゃねェの?
「おい、銀八」
「…な、何だよ。つうか、俺は先生だぞ!呼び捨てにすんじゃねェ」
「んな事ぁどうでも良いんだよ。ちょっとこっち見ろ」
「命令すんじゃねェ。嫌だ。絶対ェ見ない」
…ったく。
これじゃぁどっちが生徒だか解ったモンじゃねェな。
「…このへそ曲がり」
「俺の何処、が…っ」
「やっとこっち見た」
「…う、っせ…」
真っ赤な顔がようやく俺の方を向いた。
「なぁ、何で赤くなってんだよ?教えてくんねェと、俺頭悪いから解んねェんだけど?」
「こ、の…性悪っ…!解ってんだろ、本当は?!」
「何がですか?全然解りません」
「っ、の…抜け抜けと」
つまりはそう言う事、なんだろ?
俺が、今、初めて。
アンタを『好き』って言ったから。
だから照れてるんだよなぁ?
だったら最初からそう言えよ。
何でも難しく考え過ぎなんだよ。
普段は何も考えてない、脳足りんのくせに。
「なぁ?抵抗しねェなら、このままキス。するけど?」
「バっ…!すん、じゃねェ…って」
「だから抵抗しろって」
「お前、が…手、掴んでる、から…」
「じゃ、『嫌い』って言えよ。されたくなかったら。そしたら、離してやるよ」
「だっ…から…!卑、怯だって…」
「…卑怯にもなるさ。アンタ、頑固だし」
顔を下に向けようとする銀八の顔を追って。
そのまま押し付けるように、唇と唇を合わせる。
「……………………」
「て、っめ…人の話、聞いてなか…ったのかよ…」
「聞いてた」
「じゃ、な…でキス、なんか…」
「てめェこそ、人の話聞いてなかったのかよ。言ったろ。…てめェに惚れてんだって。好きだ」
「…っ…」
俺の言葉に、銀八の頬がますます赤みを増して来る。
ほれ見ろ。
つまりそう言う事なんだろ。
いい加減観念しろや。
「…なぁ。好きだぜ、銀八」
「…っっ、お、お前誰ですか?!誰なんですか、この野郎っっ!!!」
「あ?とうとう自分の教え子まで忘れたか。可哀想に、痴呆か?」
「お、多串君はこんなタラシではありません!」
「土方だつうの。タラシじゃねェよ。タラシたいのは、アンタだけだし」
「…っっ、キャラ違う、キャラ違うからっっ!!」
真っ赤な顔して、んな事言ったって。
俺を煽るだけだぜ?
「逃げんなよ。もういい加減観念しろって」
「観念って何をですか?!…あぁ、もう!良いから離れろ!!」
「やだ。お前が観念するまで離さねェ」
「〜〜っっ」
そのまま黙る銀八に。
「………………」
「……っ、ちょ…!」
チュ、チュっと頬に、こめかみに、瞳に。
俺は唇を落としていく。
銀八は、それを何とか避けようと顔を左右にする。
身体は動かせない。動かない。
何故なら俺が手首を掴んで。
もう片方の手を、銀八の腰に回しているから。
逃げないように。
逃がさないように。
「…、っメ、だって…」
「…何?」
「ダ、メ…だって…、ちょっ…!」
「じゃぁいい加減観念しろって」
「だから!観念って、何…!」
「俺を好きだって。…いい加減認めろよ」
「…っっ!!」
何がこいつを、こんなに頑なにさせてるのかは解らねェが。
これだけは確かだ。
「…俺の事好きだろ?銀八…」
![]()
2006/04/18UP