伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2020年4月4日: 排尿障害に援軍登場 GP生

 6年前に行った前立腺ガンの放射線治療以来、排尿障害に悩まされてきた。中空針を前立腺に20本刺し、その中に高線量放射性物質を循環させた副作用が第一原因である。前立腺は膀胱の出口部に密接し、尿道が前立腺内を通過している。ガンが前立腺周辺部に発生しているため、放射線の影響は膀胱にまで及んでいるのだ。特に膀胱出口は前立腺と接するため、影響は甚大であった。幸い前立腺ガンの治癒は良好な状態が続いているが、放射線により弾力性が衰えた膀胱は、排尿機能の正常性を失ってしまった。排尿時、膀胱内の尿全てが排出されないため、長期間、頻尿が続いたのだ。歳をとれば、トイレ回数が増える事は避けられなにしても、1日15回オーバーは異状であった。

 治療後3年近くが経過すると、頻尿傾向は多少収まってきた。夜間の排尿もゼロの日々が続いた。所が、2年前に発症した腎盂ガンと膀胱ガンの治療により、再び頻尿が復活したのだ。膀胱組織が更に弾力性を失った為である。主治医は、CT画像から膀胱組織が厚みを増していると診断している。この冬、新たな障害である排尿不能が生じた。この事情は以前の日誌に書いた通りである。頻尿は、トイレ行きが面倒でも、排尿不能の苦しみとは比較にならない。長時間、苦痛に苛まれるからだ。排尿不能は、下腹部が冷え膀胱が弾力を失うことで生じた。膀胱組織が正常であればともかく、膀胱出口が硬化していれば、冷えの影響を強く受けるのだ。出口の弾力性の喪失により、尿意を催した瞬間、尿漏れが生じることになる。

  昨年11月から鍼灸と漢方薬治療を、今年2月に超短波治療を始めた。鍼灸と漢方薬による治療は、一つしか無い腎機能を活性化させ、人工透析を防ぐためであった。治療により、排尿は少し勢いを感じるようになった。週1回の鍼灸による排尿効果は、何日もの継続しない。冬季には下腹部の冷えは避ける事が出来ないからだ。これを補うため、2月から始めた超短波治療器治療により、排尿は更に安定して来た。それでも油断すると下腹部が冷え、何回か排尿不能に陥った。その時は、超短波を下腹部に当て続ける事で、比較的早く回復に漕ぎ着けた。身体の冷えは、血流の悪化を招き、身体のトラブルを誘発する。高齢者は気がつかぬ内に、血流悪化を招いているのだ。

 家人は鍼灸治療時、患部に赤外線を照射する事で治療効果をあげている。自宅でも赤外線治療をするため、家人から治療器の選択を頼まれた。治療院の赤外線治療器は、大きなドーム型の赤外線ランプから照射する医療機器である。医療資格の無い個人は購入出来ないし、家庭で使用するには取り扱いが面倒である。家庭用赤外線治療器は、色々な機種が販売されているが、その中から機能と使い勝手を考慮し、日本遠赤の「コスモパックDX60」を購入した。幅60センチ、長さ60センチのシートから遠赤外線を発生させる機構で、強度は「弱、中、強」の三段階から選択できる。選択的タイマーの設置は無く、8時間が経過すると電源が遮断されるシンプルな機能であった。身体をシートに横たえた時、発生する遠赤外線は、育成波長と呼ばれる狭い範囲の波長である。遠赤外線の発生器たるシートは発熱せず、遠赤外線が細胞内の水と共鳴作用を起こし、身体内部で熱が生じるのだ。

 家人は1日3回患部をシートに当て治療を行った結果、身体の痛みがかなり改善されてきた。自分が使用している超短波治療器は、細胞内の水分を超短波の激しい振動で発熱させる機構であるため、照射時間は最大30分である。長時間の照射は、身体を疲労させ逆効果となるからだ。家人の治療結果を見て、遠赤外線治療を自分に適用できないかを考えた。現在、超短波治療を強度-強で朝晩2回、低周波治療は就寝中の睡眠を深める為、強度-弱で8時間行っている。遠赤外線治療の導入には、他の機器との治療時間の再配分が必要である。

