伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】 2021年5月28日 メッセンジャーRNAワクチン T.G

 一回目のワクチン接種をした。幸いにも近くのかかり付け医の予約が取れ、いつもお世話になっている看護師さんに打ってもらった。筋肉注射なのでブスッと刺すだけ。痛くも痒くもない。注射針で静脈を探したりする皮下注射の方がよほど痛い。痛覚が皮膚にあって、筋肉にはないことがよく分かる。

 高齢者枠なのでファイザー社製のメッセンジャーRNAワクチンである。モデルナ製ワクチンも同じmRNAワクチンだが、こちらは入手が遅れ、東京などで始まった大規模集団接種でやっと使い始めるらしい。どちらも二回接種後の有効率が94%という。普段使っているインフルエンザワクチンの有効率がたかだか60%と言うから、極めて効果の高いワクチンに違いない。ほかにもコロナワクチンはあるが、イギリスやアメリカの感染者数が激減したのはこのメッセンジャー型RNAワクチンのおかげだ。世界中で同じ程度大量に使われている中国製ワクチン、シノバックは通常型のワクチンだが、認証試験データも公表されず、副反応も定かでないヤバいワクチンである。南米あたりでの実際有効率は50%以下だという。

 メッセンジャー型のmRNAワクチンはこれまでのものとはまったく違うタイプの新型ワクチンで、実用に供されたのは今回の新型コロナが初めてだという。これで世界中を震撼させている新型コロナを撃退出来たら、もしかすると20世紀のペニシリンと並んで、21世紀の大発明の一つになるかもしれない。アメリカやイギリスで実際に示されている効き目を見ると、その可能性は高い。

 天然痘から始まり、古来たくさんのワクチンが作られてきた。そのすべてが抗体を作り出す抗原に病原体(細菌やウイルス)そのもを使う。それを人体に注入し抗体を作らせる。弱体化させたり、部分抽出したりはするが、たち悪の病原体であることには変わりない。それに対してメッセンジャー型mRNAワクチンは病原体のRNAを読み取り、それを化学合成して、その断片をメッセンジャーRNAとして人体の細胞に注入する。受け取った細胞は、それと同じ型のRNAを大量に産生し、抗原に使う。つまり抗原として病原体を使わず、合成物(メッセンジャー)を介して抗原そのものを人体に作らせているのだ。そのメリットは二つあって、一つは病原体を使わないので副反応のリスクがきわめて小さいこと、化学合成によるので短期間に大量生産が可能なことである。モデルナ社はたった二日間でワクチン設計を終えたという。

 我が愛読するブログ、「かんべえの不規則発言」によると、ワクチン開発には多大な時間がかかる。通常の手順だと約6年。ファイザー、モデルナ社はそれをわずか14ヶ月でやってのけたという。そのことがアメリカ国防省ペンタゴンのサイトに載っているという。まさにワープスピードである。キモは軍がトップに立っていることで、組織の効率化と言い、プロセスの速さと言い、とても日本は真似出来ない芸当である。そのことをかんべえ氏は次のように書いている。

「ちなみにこのOWSには、CDC(疾病対策センター)、FDA(食品医薬局)、NIH(国際衛生研究所)、生物医学先端研究開発局(BARDA)、HHS(厚生省)など多くの省庁が参加しておりますが、トップ(COO)となっているのギュスターブ・ペルナ陸軍大将であります。やっぱり有事対応ということで、トップは軍人です。こうしてみると、日本では真似できそうにないことばかり。こっちは省庁縦割りだし、ひとつのプロセスが終わらないと次のプロセスに移れない。法律で縛られているから。そのくせ失敗した場合に、外野からお説教してくれる人は大勢いる。でも、後から「後手後手」批判をしたくなかったら、こんな風にやればいいというお手本がここにあります。」と。コロナワクチンは軍事物資なのだ。

 遅ればせながら阪大の森下教授が立ち上げたアジエンス社が、mRNAに似たDNA型のワクチン開発を頑張っているが、ワクチンについての政府の理解と資金投入など、バックアップがなく、実用化は来年以降に遅れるという。それではパンデミック終息に間に合わない。コロナが国防と同じく国家安全保障の問題であり、今の日本はその両方ともアメリカさんに頼らなくてはどうにもならないことを痛感させられる。ワクチンなどあなた任せで、日々低レベルの緊急事態宣言とオリンピックであたふたしている日本政府がつくづく情けなくなる。そんな体たらくならオリンピックなんてやめてしまえ!

目次に戻る