伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】 2021年6月12日 スポーツジム再開を喜ぶ GP生

 自分が長年通っているスポーツジムは、緊急事態宣言を受けて4月末からは5月末日まで閉館になった。6月からの開館を期待していたが、5月に緊急事態宣言が更に延長され、如何なるかと心配してた。ところが無事6月1日に開館の運びとなった。この間1ヶ月以上、自宅待機が続いた。スポーツジムは運動するだけの場所ではない。高齢者にとって交流の場でもあり、単調になりがちな日常で気分転換の場所でもある。スポーツジムは、その日の活性化に繋がる貴重な施設であるのだ。

 久しぶりに訪れたスポーツジムは閑散としていた。午前中のスポーツジムを訪れる男性は殆どが高齢者である。中年の女性を見かけても、若い人の姿は殆ど見ることは無かった。館内ではマスク無しの会話は禁止されているため、プールでは今までの様に雑談することは無くなった。プールで歩くことよりお喋りを楽しむ女性達は、マスクをして歩いている。それでもお互いの距離は十分確保していた。ジム内の感染防止マニュアル通りの行動である。

 最初にプールの水に触れたとき、30℃の水温は肌に心地よい感触をもたらしてくれた。両手で交互に水を掻きながら、体を少し前屈みにしてゆっくりと歩き始めた。肌に触れる水は、独特の感触である。最近は、25bプールを10往復する事を目標としている。以前は40往復であったが、大病を重ねてから、堅くなりがちな体を解す事が目的となってしまった。ゆっくり歩きながら、ターンを重ねる内に以前の感触が蘇ってきた。水中を歩くことは喜びであり、ジムに通えることもまた喜びである。

 プールでは様々な人が色々な歩き方を楽しんでいる。黙々と歩いている小柄の高齢者女性の姿を久しぶりに目にした時、ホッとした気持ちになった。彼女は他の女性と話をする事無く、水中を歩いていた。彼女から女性特有の愛想の良さは微塵も感じられず、近寄りがたい雰囲気を持っていた。歩き方は超が付くほどの遅さである。自分も以前より歩行速度は落ちたが、それでも高齢者女性よりかは速い。遅い女性との距離が詰まってきた時、追い抜くか、それともUターンするかの選択に迫られる。件の女性は自分が近づくのを知ると、黙ってUターンしコースを明けてくれるのだ。この時、「お心遣い有難うございます」と声をかけると、頷きながら信じられない笑顔の会釈が戻ってきた。彼女とプールでの付き合いはこれの繰り返しとなった。他の会話は一切無い。それでも一瞬の笑顔は、心を和ませてくれる。

 休館前に中年女性と短い会話を交わすようになった。彼女は水中歩行とプールの端でストレッチを繰り返えしていた。仲間は居ない様で、何時も独りで運動していた。彼女の歩きは遅い方に属する。彼女を追い抜く時、「お先に失礼します」と声を掛けると、「どうぞ気にしないで下さい」と返事が返ってきた。これを繰り返す内に、時々雑談を交わす様になった。今回、久しぶりのプールで彼女と顔を合わせ、何時も通りの会話が始まった。

 プールから上がり、浴室で過ごす時間は至福の思いである。浴槽の温度は40度。適温である。ジム休館中は自宅の浴室を利用したが、唯身体を洗うだけで安らぎからは程遠かった。自分は長く浸かる方ではないが、誰もいない広い浴槽に身を沈めると、心地よさが身体に染み込んで来る。各洗い場にはシャンプーとボディソープ、コンディショナーが備えられていて、給水は温度調節が出来るカランとシャワーの二本立てである。ここで長時間、身体を丁寧に洗っている人も居る。以前は時間帯により、7カ所全ての洗い場が満員となることも多かったが、現在は好みの場所を選択できるのは有難い。

 浴場には専用シャワー6カ所と80℃のドライサウナ、水風呂が完備している。何人かの高齢者はドライサウナを経て水風呂を利用している。水風呂に入る前に頭から何杯も水を掛けても、水風呂内では20℃への急激な温度変化である。高齢者の心臓は悲鳴を上げているはずだ。血圧も激しく変動する。傍目でもハラハラする光景だ。旧くからの親しい友人が、以前同じ事をしていた。流石黙っていられず、身体への負担を話したところ止めてくれた。彼は温まった身体を急激に冷やすのは、言葉に表せない気持良さだと話してくれたが、高齢者には命がけであることには違いない。若い人の真似は厳禁である。現在ドライサウナ使用は5人に限定されている。専用クッションも撤去された。

 今回からマスクをしてプールを歩く事にしている。水濡れに問題の無いナイロンとポリウレタン混紡マスクである。ポリウレタンマスクは抗菌力が弱いと言われているが、使用するマスクは、ナノファイン加工とかによる抗菌率99.9%を謳っている。ホームセンターで購入したが、確かに今までのウレタンマスクとは感触が異なっていた。プールでのマスク使用は会話を滑らかにするためだ。それまでは、知り合いとの挨拶は手と眼、頭で交わしていた。この不自由を解消するためのマスク使用である。マスクをしての水中歩行は抗菌仕様で通気性は悪くなっていたが、口と鼻の空間に余裕があるので苦にならない。

 昨年の新コロナ蔓延から、一年以上が経過している。昨年の春先、最初の緊急事態宣言により2ヶ月以上スポーツジムは閉鎖となった。クラスター発生防止上、止むを得ない措置であった。この間多くの高齢者がスポーツジムから去って行った。家族の反対が多かったと聞いている。再開に際し、ジム側は徹底的な新コロナ防止対策を行った。午前中の館内は高齢者の激減により閑散とし、人の接触は更に減少した。感染の可能性は限りなくゼロに近づいたのたのだ。

 4月末の緊急事態宣言により、スポーツジムは再度閉鎖された。何故閉鎖する必要があるのだろうか。午後から夕方に掛けて若い人が増えたとしても、ジムが行っている対策と会員の対処に依り、感染の可能性は極めて低い筈だ。利用者の楽しみを奪い、ジムの経営を圧迫する閉館は問題である。デパートも生活必需品売り場を除き、他の部署は休業となった。平日のデーパートで一番人が集まるのは地下の食品振り場とイベント特設会場だけで、他は閑散としている。この閑散とした売り場を閉鎖する意味がない。スーパーの混雑はデパートの比ではない。施政者のアッピールだけを目的とした無意味な休業要請が多すぎる。どの企業も業者も存続がかかっている。感染防止対策は施政者以上に真剣であるのだ。

 新コロナが蔓延してから1年以上が経過したが、この間、感染防止に意を注いできた。ワクチン接種は申込が遅れたため、第1回が7月半ばとなった。慌てることはない。身に付いた生活習慣を今まで以上に徹底すれば、感染する確率は極めて少ないと思っている。緊急事態宣言が延長されても、今回はスポーツジムは再開され、感染防止対策は更に徹底していた。閉館が続けば事業主と利用者の共倒れになる。今はスポーツジムが再開されたことを喜びたい。退館した多くの仲間達が戻って来ることを願っている。

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