胸に刻まれる言葉、音。
忘れてしまうくらいなら。
いっそう、この命なんて……。
〜タイムリミットまで後1日〜
静まり返る部屋に、時計の音が鳴り響く。
「今日」を告げる、終わりのメロディー。
「…後1日しかありません。嫌だと言うなら力づくっスよ?」
そのまま、動かなくなってしまったコンに、告げた言葉。
ビクリと動いたコンの身体に、浦原は再度溜息を吐く。
「…嫌いだ…」
「………………解ってますよ」
「解ってねェよっ!!俺はアンタが嫌いだ!正体不明で、何考えてんだか解んねェっ、そんなアンタ……っ…アンタなんか…!」
「……………」
「………っ、…大、嫌ぃ……だぁ……!」
呟かれた叫び。
鳴り響く秒針の音。
静かな部屋。
「…っ…く、来んなっ……!!」
スっと立ち上がった浦原に、コンは身体を後退させながら叫んだ。
それでも。
立って歩いて近づいて来る浦原の方が、座った状態で動くコンよりずっと早くて。
「来んな、つったろっ…!」
ドンっと壁にぶつかって。
睨むように浦原を見上げ、コンが叫ぶ。
それでも。微かに震える身体が見て取れて。
「アタシが怖いですか…?」
「こ、怖い訳…ねェだろう…!!」
「………………」
「…………っっ………」
トンっと浦原がコンの傍に跪き、コンの顔をはさむように両手を壁に置く。
「…ねぇ、コン君」
「……………っ」
「アタシの事、嫌いでも良いです」
言われた言葉にコンは目を見開く。
「…ぇ…?」
見つめた浦原は。
電燈の明かりの逆光で見えないけど。
微かに苦笑しているのを、コンは感じていた。
「アタシの事は嫌いでも良いです」
「な、に…言って……」
「でも」
伸ばされた腕が。手が。
自身を包み込むのを感じて…。
「なっ…!」
「アナタが居なくなるなんて堪えられません」
「……………………」
「全部…全部忘れてしまう。…けど、その記憶は全部アタシが覚えてるから…」
「……………………」
「アナタの今まで、全部アタシが覚えてますから…だから」
「………っ………」
「…アナタは、生きて…?」
「……!!」
グっと抱き締められた温もりが。
包まれる腕が。
……強くて。温かくて。
「…っ…!!」
「…コン君?」
グっと。
浦原の胸に治まっていたコンが、腕で浦原の胸を押し返す。
「アンタ…本当勝手だ…っ!」
「コン君?」
「破棄するって言ったり、生きろって言ったり…!」
「………はい。アタシは勝手ですね」
「好きつったり、覚えてるつったり…!」
「……だって。アナタが生きた証は『ココ』に在るでしょう?」
「……っ……バ、カ…やろぅ……」
トンっと差された胸。
「思い出はこれからだって作れます。…今のアナタはアタシが覚えてる。だから、アナタは新しい人生を生きて下さい」
小さく振られる首。
光ったモノは涙…?それとも…?
「アンタ…何も解っちゃいない…!」
「…え?」
「俺は覚えていたいんだ…!…確かに…確かにアンタが覚えててくれれば、「俺の存在」は消えない!」
「………………」
「でも…それじゃぁ「想い」は?俺の想いは何処へ行っちゃうんだよ?!」
「…………黒崎さんへの?」
呟かれた言葉に、コンの動きが止まる。
「な、に…?」
「忘れたくないのは、黒崎さんへの「想い」なんですか?」
「アンタ…何、言って…」
「『好き』なんでしょ?黒崎さんの事」
「何言って……」
「隠さなくても良いっスよ」
気がつけば。
時計の長針と短針は。
あれだけ傍に居たのに。
…今はあんなにも離れてしまっていた。
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