伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2020年1月18日: 正月半ばを過ぎて T.G.

 令和2年の正月も早や3分の2が過ぎた。世はすべて事も無し。歳をとると時間が経つのだけが早い。

 先ほどテレビを見ていたら臨時ニュースがテロップで流れた。スマホにも盛んにニュースが入る。広島高裁が伊方3号原発の運転差し止めの仮処分を出した。山口県内の住人3人の仮処分申し立てに応じたのだという。その程度の問題で臨時ニュースが流れる。実にのんきな国である。それにも増して、原発の運転や再稼働中止は事業者や責任省庁の専権事項であって、裁判所が決めることではない。普通のあたりまえの国ではあり得ない、馬鹿げた話である。福一原発のように大事故でも起こせば話は別だが、正常に稼働している原発を裁判所が止めるなど聞いたことが無い。最近の日本の司法はどうかしている。こんな馬鹿げた越権行為をやりながら、ゴーンの逃亡劇のようにやるべき事をやっていない。愚かな徴用工判決を出した韓国の裁判所を笑えない。

 温暖化の原因はCO2だという。温暖化の主犯がCO2であることの科学的根拠はない。単なる憶測、想像である。仮にそうだとしたら、温暖化対策は唯一CO2の排出を減らすしか方法がない。ほとんどのCO2は化石燃料の消費で生じる。それ以外はわずかである。日本は石油輸入大国で、中東ホルムズ海峡を通って年間延べ700隻の10万トンタンカーで大量に運んでいる。それを全部燃やして、なんとか日本国の維持が出来ている。太陽光など自然エネルギーへの転換などという話は出ているが、量的に焼け石に水である。700隻のタンカーを半分に減らすには原発依存しかない。足し算引き算の問題で小学生にも分かる理屈だ。それなのに安易に原発反対を叫び、それにいとも易々と応じる裁判所はものの道理をわきまえていない。日本国の先行きを考えていない。外交や安全保障と同じで、原発の可否判断は行政の管轄である。裁判所が口を出す問題ではない。韓国と同じ、三権分立の悪用である。

 昨夜のBSフジのプライムニュースで、保釈中に逃亡したカルロスゴーンの日本司法批判をテーマに取り上げ、森法務大臣、高井元東京地検特捜部検事がもろもろ語っていた。それによれば、日本の司法制度は世界に比べて遜色はない。むしろ社会秩序や犯罪率の面で最も安全な国である。犯罪による死者数は、10万人あたり日本はわずか0.3人だが、アメリカは5.1人、フランスでさえ1.7人で、日本の何十倍も多い。日本が欧米に比べて安全な国と言うことだが、これは国民性もあるが、日本の司法制度によるところが大きいと力説していて、説得力のある話である。

 問題はカルロスゴーンが記者会見などで世界中に言いふらしている日本の悪口、日本の司法制度批判である。まるで北朝鮮のようだと言いたい放題で、このまま放置しておくと、従軍慰安婦のように世界中にあらぬ誤解を招きかねない。それに対する反論とメディアを介した情報発信について、森、高井両氏があれこれ語っていた。無為無策で放置し、悪化させた従軍慰安婦や徴用工問題のように、手遅れにならないことを期待する。世の中言ったもの勝ちなのだ。弁明嫌いは日本人の悪い癖である。

 ゴーンが日本の司法制度批判の宣伝材料に使ったのは、主に人質司法、取り調べに弁護士の同席禁止、有罪率の高さ、妻との面会禁止の4点である。これに対する森、高井両氏の反論は次のようである。

 人質司法は取り調べ中の拘留期間の長さを指しているが、日本が特に長いと言うことはない。アメリカやフランスではもっと長いケースもある。そもそも人質司法は日本の弁護士会が外国メディアに言いふらした根拠のない悪口で、ウォールストリートジャーナルなどはそれを真に受けただけ。きちんと反論すればすぐに納得してくれるという。

 弁護士の同席禁止は日本の法制度全体に関わるもので、善し悪しは一概に言えない。欧米は犯罪捜査や取り調べに、盗聴、傍受、おとり捜査、司法取引などいろいろな武器が与えられているが、日本の警察や検察にはない。憲法や法律で固く禁じられている。司法取引は最近一部の経済犯だけに認められるようになったが、一般的ではない。欧米に比べ、犯罪者や被告が圧倒的に有利である。そのため逮捕後の取り調べで証拠固めが必要になるが、その際弁護士の同席を認めたら、捜査の邪魔も出来るし、証拠隠滅も可能になる。どちらの法制度がいいと一概には言えないが、これを変えるには憲法を含めた法制度全体を変える必要がある。とても出来ないことは日本も欧米も同じだ。

 裁判での99%と言う有罪率の高さである。これも欧米との制度の違いがある。日本は現行犯を除いて逮捕の際、裁判所の逮捕状が要る。裁判所に認めさせるにはかなりの確証が要る。つまり逮捕を厳選しているのだ。それに対し逮捕状の要らない欧米では、捜査官の独自の判断で勝手に逮捕できる。中には思い込みや、勘違いも多い。それを裁判にかけたら有罪率が低くなるのは当然のこと。日本の場合、逮捕者のほとんどは証拠不十分などで起訴されない。起訴されるのは公判維持に必要な証拠固めが出来た被疑者に限る。これはたとえ裁判で無罪になっても、裁判を受けたことで多大な社会的制裁を受けることへの配慮である。むしろ何でも裁判にかける欧米より人道的立場に立っている。裁判での有罪率は日本は99%だが、逮捕者全体の有罪率は欧米と大差ない。

 妻の接見禁止である。ゴーンも最初のうちは妻と会うことが出来た。その後の取り調べで、彼の妻がいろいろ証拠隠滅を画策していることが判明した。つまり共犯者である。それで仮釈放の際妻との面会を禁止しただけの話。それでこれ以上妻が悪さを出来ないように逮捕状を出した。別におかしな話ではない。欧米でも仮釈放中の被告は共犯者との面会は禁止される

 ゴーンはレバノン政府の庇護の元、言いたい放題で日本攻撃をしている。日本に連れ戻して裁判を受けさせられる見込みはない。ゴーンの一人勝ちに見えるが、決してそうではないだろう。レバノンは中東の極小最貧国である。政情も安定していない。イスラエルに隣接し、周りをシリアやイラクに囲まれているきわめてリスクの高い国だ。政権が倒れたらどうなるか分からない。ゴーンもそれは分かっていて、もう一つの母国、フランスやブラジルにいち早く逃げたいだろうが、おそらくそれは出来ないだろう。いまでは悪名高い国際犯罪者になったゴーンを、日本の意向を無視して受け入れないだろう。レバノンでは、アラブの不倶戴天の敵であるイスラエルとの関係を疑われていると言う。ゴーンにとって先の見えない針のむしろに違いない。能力や志はともかく、金銭目当てで日産を操った付けがまわった。天網恢々疎にして漏らさずと言うではないか。

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