伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2020年2月8日: 排尿障害と電気治療器 GP生

 一般的に高齢者の排尿障害は前立腺肥大の影響が大である。尿道が前立腺の中を通過しているため、肥大による尿道圧迫が原因となるからだ。自分の排尿障害は四種の要因が関係していると考えている。一つ目は前立腺肥大、二つ目は前立腺ガンの放射線治療に依る後遺症、三つ目は腎臓摘出手術の際、膀胱に尿管摘出のメスを入れた事、四つ目は膀胱ガンの内視鏡手術である。これらにより膀胱が弾力性を失ったことが、今に続く排尿障害を招いている。特に放射線による膀胱の損傷は大きく、前立腺に接する膀胱出口の硬化が著しいようだ。膀胱の弾力低下は排尿に大きな影響を及ぼす。排尿に勢いが無くなり、膀胱に溜まった尿が一度に全て排出できないのだ。排尿回数の増加のみならず、排出不能の状態に陥ることもある。

 排尿障害もさることながら、最大の関心事は、残された腎臓に負荷が掛かりすぎ、腎不全に進行する事である。腎機能を表すクレアチニン値はやや高めで推移しているが、この値が上昇し続ければ人工透析は避けられなくなる。現代医学では疾病の治療は出来ても、機能改善の有効手段が無いのが現実である。この為、昨年11月から鍼灸・漢方薬治療を始めた。鍼灸院では、腹部や下腹部の冷え、くるぶしや腰部皮膚の黒ずみ、下肢と顔のむくみを指摘されていた。これらの腎経悪化の症状は、通院を始めた時より少し改善されたが、鍼灸・漢方薬治療は短期で結果が出るものでない。高齢者では尚更の事だ。

 先日の事だ。鍼灸治療を終えてから、買い物のため小一時間街をぶらついた。治療で下肢の血行が改善され、歩くことが苦にならないことも手伝った。所が帰宅後、尿意を催し、トイレに駆け込んだら一滴も出ないのだ。以前同じ状態に陥った時、鍼灸院に飛び込んで解消したが、今度は鍼灸治療の後である。治療後のトイレは、普段にない気持ちの良さであったのに、様変わりである。少し排出が出来るようになったのは翌朝であった。夜間何回も尿意をもよおしたが、下腹部と尿道に痛みが走るだけで尿は出なかった。この夜はまんじりともせず一夜を明かした。考えられる原因は膀胱の冷えであろう。鍼灸治療で暖まった下腹部を買い物で冷やしてしまったのだ。傷だらけの膀胱は、少しの冷えでも機能を失うようだ。

 翌日、電気治療機器を販売するTuさんの訪問を受けた。彼とは20年近い付き合いである。家人が長年使用している伊藤レーター製の超短波治療器に、不具合が生じたため点検に来て貰ったのだ。結果は本体に異状は無く、身体に巻く導子の経年劣化が原因であった。Tuさんは単なる営業マンでは無い。長年の経験から、各種電気治療器による治療経験が豊富なのだ。自分の病歴と排尿障害の悩みを話し、意見交換を行った。結果、超短波治療器は排尿障害改善に効果があると確信するに至り、購入を即決した。

 購入したのは超短波機能と負電荷機能を有する最新機種「スーパーひまわり」である。超短波治療器は出力165h、強弱4段階の設定、5分毎に最大30分のタイマー設定が出来る。導子は大型と手足に巻く小型の二種類を使い分ける。超短波が身体内部の細胞に作用し発熱させ、体温を上昇させるシステムである。負電荷治療器は出力僅か12hである。まず、ベッドに身体の約半分をカバーする電床マットを引き身体を横たえる。手首に巻いたアースバンドから、身体に入力された負電荷は電床マットに流れ、身体不調を改善させる機構である。タイマーは30分から最大8時間をセットできる。宣伝文句は、「治療効果は、静かな山林の中で心身共にくつろいだ状態と同じである」と謳っている。

