サハリン釣行記22

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いよいよバス出発

 長い間世話になった川監視と民家の老夫婦に別れを告げ、バスは出発した。ここからは何

とかチャーターしてもらったマイクロバスである。救助にきたトラックからそうであるが、

とにかく外の景色が見えることに幸せを感じる。

(改めて説明するが、壊れてしまった軍用車は窓が無く30時間近くまったく景色の見えな

い鉄の空間で過ごしていたのだ。皆さんはそんな状況想像できますか?)

バスの出発と同時にビールの栓を開け、みんなで乾杯をした。しばらくは楽しそうな話し声

が聞こえていたが、30分もするといつぞやの静けさが広がっていた。みんなも疲れている

のだろうとメンバーの様子を見ると、寝ているわけではないようだ。サハリンの景色に目を

奪われていたようである。

ここからが・・・・時間の止まった長い旅の始まりであった。

目に入ってくる景色はサハリンの自然と、たまに目に入ってくる素朴な民家だけ。

心の中は、

壮絶な旅をしてきた夢のような時間と、安心して景色を見ている今の落ち着いた

時間とが複雑に絡み合い、それでいて静かに戦っていた。まるで、覚めて欲しくなかった夢

を見ている最中に目が覚め、さっきまで見ていた夢をまだベットに横になった状態で名残惜

しそうに思い起こしているようである。

目に入ってくるのは色のない世界・・・

それを何時間も眺めていた。

多分、一人一人違う世界を感じていたのだろう。

ここから目に入ってくるロシアの片隅の景色を見ながら、何時間も、頭の中に現れるもう一

人の自分と会話をしていた。こんなに自分と話をしたのは生まれて初めてである。

その内容とは・・・・・

これはマンションのようなものだろう。しかし、人影は見えなかった。いったいここに住んでい
る人たちはどうやって生計を立てているのかが想像つかない・・・




目に入ってくる建物はこんな素朴なものばかりだった




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ロシア・サハリン過酷な釣行記