 治療時間帯を検討し、「コスモパックDX100」を購入した。「100」とはシートの長さが100センチを意味する。腎臓部から下肢に掛けて出来るだけ広い領域を暖めたいための選択であった。治療時間帯は、就寝中「強度-弱」で最大の8時間とした。設定が「中」や「強」での長時間使用は、熱すぎるし、熱中症を起こしかねないからだ。今まで、就寝中に行っていた低周波治療は、昼食後の昼寝の時間に「強度-強」で行うこととした。超短波の朝夕の治療は、従来通りである。

 コスモパックDXを組み込んだ治療を始めて、3週間が経過した。最近の鍼灸治療時に、中医師から「くるぶしの色が正常に近づき、浮腫が解消された。背中の皮膚が白くなり、正常色に近づいている。眼の周りの浮腫が解消傾向である。腹部に張りが残っているが、下腹部が温かく、冷えか解消している。」と診断された。日常でも夜間のトイレ行きゼロの日が続いたり、一日の排尿回数が一桁になる日が生じた。常時、膀胱が柔軟性を保っている為、激しい頻尿は解消されたのだろう。尿漏れは継続中だが、量が少なくなった感じである。治療の相乗効果であろう。

 鍼灸、超短波、遠赤外線治療は、何れも身体を暖め、血流を良くすることが第一歩である。漢方で言う「お血」の解消である。身体各所の冷えが「お血」を促進させる。若い時は、血流の善し悪しなど考えたことも無いが、加齢の進行により、血行悪化は、高齢者誰にでも生じるものだ。高齢者の肩や腰、背中の痛みや下肢のしびれの原因の多くは、血行障害に有ると思えるくらいだ。血行の悪さは、老廃物の排出や代謝にも害を及ぼしているのだろう。高齢者にとって血行は健康の要である。

 新型コロナの感染拡大が、何時終焉するか判らない状態が続いている。マスク、手洗いは当然にしても、感染を阻止する最後の砦は免疫力である。万が一感染したとしても、強い免疫力が重篤化の防波堤となろう。風邪を引いた時、発熱するのは、人体の防御機構が働くからだ。免疫力は体温が高いほど威力を発揮するするから、人体は自ら体温を上昇させる。免疫の70%は腸管で発揮されるから、腹部を暖めることは免疫力を高めることに繋がるのだ。

 自分の行っている各種治療は、意図せず腸管免疫を高め、新コロナウィルスに対抗する最期の砦を強化している。最近、日本型BCG接種が、新コロナウィルスに免疫力を発揮するとの情報に接することが多くなった。欧米諸国の様な爆発的感染に至っていないのは、「国民全体がBCG接種をしている」との説が説得力持ってくる。BCG効果は50年程度と言われているから、免疫力全体が衰えた高齢者が、重症化しやすいのも納得である。昨年、膀胱ガン手術後の治療として行った6回のBCG注入は、怪我の功名であったのかも知れない。

 一つしか無い腎機能の劣化により、人工透析に陥ることを何としても防ぎたいとの思いから、鍼灸、漢方薬、超短波、遠赤外線の治療に辿り着いた。病の治療は医師の仕事でも、治療後は自分自身が主治医に成らざるをえない。2月末の血液検査では、腎機能を表す数値が僅かではあるが低下傾向が見られた。毎日同じ時間帯に、治療を行うのは面倒な事ではあるが、これらの数値は励みになる。毎日記録している排尿日誌は、結果が目に見えるだけ、努力のしがいを覚える。人工透析阻止は、残された人生の最大目標である。遠赤外線治療器は、最後の援軍になるかも知れない。

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