伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2020年5月14日: 新型コロナウィルスと危機管理 GP生

 人はこの世で生きている限り、予期せぬ出来事に直面することは避けられない。生命が脅かされる事態は少ないかも知れないが、予想外の危機は幾らでも生じる。高齢期を迎えれば、体調不良や病魔に襲われることも多いだろう。危機管理の要諦は、「最悪に備えろ」だ。予想される事態に対しては、予め心構えや具体的な準備をする事は出来る。車の運転中、人や自転車の飛び出しに、ハッとする事を経験した人は多い筈だ。とっさの急ブレーキやハンドル操作で、難を逃れる事になる。運転中に遭遇する危機の対処法が、心に刻まれているからだ。何事も「備えあれば憂い無し」である。問題は想定外の事態に接した時、如何に対処するかである。

 新型コロナウィルス感染は我が国で突如生じた問題では無い。じわりじわり感染が広がり、何時の間にか大問題になってしまった。国や地方自治体は対策を講じ感染防止に努めては来たが、経験したことの無い事態である。ウィルスの実態にあまりにも判らないことが多すぎた。誰しも未知なる危機に対して完璧な対応など出来るはずがない。国や地方自治体の施策について批判は多いが、多くは結果論である。専門家と称する人達も、今回のウィルス特性について熟知しているわけでは無い。ウィルスの正体は不明である。全て手探りなのだ。熟慮して判断しても必ず誤りが生ずる。その都度修正しながら危機に対処するしか方策は無いのだ。

 テレビのニュースバラエティ番組は新型コロナウィルス一色である。専門家や評論家と称するコメンテーターが、喧々諤々である。聴いていても、新型コロナウィルスの真の正体が見えないない中での議論は視聴者にとって耳障りなだけである。テレビは視聴率が生命である。フェイクを発信することも厭わないテレビ局も存在する。誇張されない事実こそ、危機管理には必要不可欠なのだ。残念ながら新コロナウイルスの必要情報はテレビで得られることは少なく、ネットに頼るしか無い。ネット情報は玉石混淆であるから、良否餞別の選択眼が必要である。

 日本国内の感染者数、重傷者数、死亡者数、退院者数の推移は感染の今後を推測する基本資料である。感染者の年齢、性別、感染原因、そして感染者の国籍は、日常生活で感染を回避する貴重な情報となる。5月10日付の厚生労働省ホームページ「新型コロナウィルス感染症の現在の状況」によれば、国内感染者数15,747名、死亡者613名、退院者8,293名であった。これによれば、感染者の52.6%は退院している。自宅待機の感染者も居るから、入院患者に対する退院者割合は更に大きいであろう。

 また5月8日のデーターには、患者9,224名中、日本国籍の者6,826名、外国籍の者226名、国籍確認中の者2,172名とされていた。問題は国籍確認中の者が23.5%も存在する事である。厚生労働省が国籍を判らないはずは無い。恐らく在日関係者であろう。国籍を明らかにすることは、国民の不安を少なくすることに繋がる筈だ。何に忖度しているのだろう。日々感染者数が減少し、退院者が著しく増加している事が判る。油断は禁物であるが、感染が終息方向に舵が切られたように思える。

 唯いたずらに感染を恐れ萎縮することが危機管理では無い。我々が知りたいのは、何時、何処で、どの様にして感染したのかである。東京都の感染推移を見ても、感染源不明がかなりの割合で存在している。感染源が判っているケースでも、大きなクラスターでなければ公表されることは無い。個人が感染防止策を考えるとき、感染状況の具体的情報は必要不可欠である。報じられるのは規模の大きいクラスターのみである。メディアは官僚や公務員、有名人の感染は報道しても、一般人の感染状態を報道することは極めて少ない。一般人が何処で、何によって感染したかが一番知りたい有益情報なのだ。

 我が家では日常品の買い物は自分の担当である。駅近くにスーパーがあるが、敢えて車で郊外のスーパーやホームセンターを利用している。ハンドルを握ることは気分転換になるからだ。感染防止が叫ばれてから、スーパーやホームセンターでの感染防止対策は徹底している。顧客管理方法に店の違いはあるが、レジ前の赤や黄色の立ち位置線とビニール透明シートによる人の遮断は共通である。客も店内では他の客と距離をとって買い物をしている。出口にはアルコールスプレーが置かれ、客も店員も全てマスク姿で、誰も一言も発しない。もしこの状態で感染したら奇跡である。今まで、スーパーやコンビニがクラスター源になった事は聞いたことが無い。電車内でも乗客は皆顔を合わせること無く、マスク姿で一言も発しない。帰宅してからも皆手洗いを励行しているはずである。密集していてもお互い少し距離を取り、接触すること無く、顔を向け会話することが無ければ、感染は起こらないと思っている。

 国や地方自治体は三密回避や一部の事業主に営業停止要請をするだけで、後は国民の自主性に任されている。他国のように警察や軍隊の取り締まりはなく、違反しても罪になることも無い。8割自粛の正否はともかく、感染者が激減し、退院者が増加しているのは事実である。これは、国民個々の危機管理の結果であろう。

 先日、日本でプレーしているスペイン人サッカー選手のコメントを読んだ。なぜ日本では母国のような感染爆発が起こらず、死者が少ないのかを、「日本はすごく清潔で、それがウイルスを封じ込めるのがより簡単になった理由だと思う。安全な距離を保っているし、キスで挨拶もしない……日本の文化はちょっと違うんだ」と驚きを込めながら語っていた。我々にとって当たり前の生活が、他国人から見ると驚きを持って見られているのだ。「清潔」の一言に彼の思いが込められていた。日本人は意識せずに危機管理を実行していた事になる。

 感染をいたずらに恐れることは、心に病を生じさせる事になる。病院や養護施設、キャバクラなどを除けば、日常生活で感染の可能性は極めて低いと思っている。スペインのサッカー選手の言う「清潔」を、全ての人が保っているわけでは無い。愚かな国会議員の様に、いかがわしい場所に出入りする人は幾らでもいる。不心得者が感染するのは自業自得だが、発病の自覚が無ければ二次感染が生じる。お互いをよく知る知人友人でも、お互いが生活全てを判っている訳ではない。感染が収束に向かったとしても、感染防止の為、個々の危機管理継続は必要である。有効なワクチンや特効薬が開発されるまでは、コロナ収束後、以前の生活に戻ることは叶わないかも知れない。

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