帝光時代むかしの夢を見た。
黒子っちと一緒にバスケをしていた、帝光時代あのころの夢。


「黒子っち!」
「黄瀬君」
「これから部活行くトコっスか?」
「はい、そうです」
「じゃぁ、一緒に行こ!」
「はぁ…一緒も何も、向かうトコ一緒じゃないですか」
「そうなんスけど…黒子っちはホント、手厳しいっスね…」
「?そうですか」


いつもと変わりない日常。
黒子っちの隣に居るオレ。
オレの隣に居る黒子っち。
それだけで満足だった。


「今日も練習厳しそうっスねー」
「赤司君の練習が厳しくなかった事ありませんよ」
「たまにはミニゲームとかして遊びたいっス〜」
「負けた方にはもれなく罰ゲームが付きそうですけどね」
「…必死過ぎて全然楽しくなさそうっス」


他愛もない会話。
でもそれが、今になってとても大切な事なんだと今なら解る。
けどこの時のオレは、この時間が永遠に続くんだと思っていた。


「遅ェぞ、テツ!」
「いきなり何ですか、青峰君。まだ練習開始時間じゃありません」
「ちょっと試してみたい事があんだよ。付き合え!」
「はいはい、今着替えますから」
「青峰っち青峰っち!1on1やろ、1on1!」
「懲りねェな、テメーは」
「今日こそ負けないっスよ!」
「はっ、言ってろ」
「着替えました」
「黒子っち、早っ!!」
「よーし、んじゃ行くぞ、テツ」
「はい」


並んで部室から出る2人を見送る。
仲が良いのは知ってる。
でもバスケ以外ではなかなか合わない2人もオレは知ってる。
相棒、そう呼ぶのに相応しいって事も。
黒子っちは、青峰っちを『光』と呼ぶ。
…いつか、オレが黒子っちの『光』になれれば良いな、って思ってる。


「…よし、今日も頑張るっス!」


バスケは、退屈していたオレに刺激を与えてくれた。


「今日もお疲れ様です」
「あーもー、今日も青峰っちに勝てなかったっス〜…」
「君はまだバスケを始めて間もないんですから当然です」
「黒子っちはどっちの味方っスか〜」
「何ですか、それは」


今日もヘトヘトになるまで扱かれて。
薄暗くなった帰り道。
オレは黒子っちを誘って帰路に着く。
青峰っちとバスケしてるのも好きだけど、オレはこの時間が何より好きだ。
疲れた身体に、静かで優しい黒子っちとの時間。


「…あー、腹減ったっス…」
「帰ればすぐに夕飯の時間ですよ」
「アイスでも良いから、何か食べたいっス〜…」
「じゃぁコンビニにでも寄りますか?」
「っス!」


黒子っちの言葉に大きく頷いて。
オレ達はコンビニに寄る。
お手頃価格の割に美味しい、シャリシャリのアイスを買って。
コンビニの外で頬張る。


「美味しいっスね〜!」
「はい。火照った身体に気持ち良いです」


冷たさからか、小さな口で少しずつアイスを食べるその姿に。
思わず、…見とれる。


「…黄瀬君」
「へ?!」
「零れてますよ」
「え、あ、わ、わ…!」


突然の呼び掛けと言葉に、持ってたアイスを見れば。
ポタポタと垂れ、手がベトベトになっていた。
慌てて舐めとれば、クスクスと笑う声が聞こえて。


「どうしたんですか、ボーっとして」


普段そんなに表情の変えない黒子っちの、滅多に見れない微笑。
それが今オレに、オレにだけ向けられた事に、オレの胸はますます高鳴る。


「…黒子っち」
「はい?」


呼び掛けて。
真っ直ぐに向けられるその瞳が…。


「好きっス」
「…は?」
「オレ…黒子っちの事、好きっス」
「はぁ…有難うございます」
「そ、そうじゃなくて!」
「?」
「友達としてじゃなく。…黒子っちが好きっス」
「…え」


唐突に言い出したオレに、黒子っちはポカンとした表情をした。
あぁ、そんな表情も初めて見るっスね。
オレはニコっと笑って。


「返事はまだ良いっス!…でも、オレがそう言う気持ちだって事覚えてて欲しいっス!」
「あ、ちょっ、黄瀬君…!」


それだけ言うと、オレはタっとその場から駆け出す。


「また明日っスー、黒子っちー!」


大声でそう言って、手を振れば。
少し戸惑った様子を見せた後、黒子っちも小さく手を振り返してくれる。
それが嬉しくて。
オレはもう一度、大きく手を振った。
…それがオレの初恋の始まり。




2012/08/22UP