いよいよバス出発
長い間世話になった川監視と民家の老夫婦に別れを告げ、バスは出発した。ここからは何
とかチャーターしてもらったマイクロバスである。救助にきたトラックからそうであるが、
とにかく外の景色が見えることに幸せを感じる。
(改めて説明するが、壊れてしまった軍用車は窓が無く30時間近くまったく景色の見えな
い鉄の空間で過ごしていたのだ。皆さんはそんな状況想像できますか?)
バスの出発と同時にビールの栓を開け、みんなで乾杯をした。しばらくは楽しそうな話し声
が聞こえていたが、30分もするといつぞやの静けさが広がっていた。みんなも疲れている
のだろうとメンバーの様子を見ると、寝ているわけではないようだ。サハリンの景色に目を
奪われていたようである。
ここからが・・・・時間の止まった長い旅の始まりであった。
目に入ってくる景色はサハリンの自然と、たまに目に入ってくる素朴な民家だけ。
心の中は、
壮絶な旅をしてきた夢のような時間と、安心して景色を見ている今の落ち着いた
時間とが複雑に絡み合い、それでいて静かに戦っていた。まるで、覚めて欲しくなかった夢
を見ている最中に目が覚め、さっきまで見ていた夢をまだベットに横になった状態で名残惜
しそうに思い起こしているようである。
目に入ってくるのは色のない世界・・・
それを何時間も眺めていた。
多分、一人一人違う世界を感じていたのだろう。
ここから目に入ってくるロシアの片隅の景色を見ながら、何時間も、頭の中に現れるもう一
人の自分と会話をしていた。こんなに自分と話をしたのは生まれて初めてである。
その内容とは・・・・・
これはマンションのようなものだろう。しかし、人影は見えなかった。いったいここに住んでい
る人たちはどうやって生計を立てているのかが想像つかない・・・
目に入ってくる建物はこんな素朴なものばかりだった
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