 注文してから2日後に治療器は届いた。Tuさんと相談の結果、超短波治療は腹部、腰部に30分ずつ1日2回、下肢血流の要である左右くるぶし上部に各20分、これも1日2回施術する事にした。負電荷治療は昼食後、出力強で1時間、就寝時は出力中で8時間の施術と設定した。治療計画を確実にするため、毎日のスケジュールを治療中心に切り替えた。治療中でもパソコン操作に支障が無いのは有難い事だ。

 治療を始めて3週間近くが経過した。身体に今までにない症状が現れてきた。まず外歩きの足取りが軽くなったのだ。鍼灸治療後と同じ状態が毎日続いている。下肢の血行改善により、むくみが解消されたのだと思う。くるぶしに超短波を照射すると、暫くして上半身はポカポカしてくる。下半身が血流の要である証である。くるぶし周辺は腎経機能の良否が現れる部位であると、中医師から指摘されている。鍼灸治療当初、黒ずんでいたくるぶしの色が少し薄れて来た。超短波治療で更なる改善が期待できそうだ。

 次いで排尿に勢いが出てきたことだ。排尿回数はやや増加の傾向にはある。尿意を感じた時、即尿漏れ傾向は変わらない。先日、就寝中に尿の排出が出来ない障害が生じた。尿意を感じても一滴も出ないのだ。二回目の超短波治療を終えてから、夜パソコンで仕事をしていた時、下腹部が冷やした事が原因と思われる。膝掛けを怠ったことも一因であるのだろう。夜中再度、下腹部を中心に超短波治療を試みた。くるぶし治療も行った。それでも状態は直ちに改善されなかった。排尿に漕ぎ着けたのは早朝になってからであった。油断は大敵である。

 自分はスポーツジムで着替え前に血圧を測定し、運動後に体重と体脂肪率を測定してきた。体脂肪率は、毎回同じ条件で測定することで傾向は現れる。最近、体脂肪率が減少する傾向が出てきた。腹部の膨らみが平らになってきた感もある。超短波の腹部照射を続ける事により、腹部脂肪の燃焼が促進されたのかも知れない。超短波治療器の効能書きには、疲労回復、血行改善、筋肉疲労回復、神経痛・筋肉痛の改善、胃腸の働きを良くする等が書かれているが、納得である。

 負電荷治療の効果も自覚出来るようになった。朝起きたときの爽快感が違うのだ。夜は10時前に眠気を感じるようになった。負電荷を8時間にセットすれば、終了は翌朝6時前となる。その前に目覚めてしまうのだ。睡眠が深くなった証であろう。睡眠サイクルが、早寝早起きに好転した様だ。昼食後、1時間の負電荷治療を終えた時、頭がリセットされた様なすっきり感を覚える。頭脳の疲労回復である。負電荷治療の効能書きには、頭痛、不眠症、慢性便秘、凝りの解消等が書かれている。

 日々の治療で血行改善は健康維持の基本であると思い知らされた。鍼灸治療も血行改善が目的の一つである。加齢の進行につれ、毛細管の血流は衰えてくる。血管の弾力低下もあるだろう。血流が衰えれば、老廃物の排出が滞り筋肉は固くなり、神経は圧迫される。神経障害は毛細管の血流悪化が原因の一つであろう。腹部に超短波を照射する事で腸管が暖まり、免疫を活性化させる。高齢者にとって、健康維持の生命線は、血流と免疫力である事は間違い無い。温泉治療も血流を活性化させるが、日々行うのは困難である。皮膚表面を暖める手段に事欠かないが、身体内部を暖める事が肝心である。超短波治療器は高齢者にとって福音になるのかも知れない。

 今月末に膀胱の定期検査が待っている。クレアチニンと推定糸球体濾過量の値が改善されている事を願っていても、高齢者の腎経は一朝には改善されない。「鍼灸」、「漢方薬」、それに「スーパーひまわり」の治療で、「腎経機能の低下を防ぎ、人工透析から少しでも遠ざかる事が出来れば」と願っている。自分自身を救うのは、信じる治療法を根気よく継続する事しかない。高齢者の健康維持は自助努力しかないと、改めて噛みしめている。

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